メルカリは無法地帯だ、という言い方をよく見かけるようになりました。

ただ、実際にアプリを開いて出品を眺めても、並んでいるのは着なくなった服や読み終わった本ばかりです。

どこが無法なのか、はっきり言える人は多くありません。

なんとなく怖い、で終わってしまいます。

 

ただ、根拠はちゃんとあります。

街の中古屋には古物営業法で3つの決まりがかかっていますが、その3つがフリマアプリでは1つも働きません。

 

穴が空いていれば、そこで何かが起きます。

その隙間でいちばん名前が知られているのが、マネーロンダリングです。

2026年9月には、金額まで挙がりました。2、3か月で305億円。

どこに穴があって、その隙間で何が起きていると言われているのか。


盗んだお金は使うときにいちばん足がつく

マネーロンダリングは、日本語だと資金洗浄と訳されます。

汚れを落とすというより、お金の出どころを別のものに置き換える作業だと思ってください。

 

詐欺で受け取ったお金も、盗んだ品物を売って作ったお金も、手に入れた時点では札束のままです。

ところが、まとまった額を口座に入れたり、大きな買い物に使ったりすると、必ず聞かれます。

このお金はどこから来たのですか、と。

悪いことをして得たお金は、手に入れるときより、使うときのほうが足がつきやすいのです。

 

売れた代金には説明がついてくる

そこで使われるのが、物の売り買いです。

フリマアプリで何かが売れると、その代金は「売上金」という名前でアカウントに入ります。

取引の記録も残りますし、発送の伝票も残ります。

出どころを聞かれても、不用品が売れました、で説明がついてしまいます。

 

もうひとつ、クレジットカードの枠を現金に変える使われ方もあります。

2017年4月、メルカリに1万円札そのものが出品され、1万2千円ほどの値がついていたことが話題になりました。

なぜ、1万円を1万2千円で買う人がいるのか。

カードは使えるけれど現金がない人が、手数料を上乗せしてでも現金がほしかったからです。

お金を移すために、商品の写真が使われている。

この形が、資金洗浄の話でいつも出てくる骨組みなんですよね。

 

単純すぎて拍子抜けするかもしれませんが、単純だからこそ止めにくいのです。

特別な技術は要らず、必要なのは売り買いの記録が残る場所と、値段を自分で決められる自由の二つだけ。

フリマアプリには、その両方がそろっています。


メルカリの規約に手口が3つ書いてある

メルカリのヘルプには「マネーロンダリングが疑われる行為」という項目があり、禁止されるものが具体的に挙げられています。

 

ひとつめは、通常の取引に見せかけて、一人で複数のアカウントを持ち、出品者自身が購入する行為。

関係者に買わせる行為も、同じところに並んでいます。

ふたつめは、架空の商品をクレジットカードで購入し、現金化する行為。

みっつめは、その他、事務局が不適切と判断したもの。

 

該当すると判断されたら、取引のキャンセルや商品の削除。

さらに、メルカリと、決済を担うメルペイの利用を制限することがある、と書かれています。

つまり、こういう使われ方があることは、運営がいちばんよく知っています。

無法地帯と言われる根拠はあるのか。そう聞かれたら、まずここを見せるのがいちばん早いでしょう。

 

相場のない古本ならいくらでも値がつけられる

ひとつめの、自分で出して自分で買う形。

もし本当にやる人がいるとしたら、どんな商品を選ぶでしょうか。

売れ残っても困らなくて、値段に文句がつかないもの。

たとえば古本や雑誌が、その条件にぴたりと当てはまります。

 

これがブランド品や家電なら相場を知っている人がすぐ気づきますが、古本や雑誌にはその相場がありません。

値段が中身と釣り合っていなくても、高すぎると言える人がいないのです。

 

しかも紙の本は、封筒に入れて数百円で送れます。

本当にその値段で読みたい人がいるのか、それとも金額を書き込むための紙なのか。

そこは商品ページを一つ開いただけでは決められません。

 

