「43枚目シングル最後のチャンスだと思って頑張ります」

2026年10月21日の夕方、乃木坂46の5期生・冨里奈央が、公式ブログにこう書きました。

タイトルは「当たっていないスポットライト」。

43枚目シングル『君ロス』の選抜メンバーに入れず、前作に続いてアンダーメンバーとして活動すると決まってから、数日後に書かれたブログです。

アンダーとして過ごすこの43枚目の期間を、本人は「最後のチャンス」と書いたんです。

選抜に届かない悔しさも、高校生のころの休業が「ズル休み」と言われ続けてきた苦しさも、包み隠さず綴られていました。

読んだファンの中には「よく書いてくれた」と受け止めた人もいれば、「全方位とんでも悪手」「全員得しない」と書き込んだ人もいます。

ファンと1対1で話すミート&グリート(ミーグリ)はいつも完売するほど人気があるのに、なぜ選抜に入れないのか。

そして、このブログは本当に「悪手」だったのか。

応援してきた人ほど、この2つが引っかかっていますよね。

冨里奈央のプロフィール

乃木坂46の冨里奈央
引用元:乃木坂46公式サイト(https://www.nogizaka46.com/s/n46/artist/55393)
  • 名前=冨里奈央(とみさと なお)
  • 愛称=なおなお、なおちゃん
  • 生年月日=2006年9月18日(20歳)
  • 出身地=千葉県
  • 所属=乃木坂46・5期生

友人関係に悩んで学校に通えなくなっていたころ、父親に勧められてオーディションを受け、2022年に加入したと本人が語っています。

2023年12月の34枚目シングル『Monopoly』で初めて選抜に入り、37枚目ではアンダーの曲「それまでの猶予」で真ん中に立つセンターを務めました。

2025年10月から放送されたテレビ大阪のドラマ『ふたりエスケープ』では、3期生の岩本蓮加とW主演。

地上波のドラマは、これが初出演で初主演です。

ただ、選抜に入ったのはこれまで5回(34・36・38・39・41枚目)で、選抜とアンダーを行き来してきたんです。

前作の42枚目『是非に及ばず』に続き、今回の43枚目もアンダーです。

「当たっていないスポットライト」に書かれたこと

冨里奈央はブログで選抜発表の結果を伝え、いまの気持ちをこう書いています。

  • 「今シングルはアンダーメンバーとして活動させて頂きます。心が苦しいです」
  • 「自分の努力だけじゃどうにも出来ない壁みたいなものの前でずっと押さえつけられてる感覚があって、そこから抜け出せないことが辛いです」
  • 「ふわふわにこにこ何も考えてないように見せるのは大得意。だってその方が生きやすいから。でも、もうそんな生き方はしない」

選抜(シングルの表題曲を歌うメンバー)に入れなかったメンバーは「アンダー」と呼ばれ、メインの曲は歌わず、別の収録曲やアンダーだけのライブを中心に活動します。

 

冨里奈央はブログの中で、結果を残せたと思えたときでも立ち位置(選抜かアンダーか)が変わらなかったこと、周りのメンバーがグループの中心として活躍する姿を見ながら、ずっともどかしかったことを書いています。

そして、こう続けました。

「時間が経てば周りの方にとっては過去のことになっていくのかもしれません。でも、私の中ではこの傷が一つ一つ心に残り続けていて積み重なって忘れることは無いです」

ブログの終盤は、これまで応援してくれた人への感謝と、「期待しててね」の一言で締めくくられています。

誰も責めていないタイトル

「当たっていないスポットライト」というタイトルで、冨里奈央は誰がスポットライトを当ててくれないのかまでは言っていません。

本文にも運営やメンバーを責める言葉はなく、苦しさについては「壁みたいなもの」と、本人もうまく名前をつけられないまま書いています。

選抜の理由は公表されず、結果だけが発表される。

選ばれる側にいる冨里奈央にとっては、これ以上はっきり言いようがなかったのかもしれませんね。

 

それでもファンのあいだでは、「運営への訴え」と受け取った人もいれば、「不遇アピ」(不遇をアピールしている)と受け取った人もいます。

タイトルを見て、2017年にアンダーメンバーが歌った楽曲「アンダー」を思い出したファンもいました。

「アンダー」は18枚目シングル『逃げ水』(2017年8月発売)のカップリング曲で、ミュージックビデオは当時のアンダーメンバーの6年間を追ったドキュメンタリー映像でした。

選抜とアンダーに分かれる苦しさを、乃木坂46は9年前にはもう1曲の歌にしていたんです。

 

