有名人の「流出動画」が出回ったという話がXで広がると、決まって、その名前とリンクを添えた投稿が次々に流れてきます。

2026年10月にも、ある女優の名前を使った「流出動画」の投稿がタイムラインにあふれました。

押した先のTokyomotionのような動画サイトで、急に「ウイルスに感染しています」という赤い警告が出て、スマホやパソコンが壊れたのではと青ざめた人もいるはずです。

リンクを貼った側にとっては、押されたその1回1回が立派な商売の種です。

ただ、警告が出ただけなら、画面の中のボタンを押さずに片づければ、たいていは自分の手で元どおりにできます。

では、リンクの向こうでは誰が何を稼いでいて、おかしくなったスマホやパソコンは、まず何をすれば戻るのでしょうか。

流出動画のリンクを踏ませるアカウントの狙い

「動画を持っている」とリンクを貼るアカウントの多くは、本当に動画を見せたいわけではありません。

欲しいのは、あなたが押すことで積み上がる表示回数と、そこから払わせるお金や情報です。

しかも、ひとりの物好きのいたずらにしては、数が多すぎます。

同じ文が7分で16回

2026年10月の騒ぎでは、話が広がり始めた10月5日の夜から1日あまりたった、7日の深夜1時から1時7分までのわずか7分のあいだに、「ティックトックで投稿されてます!!無料で見れるうちにダウンロード」という同じ文が、少なくとも16のアカウントから投稿されていました。

どのアカウントも、IDは英語の綴りなのに、表示名はたいてい日本語。

貼られているのは、アドレスにTikTokやXの名前を混ぜて本物に見せかけた、まったく別のサイトへのリンク。

 

人気の投稿を丸ごと写して、リンクだけを付け足して流すアカウントもいくつもありました。

売り方もあからさまで、「PayPayで100円」「動画3本と写真5枚で4,000円」、なかには「詐欺じゃありません」と書き添えてDMへ誘う投稿まで並ぶありさまです。

それでいて、実際にファイルが届いたという声はほとんど見当たらず、「売ります」の話だけが先に広がっています。

7日の夜になると、手口はさらに増えていました。

  • ほかに話題になっている人の名前をハッシュタグに並べ、別の話題を調べた人の目にも入るようにする
  • 「どこで見られますか?」と聞く投稿に、別のアカウントが「ここで見られました」とリンクを返す
  • 無料のブログサービスで作ったページへ、何十ものアカウントから同じように飛ばす
  • サッカーのJリーグのクラブの公式サイトの中にまで、女優の名前と「動画」をうたうページが紛れ込み、ニュースの検索結果に並ぶ

よく知っている名前のサイトだからといって、中に置かれたページまで安心できるわけではないんですね。

 

1回押されるたびに誰かが得をする仕組み

リンクを貼る側の狙いは、だいたい次の4つ。

  • 表示回数:たくさん見られるほど広告の収入が入る仕組みに、話題の名前で投稿を乗せる
  • アプリの紹介報酬:TikTok Liteのような、紹介した人にポイントが入るアプリへ登録させる
  • 代金のだまし取り:「PayPayで払えば送る」と言ってお金だけ受け取る
  • 偽の警告への誘導:ウイルス感染の警告を出し、有料アプリや電話へつなげる

Xは2023年7月から、たくさん表示された認証済みのアカウントに、広告収入の一部を分ける仕組みを続けています。

話題の名前を出した投稿が伸びれば伸びるほど、その表示回数は貼った側のアカウントに積み上がっていくわけです。

2024年1月の能登半島地震で、救助を求める投稿を丸写しし、警報にまで意味のない返信をつけて表示回数を稼いだ「インプレゾンビ」と、話題の名前に群がるという点では同じ手口です。

だから同じ文が、消されるそばから別のアカウントで流れてくるんです。

 