2017年の現金出品は4日で禁止になった

先ほどの1万円札の件は、そのあとどうなったか。

2017年4月24日、メルカリは資金洗浄につながるおそれがあるとして、現行紙幣の出品を禁止しました。

 

対応は早かったのですが、当時から冷めた声も出ていました。

禁止できるのは紙幣という「物」であって、値段をつけられる物はほかにいくらでも残ります。

この指摘が、9年たったいまも同じ形で繰り返されているんですね。

禁止の言葉が足りないのではなく、禁止できるのは名前がついた物だけだからです。


中古屋にある3つの決まりがフリマにはない

では、同じ中古品を扱う街のリサイクルショップはどうなっているのか。

こちらには古物営業法という法律があり、都道府県の公安委員会から古物商の許可を受けなければ営業できません。

 

許可を受けた店には、大きく3つの決まりがかかります。

ひとつめは、買い取るときに相手の氏名や住所を確かめる本人確認。

ふたつめは、取引の日付・品物・特徴・相手の情報を古物台帳に記録し、最後に書いた日から3年間保存すること。

みっつめは、扱う品物が盗品らしいと気づいたときに、警察へ届け出ること。

盗まれた物を売りさばく先を押さえておけば、盗む側の出口がふさがる。

店に手間をかけさせているように見えて、ねらいは盗難そのものを減らすことなのでしょう。

 

自分の不用品を売るだけなら許可はいらない

ここがフリマアプリとの分かれ目で、自分が使っていた物を売るだけなら古物商の許可は必要ありません。

売るために仕入れて、繰り返し利益を出しているなら許可が要る、という線引きです。

 

ただ、その線は外から見えません。

アプリの画面には、許可を持っているかどうかも、繰り返し仕入れているかどうかも出てこないのです。

売っている物も値段も、店とほとんど変わりません。

違うのは、買い取った相手の名前がどこにも残らないことだけ。

 

そして、きちんと許可を取っている人ほど、その手間を自分で背負っています。

許可を取った人は、出品画面に古物商の表示を出しておく決まりです。

それを消しただけで、県警から電話がかかってくる。

取らずに同じことをしている人には、その電話が鳴らないのです。

本人確認も、台帳も、警察への申告もない。これが、無法地帯と言われるときの3つの穴です。


銀行は用途を聞いてくるが売り場は聞いてこない

物のほうに続いて、お金を扱う側にも法律がかかっています。

犯罪収益移転防止法といって、決められた事業者には本人確認と、疑わしい取引を届け出る義務があります。

銀行や証券会社、クレジットカード会社、送金を扱う資金移動業者、貴金属の買取業者などがそこに並びます。

 

窓口で大きな金額を動かそうとして、用途を細かく聞かれた経験がある方もいると思います。

周りに人がいる場所で使いみちを問いただされれば、気まずいでしょう。

ただ、これは職員の性格ではなく、法律で決められた仕事です。

 

一方で、物を売り買いする場そのものは、この事業者の一覧に入っていません。

メルカリの場合、決済を担うメルペイには資金移動業者として義務がかかります。

ただ、出品と購入が行われる売り場のほうは、そもそも扱いが違うのです。

お金の出口には見張りがいて、物が動く入口には同じ見張りがいない

 

2025年3月から高額の取引は本人確認が必須になった

もっとも、運営が何もしていないわけではありません。

メルカリは2025年3月19日から、高額な商品の出品と購入で本人確認を必須にしました。

マイナンバーカードを読み取るか、書類と自分の顔を撮るか。

そのどちらかで行います。

 

