パソコンでこっそり動画を探していたら、いきなりピーピーと警告音が鳴り響いて、画面いっぱいに「ウイルスに感染しました」の文字。

家族に聞こえたらどうしようと、音量のボタンを必死で探した経験がある人は、けっこういるはずです。

ネットでは昔から「Windowsでアダルトサイトは見るな」と言われてきましたが、それは見ただけでパソコンが壊れるからではありません。

危ないのは、画面が「ここに電話して」「このキーを押して」と迫ってくる罠で、なかにはWindowsの人だけを狙って作られたものまで混じっているんです。

相手が公文だったから笑い話で済みましたが、同じような画面に出た番号へ、大人でも本当に電話してしまう人は少なくありません。

どの画面で指を止めればいいのか、それを知っているかどうかで、同じ警告音でも結果はまるで変わってきます。

Windowsとアダルトサイトが狙われる理由

Macなどと比べてWindowsは使っている人がいちばん多いうえに、偽の警告画面にはマイクロソフトやWindowsの名前がもっともらしく並んでいて、ふだんWindowsを使っている人ほど本物だと思い込みやすい作り。

さらに「私はロボットではありません」の確認画面をまねた偽の認証には、Windowsのキー操作をさせて初めて命令が実行される、Windows専用の悪質なものも。

 

再生ボタンに化けた広告

動画の再生ボタンがいくつも並んだ画面の前で指を止める男性

国の情報セキュリティの相談窓口であるIPA(情報処理推進機構)は、偽の警告が出るきっかけのひとつとして、アダルトサイトの動画の再生ボタン、あるいは再生ボタンに似せた広告をはっきり挙げています。

無料で見られるサイトは広告で成り立っていることが多く、どれが本物か分からないほど、再生ボタンと広告のボタンが同じ画面に入り混じった状態。

邪魔な広告を消そうとして、閉じたつもりで押した×印が、実は広告の一部だったということも珍しくありません。

動画を見たい一心で押したボタンが、そのまま警告音の引き金になるので、焦ってしまうのも当然です。

 

「登録完了」の請求画面

アダルトサイトならではの罠がもうひとつあって、再生ボタンを一度押しただけで「会員登録が完了しました」と料金を求める画面が出る、いわゆるワンクリック請求。

画面に自分のIPアドレス(ネットにつなぐときに割り振られる番号)や機種の名前が表示されていても、それだけで名前や住所まで相手に知られることはないので、個人情報が抜かれたと慌てる必要はありません。

請求されてもお金は払わず、書かれている連絡先にも連絡しないこと。

警告音が鳴るウイルス感染の偽画面

ピーピーという警告音と一緒に「ウイルスに感染しました」「このパソコンはブロックされました」と大きく表示され、サポートの電話番号が出てくる。

これが、いわゆる「サポート詐欺」の入り口です。

ネットのトラブル相談でもこの偽の警告はいちばん多く、IPAの窓口には2026年4月から6月の3か月だけで1,428件と、相談全体の3分の1を超える数が寄せられていました。

 

画面の中身は全部うそ

ただ、この画面が出ただけでは、パソコンはウイルスに感染していません。

画面が全体に広がってマウスで閉じられないのも、音が止まらないのも、慌てさせて電話をかけさせるための演出にすぎないんです。

 

電話の先で入れられる遠隔操作ソフト

表示された番号にかけると、受話器の向こうからマイクロソフトのサポートを名乗る相手が出て、キーボードの操作を細かく指示してきます。

言われるままにマウスやキーボードを動かして進めると、遠隔操作ソフト(離れた場所からパソコンを動かせるソフト)がパソコンに入り、相手がこちらの画面を自由に動かせる状態に。

そのうえで「サポート料金」として電子マネーを買わせ、支払わせるのが典型的な流れです。

 

2024年に国民生活センターが公表した相談事例には、修理代は100円だと言われてネットバンキングを開いたところ、遠隔操作で送金額を100万円に書き換えられた70代の男性の例まであります。

かけた先が海外の番号だったと、あとになって気づく人も。

被害の額で見ると、警察庁のまとめでは2025年の1年間にこの手口でだまし取られたお金は14.9億円。

1件あたりにすると140万円を超えていて、電話口で一度つながってしまうと取られる額が大きいのがこの詐欺の怖さです。

Win+Rを押させる偽のロボット認証

キーボードの2つのキーを同時に押そうとしている手元

最近増えているのが、よく見かける「私はロボットではありません」の確認画面をまねた罠。

チェックを入れると「認証を完了するには次の操作をしてください」と出て、Windowsキー+R、Ctrl+V、Enterの順に押すよう指示されます。

Windowsキー+Rで開くのは「ファイル名を指定して実行」という、パソコンに直接命令を打ち込むための小さな窓。

そこへ貼り付けられるのは、サイトが裏で勝手にコピーしておいた不正な命令で、Enterを押した瞬間に、自分の手でその命令を実行したことになってしまいます。

でも、本物のロボット認証は「私はロボットではありません」にチェックを入れるか画像を選ぶだけで、キーボードで何かを打ち込ませることはありません。

 