ブログには、「ふわふわにこにこ何も考えてないように見せるのは大得意」という一文もありました。

同期のから揚げ棒をねだる動画が「ジャイアン冨里」と面白がられるように、ファンは彼女の明るさを笑って見てきました。

その「ふわふわにこにこ」をもうやめると書いたあとに、ブログは「ちゃんと意志を届けたい。こんなにもグループの事を、人生を考えてるんだと知ってもらえるように」と続いていました。

アンダーになるたびに書いてきたブログ

このブログを「同情を集めるための作戦」と読んだ人もいます。

ただ、冨里奈央はアンダーになるたびに、ブログで気持ちを書いてきました。

  • 2025年10月23日(40枚目でアンダー)「気持ち。」=「時に『自分はアイドルに向いていないのかな』と思ってしまうこともあります」「自分で選んだこの道を中途半端に終わらせたくありません」
  • 2026年6月10日(42枚目でアンダー)「私もここにいるよ。」=「前向きなことを書くことが多いけど、本当はそんな綺麗な気持ちだけじゃなくて」
  • 2026年10月21日(43枚目でアンダー)「当たっていないスポットライト」=「でも、もうそんな生き方はしない」

40枚目のときは、アイドルを楽しいと思えたのはアンダーライブのおかげだと前を向きながら、「向いていないのかな」という迷いも書いていました。

42枚目でアンダーになったのは、選抜だった41枚目の期間に、苦手なバラエティで殻を破れたとブログに書いた直後でした。

そこで「前向きなことを書くことが多いけど、本当はそんな綺麗な気持ちだけじゃなくて」と打ち明けています。

そして今回、「ふわふわにこにこ」と見せる生き方は、もうしないと書きました。

 

「私もここにいるよ」と書いてから4か月後に、今度は「当たっていない」と書いたんです。

作戦かどうかは、本人にしか分かりません。

ただ、同じ悩みを1年前から少しずつ言葉にしてきたことは、本人のブログを順に読めば誰でも確かめられます。

干されてると言われる理由

「干されているのでは」と言われるいちばんの理由は、人気はあるのに、選抜には選ばれないことです。

ファンのまとめでは、前作の42枚目まで、冨里奈央のミーグリは用意された分が毎回のように完売していました。

 

ミーグリにはいくつかの売り方があり、参加券はCDを買うと付いてきます。

選抜発表から2日後の10月20日に乃木坂46の公式サイトで発表されたのは、forTUNE music(抽選でCDを買うサイト)で買った人だけが参加できる、43枚目のオンラインのミーグリでした。

冨里奈央はこの回に「スケジュールの都合により、全て不参加」とされています。

同じように全日程不参加だったのは、冨里奈央を含めて14人です。

遠藤さくら・賀喜遥香・井上和など顔ぶれの多くは選抜の常連で、ファンのあいだでは、人気メンバーがこの回に出ないのは「免除」だと受け止められています。

しかもこの14人には、今回選抜を外れた3期生の岩本蓮加と4期生の筒井あやめも入っていて、選抜に入った川﨑桜・中西アルノ・岡本姫奈のほうはこの回に参加します。

 

同期の5期生と比べると、差ははっきりしています。

今回の43枚目の選抜は18人で、11人いる5期生のうち9人が入りました。

外れたのは、冨里奈央と奥田いろはの2人だけです。

一方で、ドラマの主演のような個人の仕事は、ちゃんともらえています。

今回のミーグリでは選抜の常連と同じ「不参加」の扱いで、外の仕事もある。

冨里奈央が入れていないのは、選抜メンバーの枠だけなんです。

応援の手応えが選抜につながって見えない仕組み

ファンの投票で選抜を決めていたAKB48の「選抜総選挙」のような仕組みは、乃木坂46にはありません。

選抜メンバーはシングルが出るたびに運営が選び直していて、何をどれだけ重く見ているのかは公表されていません。

ファンがCDを買って応援すれば、ミーグリが「完売」するので、その結果は目に見えます。

でも、それが選抜にどれだけ効いているのかは、ファンにも分からないんです。

 

だから、売れているのに選ばれないと、理由が分からないぶん「運営に嫌われている」「何かやらかしたのでは」という憶測を書き込む人が出てきます。

反対に、ミーグリの売り上げはそもそも選抜の基準ではない、と考えるファンもいます。

休業は「ズル休み」だったのか

2025年2月8日、高校3年生だった冨里奈央は、「皆様へ」というタイトルのブログで1か月ほど活動を休むと発表しました。

そこには、こう書かれていました。

  • 「中学3年生から3年間、走り続けてきて来月で高校を卒業します」
  • 「スタッフの皆さんと相談して1ヶ月程お休みを頂くことにしました」
  • 「色んな未来を想像して、現状と重ね合わせて考えて、でもやっぱり乃木坂46が好きだし、私はアイドルの自分が好きだな〜と思いました」
  • 「与田さんの卒業コンサートに出演できないこと本当にごめんなさい」