ただし、いくらから必須になるのかという金額は公開されていません。

基準を出してしまえば、そのすぐ下に値段をそろえる人が出てくるからでしょう。

理屈としては分かるのですが、外から見ている側には確かめようがありません。

対策をしていないのではなく、対策の中身が見えない

動いていないように見えてしまうのは、たぶんここでしょう。


105万円は贈与税がかからない額の5万円下にある

中身がばらばらな古本に、同じ値段だけがずらりと並ぶ。

そういう画面が回ってくると、多くの人がまず引っかかるのは金額そのものでしょう。

よく挙がるのが105万円という額で、百万円ちょうどでもなく、切りのいい数字でもありません。

 

近い数字で思い当たるものが、ひとつだけあります。

贈与税の基礎控除です。

人からお金や物をもらったとき、1月1日から12月31日までの合計が110万円までなら、贈与税はかからず申告もいりません。

もらう人ひとりにつき、毎年110万円までという枠です。

105万円は、その5万円下にあたります。

 

ぴったりを避けるという発想は実際にある

この枠を意識する人が、金額をわざとずらすことは珍しくありません。

この方は上へずらす相談をしていますが、下へずらせば、そもそも枠に触れません。

ちょうどの額は目を引くから外しておく。

贈与の世界では、ふつうに交わされている話なんですよね。

 

ただし、正直に書いておきます。

フリマで払った代金は贈与ではありませんから、この枠と105万円を直接つなぐ理屈は、本当は通りません

それでも、105万円という半端な額に理屈がつく数字が、ほかに見当たらないのも事実です。

ここは分からないままにしておきます。


値段をつけたのは人ではなくツールかもしれない

もうひとつ、あの並びは資金洗浄ですらなく機械が自動でつけた値段だという、まったく別の見方があるのです。

 

いま、無在庫転売と呼ばれるやり方があります。

アマゾンや楽天に出ている商品の情報を自動で取り込み、フリマ側へそのまま出品する。

注文が入ってから元のサイトで買って、そこから直接お客さんへ送らせる。

在庫を持たずに売るやり方。

 

このやり方には、元のサイトで在庫が切れたときの困りごとがあって、売れてしまうと届けられないので出品を止めなければいけません。

そこで出品を消す代わりに、誰も買わない値段へ書き換えてしまう

そういうやり方をする人がいる、と言われています。

 

もし本当にそうなら、同じ額がずらりと並ぶのも説明がつきます。

売り切れを示すSOLDの札が付いているのも、同じこと。

売れたのではなく、売れないようにするための値段。そう読むこともできるでしょう。

 

それでも規約には触れている

この見方が当たっていたとしても、話は終わりません。

メルカリは、手元にない商品を売ることと、通販サイトから購入者の住所へ直接送らせることを、はっきり禁止しています。

資金洗浄でなくても、規約の外にいることは変わりません。

数か月待たされたあげく、問い合わせ先はショップだと言われた人がいます。

誰も洗っていなくても、困っている人はもう出ています。


Shopsなら書類も確定申告書も出している

本人確認も台帳もないのは個人が自分の物を売るときの話で、商売として売るならメルカリShopsという別の入口があるんです。

同じアプリの中にありますが、審査はまったくの別物。

あの並びを出していたのもShopsの店だった、という指摘が出ていました。

個人事業主なら本人確認の書類に加えて、青色申告決算書と確定申告書まで求められます。

去年いくら売って、いくら残ったか。

そこまで見せないと、ショップは開けません。

法人なら会社の情報を出すことになります。

 

つまりShopsの側は、穴が塞がっているはずなんですよね。

氏名も住所も、確定申告の中身まで運営は持っていることになります。

 

指摘のとおりだったのかは、外からは確かめようがありません。

ただ、もしそうだったのなら、止まっていない理由は「知らないから」ではなくなります


名指しされた13社を数えたのは報道機関ではなかった

その、審査を通ったはずの側に、9月になって具体的な金額がつきました。

2、3か月で305億円。年間同じペースなら1000億円を超える、という広がり方です。

数字が出てくると、話は急にはっきりして見えます。

 