盗まれるのはブラウザの中身

この操作で入り込むのは、多くの場合、パソコンの中の情報を盗み出すタイプのウイルスです。

狙われるのは、ブラウザに保存しているIDとパスワード、それに「次からはログインしなくていい」状態を覚えておくための記録(Cookie)。

しかも、この記録ごと持ち出されると、相手はパスワードも、スマホに届く確認コードなどの2段階認証も飛び越えて、ログインした状態のままアカウントに入れてしまうことがあります。

パスワードをブラウザに覚えさせていると、たった1回キーを押しただけで、普段使っているSNSも買い物サイトもまとめて持っていかれかねません。

偽の警告画面が出たときの閉じ方

警告音が鳴っても、表示された番号にだけは電話をかけないこと。

それさえ守れば、あとは落ち着いて画面を閉じるだけで大丈夫。

Escキーを長押ししても画面が消えないときは、マウスで画面を一度クリックしてからもう一度長押しすると、×印が出てくることがあります。

 

電話してしまったらネットを切る

もし電話をかけて、言われるままにソフトを入れてしまったときは、次の順で動いてください。

  • Wi-FiをオフにするかLANケーブルを抜いて、インターネットから切り離す
  • 入れられた遠隔操作ソフトを削除する
  • パソコンではなくスマホなど別の端末から、ブラウザに保存していたパスワードを順に変える
  • 電子マネーを買った・カードの番号を伝えたときは、すぐにカード会社や最寄りの警察署へ駆け込む

ひとつずつ片づけていくと、本人だけでなく家族まで巻き込んで、思った以上に時間を取られることも。

どう動けばいいか分からないときは、IPAの情報セキュリティ安心相談窓口(03-5978-7509・平日10時〜12時と13時30分〜17時)でも相談できます。

会社のパソコンで見る危険

会社のパソコンに赤い警告画面が出て固まる会社員

ここまでは、自宅のパソコンで見ていた場合の話です。

会社のパソコンとなると、困るのが自分ひとりでは済まなくなります。

 

閲覧履歴は会社に残る

会社のパソコンは社内のネットワークを通してインターネットにつながっているので、手元の画面でどのサイトをいつ開いたかは、会社の側で確かめられることが多いんです。

しかも、これならバレないだろうと、履歴を残さないブラウザのシークレットモードで開いても、社内のネットワークに残る記録までは消えません。

2026年6月には、熊本県の50代の職員が、勤務時間中に職場のパソコンでアダルトサイトなどを1年半にわたって延べ約93時間見ていたとして、停職4か月の懲戒処分を受けたことが報じられました。

この職員は2018年にも同じことで減給処分を受けていて、今回が2度目。

 

詐欺の被害が会社ごと広がる

もっと怖いのは、会社のパソコンで偽の警告に引っかかってしまったとき。

遠隔操作ソフトを入れられると、相手はそのパソコンから開ける顧客の名簿や取引先の情報まで、画面越しにのぞける状態になってしまいます。

業務用のパソコンがサポート詐欺で遠隔操作された例は、自治体や学校、企業で何件も報告されていて、セキュリティ会社のトレンドマイクロがまとめた例では、少し前の2023年12月に、ある企業で1,690万円あまりが口座から勝手に引き出されていました。

会社のパソコンに限らず、仕事の場で使った私物のパソコンでも話は同じです。

2026年8月には、職場で私物のパソコンを使っていた青森県の60代の男性が、「トロイの木馬に感染しました」という警告から電話をかけ、マイクロソフトを名乗る男にグーグルプレイカードを何度も買わされて、合わせて16万円をだまし取られたと報じられました。

2026年9月には、埼玉県越谷市の市立学校の教員が、私物のパソコンで遠隔操作ツールを実行してしまい、つないでいたUSBメモリーに入っていた児童生徒の氏名や住所などが漏れた恐れがあると報じられたばかり。

電話をかけてしまった時点で、自分のお金だけでなく会社の信用まで巻き込んだ、とんでもない話になります。

怒られたくないからと、ひとりで片づけようとするより、すぐに社内のシステムの担当者へ知らせたほうが、結果的に傷は浅くすむはずです。

Macやスマホでも残る危険

Windowsより安全そうなMacやスマホに替えれば平気と思いたいところですが、偽の警告画面とワンクリック請求は、スマホやタブレットにも同じように出てきます。

Windowsキーを使う偽のロボット認証も、Mac向けには、命令を打ち込むためのターミナルという画面へ貼り付けさせる形が出てきました。

つまり、Windowsから替えても、罠は形を変えてついてくる。

 

一度「通知を許可」してしまったサイトからは、パソコンの画面の右下へピョコッと偽の警告が届き、それをクリックして全画面の警告に飛ばされるパターンもあります。

クリックした覚えがないのに警告が出てくるときは、見覚えのないサイトの通知が残っていないかを、ブラウザの設定で確かめてみてください。

そこで「許可」を外しておけば、それ以上は画面に届かなくなるはず。

 

画面の向こうの人たちが待っているのは、警告音に焦って、言われるままに指を動かしてしまう一瞬です。

警告音をあれだけ大きく鳴らすのも、見ていたものが見ていたものだけに、誰にも聞けないまま電話へ手を伸ばしてしまう人がいるからなのかもしれません。

自宅のパソコンで電話さえかけていなければ、見ていたことを誰かに打ち明けなくても、画面を閉じるだけで終わらせられる話なんですよね。