林士平のインタビューがエグい…集英社が契約を切った本当の理由
2026年10月2日、『SPY×FAMILY』や『ダンダダン』を担当してきた編集者の林士平(りん・しへい)が、フランスのWebメディア「L’Internaute(ランテルノート)」の独占インタビューに答えました。
かなり長いインタビューのなかに、集英社のマンガアプリ「少年ジャンプ+(ジャンプラ)」で連載が続く4作品について、アニメ化やグッズの監修と制作は自分の会社が担うと話した一節があるんです。
林士平は集英社を辞めたあと、自分の会社・ミックスグリーンとして、ジャンプ+で連載する作品の編集を外から請け負ってきました。
その依頼を集英社は7月31日で打ち切り、9月30日にジャンプ+のお知らせで「終了させました」と公表したばかりです。
その9月30日、Xでまず疑われたのは人気作家の引き抜きでした。
これは、ジャンプ+で連載していた人気作家を、林士平氏が作るメディアに(たとえ作家本人が望んだとしても結果的に)引き抜いたことで、集英社の逆鱗に触れたんじゃないかと勝手に予想……。確か、ジャンプで連載をする作家は、他誌では描かないという独占契約を結んでた気がする。
— 岡安モフモフ(アーガイル社長)@ChatGPT/Gemini/ClaudeなどLLMでサービス作る人 (@shields_pikes) 2026年9月30日
作家本人の移籍こそ起きませんでしたが、10月2日に海外から出てきたのは、作品のアニメやグッズが林士平の会社の受け持ちになる、と読める生々しい話。
海外メディアでのその発言を読んで、「そりゃ集英社も怒るわ」とストンと腑に落ちた人は多いはずです。
林士平は実際に何を話したのか、集英社には本当にうま味が残らないのか、そして毎週追っている大好きな作品のアニメやグッズはこれからどうなるのか、気になるところですよね。
林士平がフランスで語ったこと
L’Internauteは、ここ数か月の数々の噂に林士平が包み隠さず答えたインタビューだと紹介していて、主な中身はこうです。
- ミックスグリーンの出発点は、『SPY×FAMILY』『ダンダダン』『チェンソーマン』などの担当を自分で続けたいという思い(『チェンソーマン』は2026年3月に第2部が完結)
- 自分たちの漫画アプリを作り、新しい作品と若い漫画家を育てる
- 集英社と張り合うという考え方はしていない
集英社を辞めたのは現場にいたいから
林士平は、出世コースともいえるジャンプ+の副編集長になってから、わずか1年あまりで集英社を辞めています。
ヒットという結果を出すたびに、本人が望んだわけではない昇進が続き、会社での立場が上がるほど、作家のすぐそばでネームや原稿を見る担当編集としての仕事ができなくなっていったと、本人はとてもシンプルに説明していました。
何より作家と一緒に物語やキャラクターの話をするのが好きで、その現場から離れたくなかったそうです。
現場にこだわる一方で、出版社の編集者としては珍しいくらい、自分の名前でXに発信してきた人でもあります。
出版社はヒット作品の編集者が引き抜かれたり、独立されたりするのが嫌なので、編集者が名前を売るのを嫌がる。会社命令でなるべく露出を控える
しかし今の時代、ある程度編集者の顔や実績が見えないと有望な漫画家をスカウトできない
この構造を利用して、林士平さんは他社が出来ない自己宣伝で有利 https://t.co/4lSXlGrdKY
— 18cmの巨人 (@fox478924) 2026年10月2日
名前で新人まで集まる編集者が、大きな会社の中では扱いの難しい存在にもなりうることは、この投稿のように、外から見ている人にも感じ取られていました。