ただ、その数字がどこから来たのかは、知っておいたほうがいいと思うんですよね。

出どころは、2025年7月に個人のブログへ載った一覧でした。

並んでいるのは、13社のショップ名と、それぞれの売上額と取引件数。

 

書いているのは記者でも当局の人でもありません。

ふだんはキャンピングカーの自作や旅のことを書いている、一人の利用者でした。

調べに使ったのは、メルカリの画面と、ネットオークションの取引を集計している外部サイトの二つだけ。

305億円は、報道機関が取材して出した額ではなく、公開情報だけで数えられた額です。

 

しかも、全部を数え上げた額ではありません。

使った集計サイトは無料で遡れるのが5千件までで、それより下は見えないそうです。

13社それぞれの、値段の高い順に5千件だけを足した合計が305億円でした。

だからこの人は、金額を書くたびに「少なくとも」と添えています。

一覧を作った人が最初にメルカリの窓口へ問い合わせたのは、2025年1月でした。

返ってきたのは、違反商品の報告ガイドを案内する文面だったといいます。

そのガイドのページでできたのは「役に立たなかった」のボタンを押すことくらいだった、と本人は書いていました。

もう一度返信すると、いただいた情報は改善事項として検討します、という文面。

そこから返答は来なくなったそうです。

 

同じ年の1月末には岡山県警のサイバー犯罪対策課へ。

2月末から3月にかけては、税務署の統括国税調査官と面談。

資料まで手渡しています。

県警からはその時点まで一度も返信がない、というのが本人の記述です。

 

7月にはとうとう、メルカリの経営体制の移行に関わったコンサル会社へ問い合わせました。

経営陣まで話が届くルートをご存じではありませんか、という内容です。

お門違いなのは承知している、と自分で断ったうえで書いていました。

 

ペーパーカンパニーと見た根拠は年金の名簿だった

13社のうち1社を除いてペーパーカンパニーだ、というのがこの人の見立てです。

根拠に挙げていたのは、誰でも引ける名簿でした。

 

日本年金機構には、厚生年金と健康保険が適用されている事業所を検索できるページがあります。

株式会社なら、社員が一人でも入っていればここに載るはずです。

ところが名前を入れても「該当する事業所がない」と返ってくる会社が、いくつも並んでいたそうです。

 

登記されている住所のほうも調べています。

他人の事業所の住所がそのまま使われていたもの、人の住んでいない別荘らしき建物、あとは大半がマンションの一室でした。

数か月で1万5千件を超える仕入れと保管と発送をこなせる場所には見えない、という指摘です。

 

もちろん、ここも外から引ける情報だけの推定です。

社会保険に入っていない小さな会社はほかにもあります。

倉庫を別に借りていれば、登記の住所は狭くても足りるかもしれません。

ただ、名前の挙がった会社が揃って同じ形をしていたことは、本人の記録に残っていました。


売り切れの表示は売れたという意味とは限らない

ここまでの話には、正面からの反論があります。

しかも、かなり効くほうの反論です。

 

メルカリShopsでは、在庫の数を0にするか出品を止めると、その商品にSOLDの表示が付きます。

買った人がいなくても、売り切れの表示は出るということです。

店が複数の通販サイトへ同じ商品を出しているとき、どこかで売れたら残りの在庫は0にします。

在庫の管理ツールが自動でやってくれるので、店の人が手を動かす必要すらありません。

その結果、メルカリの画面には売れていない商品のSOLDが並びます。

105万円で買われたのではなく、105万円のまま画面から下げられただけ。

 

この指摘は、ブログの側にもコメント欄を通じて届いていました。

返答はこうです。実際に取引されたのか在庫を0にしただけなのか、一般の利用者には見分けられない。

その仕様を放置していること自体が問題で、しかも一部のグループだけが繰り返しこの表示を作っている、と。

 

あわせて挙げていたのが、商品ページの中身でした。

古物なのに、写真は1枚きり。その1枚が、よその通販サイトにある同じ商品の写真と同じに見える。商品名まで同じ。

違うのは値段だけで、数倍から数十倍、ひどいものでは845倍になっていたそうです。

 