売られているのは名前だけ

有名人の名前だけで性的な動画を売る商売は、最近始まったものではありません。

2023年1月には、元アイドルグループ「KissBee」の元メンバーが、別人の性的な動画を、自分だと偽ってTwitterで売られていると明かしました。

売っていたアカウントは、何人もの女性タレントの名前を並べていたそうです。

お金を払っても、届くのは関係のない動画か、何も届かないかのどちらかだと思っておいたほうがよさそうです。

Tokyomotionで出るウイルス警告の正体

本物に似せた別サイトのほかに、「ここで見られる」と行き先に名前を出されていたのが、Tokyomotion(トーキョーモーション)という動画サイト。

誰が載せたのか、映っている人が同意しているのかも分からない大人向けの動画が並ぶサイトです。

2023年1月には閉鎖を求める署名も始まり、署名を立ち上げた側は「女性を貶め続ける違法投稿サイト」と呼んで、盗撮を含む違法な動画が日々増えていると訴えています。

再生ボタンを押したつもりが広告

こうした無料の動画サイトには、本物の再生ボタンとそっくりな広告が、いくつも重なっているもの。

国のセキュリティの相談窓口を持つ情報処理推進機構(IPA)も、偽の警告が出るきっかけの1つに、「アダルトサイトにある動画再生ボタン(もしくは再生ボタンに似せた広告)」をはっきり挙げているほどです。

再生しようと押したつもりが、実は広告を押していて、そのまま別のページへ飛ばされる。

しかも、この手の広告は、相手を見て顔を変えます。

広告の審査や調べる側には普通のニュースサイトを見せてすり抜け、一般の人だけを詐欺のページへ飛ばす。

そんな広告が、2023年の4月から5月のひと月足らずで1,000以上のサイトに出回っていたと、セキュリティ会社のトレンドマイクロが報告しています。

そして飛ばされた先で、画面いっぱいに「ウイルスが検出されました」「あと◯秒で個人情報が流出します」といった警告が出てくるのです。

 

「ウイルスに感染」の警告はほとんどが偽物

この手の警告は、スマホやパソコンが本当にウイルスを見つけて出しているものではありません。

サイトの広告枠に表示された、ただの画像や文字です。

政府広報オンラインも、警告が出ても実際には感染していないことがほとんどだと呼びかけています。

警告の狙いは、こちらに何かをさせること。

「ウイルスを駆除する」とうたうアプリを入れさせて、あとから料金を引き落とす。

画面に出したサポートの電話番号にかけさせて、お金を払わせたり、パソコンを遠くから操作できるソフトを入れさせたりする。

 

警告の電話がつながる先

警告に出た番号へ電話すると、マイクロソフトの社員などを名乗る相手が、日本語で「直し方」を案内してきます。

2025年5月には、警察庁が渡した被害の情報をもとに、インドの当局が、日本語で被害者とやりとりしていたとみられる担当者を含む20代の男6人を逮捕しました。

被害は2023年8月から2025年2月までに、28都道府県の約200人、およそ1億8,000万円にのぼるとみられる規模でした。

 

警察庁のまとめでは、こうした「サポート」名目の詐欺は、2025年に1,048件と前の年より3割ほど減ったのに、被害額は14.9億円と、5割近く増えています。

IPAが注意を呼びかけているのが、パソコンを遠くから操られたまま、ネットバンキングを開かされる手口。

送金の額や送り先を書き換えられて198万円を不正に送金された例や、1,000万円以上の被害も確認されています。

どの手口も、お金や情報が抜かれるのは、こちらが何かを押したり入力したりしたあとです。

だからこそ、警告が出たら画面の中のボタンは「OK」も「閉じる」も押さず、スマホやパソコン本体の設定やボタンを使って片づけていくのが基本です。

スマホがおかしくなったときの対処法

同じページに何度も戻される、警告が消えない、通知が鳴りやまない。

スマホがこうなっても、警告の中のボタンを押さず、表示された番号に電話しないことさえ守っていれば、たいていは中身まで荒らされてはいません。

iPhoneの場合

iPhoneは、こちらが許可しない限りアプリが勝手に入ってこない仕組みなので、ページを開いただけで中身まで乗っ取られる心配は、ほとんどありません。

落ち着いて、上から順にやってみてください。

  • ①機内モードにして通信を切る(画面の右上から下へなぞって出てくる、飛行機のマークをタップ)
  • ②Safariのタブをまとめて閉じる(四角が2つ重なったタブのボタンを長押し→「◯個のタブをすべて閉じる」)
  • ③「設定」→「アプリ」→「Safari」→「履歴とWebサイトデータを消去」(「アプリ」が無い少し前のiOSなら、「設定」を下へスクロールした先の「Safari」から)
  • ④機内モードを戻して、Safariのふだんの画面が出るか確かめる
  • ⑤まだ警告が出るなら強制再起動(iPhone 8以降とSE第2・第3世代は、音量を上げるボタン→下げるボタンの順に押してすぐ放し、右側のボタンをリンゴのマークが出るまで押し続ける)