話題になった4作品のアニメとグッズの話
大きな波紋を呼んだ問題の一節が出てきたのは、『SPY×FAMILY』の遠藤達哉や『ダンダダン』の龍幸伸といった看板作家が、新しいアプリの立ち上げに読み切りなどで加わるのか、と聞かれた場面です。
集英社との契約が切れたあとも、林士平は漫画家さん本人と直接契約を結んで4作品の編集を続けていて、フランス語で載った答えは、こんな中身でした。
- 私はいまもジャンプ+で『SPY×FAMILY』『ダンダダン』『WITCHRIV』『ケントゥリア』の4作品を担当していて、これらはジャンプ+で載り続ける
- 一方で、アニメ化や関連グッズといった作品の二次的な展開は、私たちの会社が監修と制作を担う
- 少し変わった仕組みです
連載している場所は集英社のジャンプ+なのに、アニメやグッズの面倒を見るのは林士平の会社。
なぜアニメやグッズまで受け持つのか、林士平は別の質問への答えのなかで、こう話しています。
- 一緒に生み出した作品は、一緒に育てていく。そのうえで、アニメ化や関連グッズなど、作品の世界から生まれるものも見守り、監修していく
- いまの良い編集者には、アニメの企画をきちんと作り、良いグッズを育て、できるかぎり作家と作品のそばに居続ける力も求められる
- 大きな会社の中では、担当してきた作品にこの形で付き添い続けるのは難しかった
林士平の考えでは、アニメやグッズを見守るところまでが、担当編集の仕事の続きなんです。
「少し変わった仕組み」とフランスで話した意味
林士平は、この取り決めを自分で「少し変わった仕組み」と呼んでいて、当たり前の形ではないことを、本人も分かったうえで話しています。
そしてこの言葉が最初に向けられたのは、日本の読者ではなく、フランスの読者でした。
同じインタビューで林士平は、出版社ではない世界的なパートナーと海外向けの話をまとめている途中だと明かし、ヨーロッパでは紙の本がまだ強いので、海外では紙でも出したいとも語っています。
海外で作品を売りたい会社にとって、アニメやグッズの相談先がどこなのかは真っ先に知りたいことなので、この一言は海外の取引先に向けた〈名刺〉の役目も果たした、と読むこともできるでしょう。
インタビューを載せたL’Internauteは、社名のミックスグリーンの〈緑〉を、植物を育てるのがうまい人を指す〈緑の手〉に重ねて紹介していて、「一緒に育てていく」という本人の言葉とも重なります。
林士平自身も、小さな会社ならではの速さに加えて、大きな会社に当たり前にある決まりを自分たちで考え直せるようになったと話していて、アニメやグッズの線の引き方も、その考え直しのひとつだったのかもしれません。
アニメとグッズの監修・制作の意味

では、アニメやグッズの「監修と制作を担う」とは、具体的にどういうことなのでしょうか。
「集英社はIP(作品やキャラクターをアニメやグッズに使う権利)を全部失ったの?」というのが、いちばん気になるところでしょう。
監修は原作らしさを守るチェック役
アニメやグッズの監修というのは、キャラクターの顔や色、セリフ、話の流れが原作から外れていないかを確かめる仕事のこと。
ファンが買うアクリルスタンドの絵柄ひとつ、アニメの脚本の1話ぶんのセリフにも、「このキャラはこんな表情をしない」といった細かな確認が入ります。
こうした確認作業は、ふつうは原作を出している出版社の担当編集が、漫画家さんと一緒に二人三脚で受け持つことが多い仕事です。