そしてもう一つ、見落としたくない一行があります。

この件を1年以上追いかけているアカウントも、総額のほうには注釈を付けていました。

一括出品のツールで、全部のサイトへ同じ商品を投げ込んでいる可能性がある。

だから、集計サイトから抜いた総額をメルカリで取り扱われた額と捉えるのは、やや注意が必要。

そういう趣旨でした。

そのうえで、金額は抜きにしても危ういファクトではある、と続けていました。

 

疑っている本人が、自分の出した数字に自分でただし書きを付けているのです。

この一行があるかないかで、話の受け取り方はずいぶん変わってくるはずです。

 

13社のうち1社は本人があとから取り消している

一覧が出た2日後の2025年7月19日、同じブログに短い記事が上がりました。

並べたうちの1社について、実態のある会社だと分かったので誤爆でした、という謝罪です。

先ほどの「1社を除いてペーパーカンパニー」の1社とは、また別の会社です。

元の記事の表からも外し、合計額も引き直しています。

 

いま出回っている305億円は、その1社を落としたあとの数字です。

落とす前は308億5千万円でした。

 

取り消しが出たことを、告発が雑だった証拠として読む人もいるでしょう。

間違いを自分から公開して直す人の数字だから残りは信じられる、と読む人もいるはずです。

どちらに読むかを、ここで決めてしまう必要はありません。


SOLDを自分で付けられるのは店の出品だけ

ただ、この反論には条件がひとつ。

 

メルカリの中には、売り場が2つあります。

ひとつは、着なくなった服や読み終わった本を出す、いつもの出品。

もうひとつが、審査を通った事業者だけが開けるメルカリShopsです。

 

在庫の数を設定できるのは、このうちShopsのほうだけ。

メルカリの案内にも、通常のメルカリとは別に、ショップにうれしい在庫機能などをお使いいただけます、と書かれています。

在庫を0にしてSOLDを出すという操作は、個人の出品にはそもそもありません。

 

個人の出品は商品を1点ずつ登録していく形なので、在庫の数という考え方が入っていないのです。

売るのをやめたいときは出品を一時停止できますが、その商品は公開停止中の扱いになって画面から消えるだけ。

SOLDの札は付きません。

 

だとすると、話は逆からも読めることになります。

個人の出品で105万円のSOLDが付いていたなら、そこでは本当に買われているということです。

売れた側からは手数料の10%、つまり10万5千円がメルカリへ引かれています。

 

同じ105万円のSOLDでも、どちらの売り場に出ているかで意味は正反対。

 

見分け方なら、商品ページの上のほうに出ているんです。

Shopsの商品には「メルカリShops」の表記が出て、検索結果では黒い帯が付きます。

その表記があるかないかを見るだけで、いま自分が見ている画面がどちらの話なのかが分かるはずです。

 

そのうえで、店のほうだとしても残る謎があります。

在庫を抱えている店が、自分の手元にある品を撮った写真なら、よその店と一致することはありません。

写真がどこかから回ってきているなら、その商品が本当にそこにあるのかも分からなくなります。


仕様だと言う人も1年前からやめろと言っている

Shopsの仕様だと説明している人たちが、そこで話を終えているわけではありません。

投稿は2025年9月。今回の騒ぎより、およそ1年前のものです。

 

ここで心配されているのは、マネーロンダリングかどうかとは別のことでした。

売れていないのにSOLDが付くのなら、その画面は値段の吊り上げにも使えます。

相場が分からなくなれば、高いのか安いのかを判断する材料も消えるでしょう。

 

つまりこの人の主張は、仕様だから問題ない、ではありません。

仕様だから別の悪用ができる、と言っているのです。

洗っているのかどうかで話が真っ二つに割れている横で、ここだけは誰も否定していないことになります。

この画面は、売れていないものを売れたように見せられるということ。

 