ここまでで警告が出なくなれば、もう終わりです。

警告で「OK」を押してしまい、カレンダーに「ウイルスに感染しています」という予定が何十件も入ってくるようになったときは、カレンダーアプリで「カレンダー」をタップし、見覚えのないカレンダーの横の「i」のマーク→「照会を解除」を押します。

それより前の機種の強制再起動や、カレンダーの止め方を画面の順に追いたいときは、別にまとめた怪しいサイトでSafariが固まった時の対処法を開いてみてください。

 

Androidの場合

Androidは、警告の指示どおりにアプリを入れてしまうと、そのアプリが居座ることがあります。

なので最初に、警告に言われてアプリを入れたかどうかで、やることを分けてください。

何も入れていないなら、ふだん使っているブラウザ(多くはChrome)の記録を消して、通知を止めるだけで済みます。

  • ①Chromeの右上の「︙」→「閲覧履歴データの削除」→期間で「全期間」を選んで「データを削除」
  • ②同じ「︙」→「設定」→「サイトの設定」→「通知」で、見覚えのないサイトの通知をオフにする
  • ③Playストアの右上の丸いアイコン→「Play プロテクト」→「スキャン」で、入っているアプリを調べる

通知が鳴りやまないのは、警告ページで「許可」を押してしまい、そのサイトからの通知を受け取る設定になっているからです。

届いた通知を下へ引いて開き、出てきた「登録解除」を押しても止められます(出てこなければ、②の手順で止めれば大丈夫です)。

 

ここまでで警告も通知も出なくなれば、終わりです。

警告に言われるまま入れたアプリは、アイコンを長押しして出てくる「アンインストール」で消しておきましょう。

消せない、消してもすぐ画面が乗っ取られるという場合は、余計なアプリが動かない「セーフモード」でスマホを起動し直して、最近入れたアプリを1つずつ消していく方法を、Googleが案内しています。

セーフモードの入り方は機種によって違うので、「機種名 セーフモード」で、メーカーのサイトの手順を確かめてください。

 

お金を払った・カード番号を入れたとき

アプリを消しても、定期購入の契約は残ります。

iPhoneなら「設定」のいちばん上の自分の名前→「サブスクリプション」、Androidなら「Playストア」の右上の丸いアイコン→「お支払いと定期購入」→「定期購入」から、そのアプリの契約を解約しておきましょう。

カード番号やパスワードまで打ちこんでしまったなら、その日のうちにカード会社へ電話して、パスワードも変えておきましょう。

大人向けのサイトでボタンを押したとたん、「登録完了」「料金を払え」という画面が出てくることもありますが、払わず、業者にも連絡せずに、消費者ホットライン「188」に相談してください。

パソコンがおかしくなったときの対処法

パソコンの偽の警告は、画面いっぱいに広がって閉じるボタンが見えなくなり、大きな警告音や「Microsoft」「Windows」のロゴまで出てくるので、スマホよりも本物らしく見えます。

まず何より、どの画面に出ている電話番号にも、かけてはいけません。

Microsoftは、自社のエラーや警告のメッセージに電話番号は載せていないと案内しています。

警告の画面が閉じられないとき

警告の中の文字やボタンは押さず、キーボードの操作を中心に閉じていきます。

  • ①キーボードの左上の「Esc」キーを、2〜3秒押し続ける→全画面が解けたら、ブラウザの右上の「×」で閉じる
  • ②効かなければ、警告の画面の何も書いていないところを1回クリックして、もう一度「Esc」を押し続ける
  • ③それでもだめなら、「Ctrl」「Alt」「Delete」を同時に押し、出てきた画面の右下の電源マーク→「再起動」
  • ④再起動のあと、ブラウザが「ページを復元しますか」と聞いてきたら、「復元」は押さずに「×」で閉じる

Macなら、「option」「command」「esc」を同時に押して出てくる一覧からSafari(またはChrome)を選び、「強制終了」を押します。

IPAも「偽セキュリティ警告(サポート詐欺)画面の閉じ方体験サイト」を公開していて、この閉じ方を前もって練習しておけるようになっています(「IPA 偽警告 体験サイト」で検索すると出てきます)。

閉じられたら、念のためウイルスのスキャンを1回かけておくと安心です。

Windowsなら、スタートボタンから「Windows セキュリティ」を開き、「ウイルスと脅威の防止」→「クイック スキャン」を押すだけです。

 