3期生・与田祐希の卒業コンサートに出られないことを、本人は休む前の発表の時点で、もう謝っていたんです。

「色んな未来を想像して」と書いているので、乃木坂を続けない道まで考えたうえで、それでも戻ると決めたようにも読めます。

 

それでも、「先輩の卒業コンサートまで休んだのはズル休みだったのでは」という書き込みは今も続いていて、本人も今回のブログで「今でも見かけて」と書いています。

休業の発表から、もう1年8か月がたっています。

今回のブログで冨里奈央は、当時は言えなかった休業の理由を、学業のほかにも書きました。

  • 「1人の女の子として高校生だった私はどうしても自分が思うように活動できない状況に精神的に落ち込んでしまったことなどもあり、休業してしまうこともありました」
  • 「学業だけの理由ではなく、その当時とても落ち込んでいたことを言わなかったことが、ズル休みだとか裏目にずっと出てしまってる」

あわせて、休業中のことを「楽しい思い出を、時間を、取り戻そうと必死になってしまった部分があって、今振り返ると、後悔していることもあります」とも書いています。

ズル休みではなかったけれど、休んでいたあいだの過ごし方には悔いもある。

本人の答えは、どちらか一方に寄せたものではありませんでした。

 

「休業が響いてずっと干されている」という見方も、これまでの選抜の記録を見ると当てはまりません。

2025年3月に活動に戻ると、その月に発表された38枚目『ネーブルオレンジ』で選抜に入り、そのあと39枚目・41枚目でも選ばれているからです。

「何かやらかしたのでは」という噂については、本人が今回のブログで、ファンから「なおちゃんは何かしてしまったのか?」と聞かれたこともあったと書いたうえで、「何もしてない」と言い切っています。

この噂を裏づける報道や材料は、今のところどこにも出ていません。

「全員得しない」と言われる理由

このブログに厳しい声を向けている人が引っかかっているのは、選抜の結果が出てすぐに「最後のチャンス」と書いたことと、次の44枚目の選抜でどうなっても何か言われそうなことです。

選抜に入れば本人が、入れなければファンが傷つく。

そのうえ、アンダーにはアンダーの良さがあるのに、メンバー自身が「当たっていない」と書いてしまうと、アンダーで頑張っているほかの子まで日陰に見えてしまう、と感じた人もいました。

誰にとっても得にならない、というのが「全員得しない」の中身です。

 

運営がこの内容をそのまま公式サイトに載せたことに驚きつつ、本人の心を心配する声もあります。

その一方で、「今の現状、何やっても好き勝手に言われるなら言って良かった」という声もありました。

「最後のチャンス」は卒業の予告なのか

「最後のチャンス」という言葉を、卒業をにおわせたものと受け取ったファンは少なくありません。

ただ、ブログに卒業という言葉は一度も出てきません。

その代わりに、「乃木坂46で活動していて苦しい思いも立ち直れなくなりそうな時もあるけど、それをまた救ってくれるのも乃木坂46なんです」という一文が書かれています。

「後悔しないように生きます」という言葉も、40枚目のブログに「乃木坂46としての時間を後悔したくないです」と書いたころから、冨里奈央がずっと繰り返してきたものです。

 

43枚目の選抜はもう発表されているので、この「最後のチャンス」は、アンダーとして活動する43枚目の期間のことだと考えるのが自然です。

アンダーとしての43枚目の活動ぶりが、次の44枚目の選抜につながるかどうか。

何がどう「最後」なのかまでは、ブログには書かれていません。

アンダーになった悔しさをブログに書いたメンバーは、これまでにもいます。

同じ5期生の菅原咲月は、35枚目でアンダーになった2024年2月、「後悔したくないし、後悔させたくない」というタイトルのブログで、結果に納得してしまう自分が悔しいと書きました。

その菅原咲月は、いまグループの4代目キャプテン(グループのまとめ役)で、今回の43枚目でも選抜に入っています。

38枚目でアンダーになり、選抜発表の翌日のブログに「悔しい」と書いた岡本姫奈も、今回の43枚目で選抜に戻りました。

 

「ズル休み」も「何かやらかした」も、これまでは本人のいないところで言われてきた話でした。

そこへ自分の言葉で答えたこのブログは、悪手というより、乃木坂46を続けるために冨里奈央が必要とした一歩だったんだと思います。