もともと古物営業法が求めていたのは、あとから誰の手を通ったのかをたどれるようにしておくことでした。

売れていない物にSOLDが並ぶ画面は、ちょうどその反対側にあると思います。

 

手元にない物の出品はShopsの規約でも禁止されている

よそで売れたから在庫を0にした、という説明には、前提がひとつ隠れていました。

同じ商品を、いくつもの通販サイトへ同時に出しているということ。

在庫を本当に持っていて、それを複数の売り場へ並べているだけなら、決まりの上では問題ありません。

引っかかってくるのは、手元に無い物を出していた場合です。

 

手元にない商品を出してはいけない、というメルカリの決まりは先に見たとおり。

同じ決まりが、Shopsの側にももう一つ別に用意されていました。

ガイドの文面はほとんど同じで、違うのは最後の一行だけ。

一部のパートナー事業者は手元にないものを販売する場合があります、というただし書きが付いています。

 

どこがそのパートナーなのかは、ここには書かれていません。

無在庫で出すこと自体を止めているのは法律ではなくその売り場の決まりのほうで、破った人をどうするかも、その売り場が決めることになります。

 

Shopsのガイドには、もう一つ気になる項目がありました。

マネーロンダリングの禁止が、個人向けとは別に用意されているのです。

 

しかも、中身のほうが具体的でした。

現金化を目的に、ショップの関係者やその家族などが購入すること。

購入者に代わって、ショップの関係者が代理で注文すること。

 

審査を通った事業者の側でも同じことが起こりうる、と読める書き方です。

 

書いてあること自体は、運営が把握している証拠でもあるでしょう。

ただ、書いてあるのに画面から消えていないなら、知りたいのはそこではありません。


通報しても動かないと言われた窓口に7月に協定ができた

通報しても消えない。この話でいちばん多く聞くのが、その不満です。

一覧を作った人に返ってきたのも、結局は定型文でした。

ただ、窓口の側にも今年、動きがありました。

2026年7月9日、メルカリは警察庁と「不正取引等に関する情報共有に関する協定」を結んでいます。

中身は、不正の疑いが高いと判断した取引の情報を、法令に基づいて警察庁へ渡すこと。

あわせて、AIを使った不正検知の高度化と、本人確認の強化にも取り組むと書かれていました。

 

協定そのものは、はっきりした前進です。

 

ただ、気になってくるのは中身のほうです。

発表文に並ぶのは、詐欺と、フリマサービスを悪用した犯罪。

マネーロンダリングという言葉は、どこにも出てきません

 

時間のほうも、少し離れています。

ブログからの通報が2025年1月、協定が2026年7月。あいだに1年半。

その間に何が動いたのかは、外からは見えないままです。

 

それに、この形の協定はメルカリのためだけに作られたものではありません。

警察庁は同じ枠組みを他の会社とも結んでいて、2026年9月9日にはマイクロソフトとの締結を発表していました。

協定ができたことは、メルカリが今回の件で特別に動いた証明にはなりません。

かといって、何もしていないという言い方のほうも、これ以降は少しずつ的が外れていくでしょう。

 

年間1000億円なら流通額のおよそ1割にあたる

金額の大きさは、比べる相手を置いてみるとつかみやすくなるはずです。

メルカリの国内マーケットプレイスの流通総額は、2025年6月期で1兆1,209億円でした。

年間1000億円なら、その1割弱にあたる計算です。

 

十数社が流通額の1割弱を作っていることになる、と考えると数字は大きすぎるようにも見えます。

大きすぎるから成り立たない、と読むこともできますし、大きすぎるから止められないのだ、と読むこともできます。

売れた額の10%が手数料として運営に入る仕組みなので、1000億円なら100億円がそちら側へ落ちます。

 