一方の制作は、アニメ化の企画やグッズの商品づくりを実際に動かしていく役目と考えると分かりやすいかもしれません。
つまり林士平の言葉どおりなら、アニメの脚本や『SPY×FAMILY』のアーニャのグッズの絵柄に「原作としてOKかどうか」を出す役を、これからはミックスグリーンが受け持つことになります。
しかも監修の役は、絵柄にOKを出すだけで終わる仕事でもありません。
アニメの制作会社もグッズのメーカーも、商品化のOKをもらうまで同じ相手と何度もやり取りを重ねるので、その人たちとの人脈は、自然と監修をする側に積み上がっていくと考えられます。
お店にたとえるなら、作品という商品はこれまでどおりジャンプ+という棚に並んでいるのに、アニメの制作会社やグッズのメーカーといった取引先との顔つなぎだけは、別の会社が受け持つようになるイメージ。
ただ、担当編集として作品のそばにいたのは、これまでも林士平でした。
変わるのは顔ぶれより、その仕事が〈集英社から頼まれた仕事〉なのか〈ミックスグリーン自身の仕事〉なのかという看板のほうで、看板が変われば、アニメやグッズの作り手が連絡する先も、集英社からミックスグリーンへ移っていくことになります。
権利やお金の行き先は語られていない
ただ、今回のインタビューで林士平がはっきり口にしたのは「監修と制作」までで、アニメやグッズを作る会社が払う使用料(作品を使わせてもらうお金)を誰が受け取るのかには触れていません。
そもそも法律の大前提として、漫画の著作権(作品そのものの権利)は、机に向かって描いた漫画家さん本人のもの。
それでも出版社がアニメ化やグッズの話を受ける窓口(条件を話し合い、使用料を受け取る役)になっているのは、最初の単行本を出すときの出版契約で、そう取り決めることが多いからです。
ここで知っておきたいのが、法律でいう出版社の権利(出版権)の中身。
著作権法の第80条が出版権として定めているのは、作品を原作のまま本として刷ることと、電子書籍などでネットに流すことの2つだけで、アニメにする権利やグッズにする権利は、そもそも出版権の中に入っていません。
つまり出版社が法律で持っているのは〈本を出す権利〉で、アニメやグッズの窓口は、契約で任されている役目という分け方。
Xでは「媒体からメディアミックスの権利を剥がせるのはどうやったらできるんだ」という驚きも出ていましたが、仕組みの上では、アニメやグッズの扱いはもともと作家が出版社に任せている約束で、権利そのものの持ち主は、いまも作家本人なんです。
ただ、4作品でその約束がどう書き換わったのかは公表されていないので、ここまではあくまで仕組みの上での話にとどまります。
窓口の仕組みとお金の大きさの話は、こちらの記事がくわしいです。
→ 林士平と集英社が切れた本当の理由…IPと権利の話をわかりやすく
今回の一節は、2通りに読めます。
- 話を受ける窓口も使用料も集英社のままで、チェックや制作の手を動かす役だけをミックスグリーンが引き受けている
- 漫画家さんが、アニメやグッズの話を受ける窓口そのものをミックスグリーンに任せた(この場合はお金の流れも変わる)
4作品の契約の中身はどちらの側からも公表されていないので、いまある材料だけではどちらとも決められません。
少なくとも、集英社が作品の権利を全部失ったと言える材料は、いまのところ見当たらないのが実情です。
9月30日の発表の直後には、こんな想像も出ていました。
・ジャンプ+と、林士平さんの会社は取引を終わらせる。
・林士平さんの会社と、今関わっている人気作の作家は直接契約をして、編集業務を継続する。
だと、大リーガーの代理人みたいなイメージなんだろうか?