電話してしまった・ソフトを入れてしまったとき

もし警告の番号に電話して、言われるままにソフトを入れてしまったなら、相手がいまもあなたのパソコンを遠くから操作できる状態かもしれません。

  • ①Wi-FiやLANケーブルを外して、インターネットから切り離す
  • ②入れさせられたソフトをアンインストールする
  • ③「Windows セキュリティ」→「ウイルスと脅威の防止」→「スキャンのオプション」→「フル スキャン」
  • ④ネットバンキングやメールのパスワードを、別のスマホなど安全な機械から変える

お金を払ってしまったときは、すぐにカード会社や銀行へ連絡を。

遠隔操作のソフトが入っていたあいだにネットバンキングを開いていたなら、なおさら急いでください。

どこから手をつければいいか分からないときは、IPAの「情報セキュリティ安心相談窓口」が電話で相談に乗ってくれます。

  • IPA 情報セキュリティ安心相談窓口:03-5978-7509(10時〜17時・土日祝日と年末年始は休み)
  • 消費者ホットライン:188(お金を払った・請求されたとき)

会社や学校の機械で開いてしまったとき

いちばん青ざめるのが、会社や学校のパソコン、あるいは会社から渡されたスマホで開いてしまった場合ではないでしょうか。

こうした機械やネットワークは、どのサイトにつないだかの記録が残る仕組みになっていることが多く、私物のスマホでも会社や学校のWi-Fiにつないでいたなら事情は変わりません。

怖いのは、気まずさから黙っているあいだに、警告の指示で入れたソフトから、会社や学校の情報まで抜かれてしまうことです。

会社や学校の機械では、上の手順で自分で履歴やアプリを消したりせず、ネットから切り離して、すぐに情報システムの担当者や先生へ伝えるのが、結局いちばん被害を小さくできます。

どんな動画を見ようとしたかより、「警告が出た」「何を押したか」「電話したか」を順番に話せば十分です。

流出動画で傷つくのは名前を使われた本人

この騒ぎでいちばん重いものを背負わされるのは、スマホを壊されかけた人でも、お金を取られた人でもなく、名前を使われた本人です。

そして広め方しだいでは、今度はこちらが罪に問われることもあります。

本物でも偽物でも本人は同意していない

出回っている動画が本人なのか、AIで作られたディープフェイクなのか、見る側には確かめようがありません。

ただ、どちらだったとしても、本人が「見てください」と出したものではないことだけは変わりません。

2026年10月の騒ぎでも、名前を使われた女優のInstagramでは、何年も前の古い投稿にまでコメントが押し寄せていました。

 

本物なら、本人の知らないところで流された私的な映像。

偽物なら、顔を勝手に使われて作られた性的な映像です。

しかも、名前ひとつで商売になる限り、売る側は次の名前を探してきます。

AIで作った偽物を見分ける手がかりについては、Deepfakeはホクロや声まで作れる?本物と偽物の見極め方を解説で詳しく書いています。

 

広めたら罪になることもある

見ようとしただけで、すぐに罪に問われるわけではありません。

ただ、保存した動画を人に送ったり、リンクを貼って広めたりすると、話は変わってきます。

  • リベンジポルノ防止法:本人の同意なく私的な性的画像を不特定多数に見せると、3年以下の拘禁刑か50万円以下の罰金
  • 性的姿態撮影等処罰法(2023年7月13日施行):盗撮などで撮られた性的な映像を人に渡したり、ネットに流したりすることも処罰の対象
  • 名誉毀損:偽物の動画でも、本人の評判を傷つける形でネットに載せれば罪に問われることがある

2020年10月には、芸能人の顔をすり替えた性的な偽の動画をネットに載せた男らが、名誉毀損と著作権法違反の疑いで、警視庁と千葉県警に逮捕されています。

載せていた動画はおよそ400本で、得ていたとされるお金は80万円以上。

2021年9月には東京地裁が、芸能人の顔をすり替えた動画をネットに載せた男性に、懲役2年・執行猶予3年・罰金100万円の判決を言い渡しました。

もう押してしまった人も、ここまでの手順で片づけられたなら、それで十分です。

次に名前つきの「流出」が流れてきても、その先にあるのは動画ではなく、押した人からお金や情報を取るための仕掛けなんですよね。