ここをどちらに読むかも、材料を並べたうえで読む人が決めることだと思います。


33万円が止まったのは普通に使っていた人だった

見えないのは外から眺めている人だけではなく、疑わしい取引を止める仕組みは当然ながら普通の利用者にも当たるのです。

売上金が急に引き出せなくなった、という声は昔から絶えません。

2018年10月に投稿されたものですが、いまも同じ形の声は出ています。

規約には、事前の通知なしに利用を制限でき、その理由を説明する義務を負わない、と書かれています。

 

不正を見つけたときに手口を明かせないのは、どの会社でも同じでしょう。

それでも、止められた側には何も分からないまま残高だけが残ります。

怖いのは悪い人が使っていることより、巻き込まれたときに説明がもらえないことのほうかもしれません。

 

頼まれて貸したアカウントは自分の名前で残る

もうひとつ、気をつけたいのが名義の話です。

アカウントを貸してほしい、代わりに出品してくれたら手数料を払う。

こういう誘いは、銀行口座の売買とまったく同じ形。

 

頼んだ人が誰であっても、記録に残るのは貸した側の名前と住所です。

お小遣い稼ぎのつもりで受けた人のところへ、後から警察が来ます。

身内から頼まれたときほど、断りにくいところが厄介です。


同じ人が何を出しているかは一覧で見られる

怪しい出品を一つずつ見抜くのは、正直むずかしいと思います。

見た目がふつうであることが、そもそもこの話の前提になっているからです。

 

ただ、商品ページだけを眺めていても分からないことが、出品者の画面には出ています。

商品ページから出品者の名前をタップすると、その人がほかに何を出しているかが一覧で並びます。

中身がばらばらなのに値段だけが不自然に揃っていたり、写真に写っている品物と金額がどう考えても釣り合っていなかったり。

そういう並びは、目当ての商品ページを一つ見ているだけでは絶対に見えません。

 

高い買い物をするときは、本人確認済みの表示が出ているかも分かります。

2025年3月からの必須化で、高額の取引には身元の確認が入るようになりました。

安いのに確認がなくて、やたら急かしてくる。

そう感じたら、一度手を止めてかまいません。

 

気になる出品を見つけたときの通報の窓口は、商品ページの下のほうに用意されています。

出しても消えないという声が多いのも事実です。

それでも、窓口の場所を知っているのと知らないのとでは、次に見つけたときの動きが変わるはずです。

 

決まりのほうを変える話も出ている

穴が空いているのは、運営の努力ではなく法律のほうでした。

だからでしょうか、法律を変えるべきだという声も出ています。

売る場所ではなく売る人に許可を求めよう、という考え方です。

実現するかは分かりませんが、少なくとも問題の置き場所は合っています。

 

無法地帯だという言い方は、気分で出てきた言葉ではありませんでした。

古物営業法の3つの決まりがどれも届いていないこと。お金の見張りが決済の側にしかないこと。本人確認の基準が公開されていないこと。

そして、審査を通ったはずの側でも同じ画面が残っている、と言われていること。

これだけ重なれば、外から見て真っ暗になるのは当たり前だと思います。

 

ただ、305億円という数字のほうは、まだ誰にも確かめられていません。

数えたのは公開情報だけを頼りにした一人の利用者で、売り切れの表示は売れたという意味とは限らず、名前の挙がった1社は本人が取り消しました。

疑いを追いかけている側でさえ、この総額はそのまま受け取らないほうがいい、と書き添えています。

 

洗っているのか、機械がつけた値段なのか、外からは決められません。

ただ、どちらだったとしても、止まっていないことだけは同じです。

 

怒っている人が大げさなのではなく、見えるようにできていないほうに理由がある。

公開情報だけでここまで数えられてしまうこと自体が、その証拠のようなものです。

そう分かっているだけで、次に同じ話を見かけたときの立ち位置が変わります。

手元でできるのは、買う前に出品者の一覧を一度開いて、上の表記を確かめるくらいのことでしょう。

その一手間があれば、少なくとも自分の側は真っ暗ではなくなります。