原稿料や印税契約の利益最大化や、会社からの支援や休載の保証などを引き出す交渉役? https://t.co/1PR0v1sYFV— 外科医ちっち (@surgeontitti) 2026年9月30日
9月30日の林士平側のお知らせにあったのは「編集業務」の4文字だけでしたが、今回のインタビューで、編集の外にあるアニメやグッズまで林士平の会社が受け持つことが本人の口から出てきた形。
「そりゃ集英社も怒る」と言われる理由

このインタビューを読んで、まず「集英社にほとんどうま味がない」「既存のインフラにただ乗りでは」と複雑な思いを抱いた人は、少なくないはずです。
世界的なヒットになった『SPY×FAMILY』も『ダンダダン』も、多くの読者が最初に出会ったのは、集英社が運営するジャンプ+のアプリでした。
そのアプリを用意して、宣伝をして、全国の書店に単行本を並べてきたのは集英社。
しかも集英社は、2026年8月に明らかになった1年分の決算で、アニメやグッズなどの版権収入(作品を使わせて受け取るお金)を含む「事業収入」が、本や雑誌を売ったお金を、長い歴史の中で初めて上回りました。
そのいちばん伸びている部分の舵取り(監修や制作の取り仕切り)を、契約の切れた外の会社が握るようにも読める話を聞けば、集英社の経営側に立って「それは困るよね」と思うのも当然でしょう。
もちろん、集英社の手元に残っているものもあるんですよね。
このインタビューが載ったのと同じ2026年10月2日にも、『ケントゥリア』の最新10巻は集英社のジャンプコミックスから発売されていて、4作品の連載もそのままジャンプ+で続いていきます。
それでも「うま味がない」と感じてしまうのは、手元に残ったのが、どちらかといえば〈本を作って売る〉仕事に見えるからでしょう。
新メディアの準備からインタビューまでの流れ
新しいメディアの準備からインタビューまでは、こんな順番で進んでいます。
- 2026年4月17日 ミックスグリーンが新しい漫画メディアの準備を発表
- 2026年7月7日 林士平がXで、作品の権利を扱う担当と編集者の求人を出す
- 2026年7月31日 ミックスグリーンとの業務委託が終わる(集英社側の判断)
- 2026年9月30日 ジャンプ+が委託の終了を公表、林士平側が4作品を漫画家さんとの直接契約で続けると発表
- 2026年10月2日 フランスのインタビューで、4作品のアニメやグッズの監修と制作をミックスグリーンが担うと発言
集英社の判断にうなずく声は、9月30日の時点から出ていました。
某編集の件。
まぁ、遠藤先生ついて行きそうだなと思ってたので、そこをジャンプラ側がちゃんと止めたのは偉いな、って思いました。
あとは、まぁ…多分調子乗ってしまったのかなと。ヒットをいくつも出してたら勘違いはしたくもなるとは思いますが、あくまで作家のポテンシャルを引き出すのが、— 紫鈴 (@shirinraka) 2026年9月30日
お知らせの文面そのものが気になる人は、こちらも。
→ 林士平とジャンプ+の契約終了|「終了させました」は怒っている?
Xで語られる3つの見方を材料に当てる
Xで飛び交っている見方は、だいたい次の3つです。
- 作家を引き抜こうとして、集英社の逆鱗に触れたという見方
- アニメやグッズの話を、集英社は知らされていなかったのではという見方
- 集英社が育てた場所に、ただ乗りしているという見方
1つ目は、いま出ている材料とは合いません。
作家の移籍は起きておらず、4作品はジャンプ+に残ったまま。
2つ目は、知っていたとも知らなかったとも言える材料が、まだ出ていない状態。
「これを許していたとは思えないから、知らなかったのでは」という声もXにありましたが、委託が終わったのは7月31日、インタビューは10月2日で、アニメやグッズの扱いが委託の終わる前から話し合われていたのか、あとから決まったのかは、集英社からも林士平からも語られていません。
ただ、委託が終わる24日前の7月7日には、林士平が作品の権利を扱う担当の求人を出していて、権利の仕事をする人を自分たちで集め始めていたのは確かです。
それが新しいアプリのための準備なのか、4作品のアニメやグッズまで見すえたものなのかは、求人の文面からは分かりません。
3つ目には、半分だけ材料があります。
連載の場所と単行本は集英社のまま、アニメやグッズの監修と制作はミックスグリーンへ、という線の引き方は本人の言葉から読み取れますが、使用料を誰が受け取るのかが分からないので、集英社のお金のうま味が本当に消えたのかは、まだ判断できないのが実際のところでしょう。
この形を選んだのは漫画家さん
4作品で林士平と組み続ける契約を結んだのは、作品の生みの親である漫画家さん本人です。
連載先はジャンプ+のままで、原稿を一緒に作る編集の相棒として林士平の会社と組む、という契約。
インタビューでも林士平は、多くの漫画家から強く支えてもらっているからこそ、重い責任を感じていると話しています。
ミックスグリーンの漫画アプリの中身

インタビューの後半では、ミックスグリーンが準備している漫画アプリのことも、かなり具体的に語られていました。
- まず日本の読者向けに、日本語で始める(開始日は未定)
- 最初の数話と最新話は無料、読み返しはレンタル、単行本はアプリの中で買える
- 開始時は約10作品、1年目の終わりに約20作品、読み切りは年40〜50本
- 新しいアプリに載せる作品を選ぶ漫画賞の第1回は、『SPY×FAMILY』の遠藤達哉が審査委員長
漫画賞は第2回の受付も始まっていて、こちらは『地獄楽』の賀来ゆうじと『ダンダダン』の龍幸伸が特別審査員です。
新しく準備している漫画メディアの漫画賞、第二回の受付開始です!
今回の特別審査員は
『地獄楽』賀来ゆうじ先生
『ダンダダン』龍幸伸先生。日本を代表する、今まさに世界を熱狂させるお二人に、審査をご担当していただきます。
第一線を走る描き手だからこその、熱く、そして確かに刺さる言葉。… https://t.co/Dm8OgFHL42— 林士平(りんしへい) (@SHIHEILIN) 2026年9月2日
ジャンプ+で連載中の看板作家が、ミックスグリーンの新人選びには、審査員として加わっているんですよね。
紙の雑誌の週刊少年ジャンプでは、漫画賞の公式アカウントが2024年9月14日に、契約している作家は契約の関係で、編集部の関わらない企画で講師になることはない、と答えています。
ジャンプ+の作家に同じ決まりがあるかは公表されていませんが、遠藤達哉と龍幸伸が、集英社の外の会社の新人選びに名前を出しているのは事実です。
集英社から見れば、自分たちの看板作家の名前を目印に、別のアプリへ新人が集まってくる形で、引き抜きの噂がここまで広がった理由のひとつは、この光景にあったのかもしれません。
打ち切りは数字で決めるという考え
新しいアプリで連載をどう終わらせるか、つまり「打ち切り」についても、林士平ははっきりした考えを話しています。
週刊少年ジャンプは、連載3話で手応えを見て、早ければ10話で終わることもある仕組みで、林士平はこれを、残酷に見えても作家が次の作品に挑めるよい仕組みだと言い切っていました。
林士平の見立てでは、プロの漫画家が体を壊さずに描き続けられるのは、おそらく30年ほど。
その限られた時間のうち2年も3年も、読まれない作品にずるずると縛りつけるのは、作家にとっても読者にとっても不幸だ、というシビアな考えです。
そのうえで自分たちがゼロから立ち上げるアプリでは、読まれたページ数、最後まで読んだ人の数、それに「いいね」の3つを見て判断し、編集長の「面白くない」の一言だけでは決めないつもりだそう。
龍幸伸のボツ時代の話
作品の出し方を決める話では、いまや大ヒット作となった『ダンダダン』の龍幸伸が、連載前に、集英社の月刊誌ジャンプSQ.で何度もボツを経験した下積み時代についても、質問が出ています。
その問いに林士平は、出版社の看板が大きいかどうかより、その編集部で判断する人の顔ぶれで世に出せる作品がガラリと変わる、と答えました。
当時のジャンプSQ.の編集チームの方針と、林士平自身の見方とのあいだには、ずれがあったとはっきり話しています。
そして、独立して自分の会社を持ったいまは、自分が「嫌だ」と感じた決め方はしたくないとも。
集英社と張り合うつもりはないと言いながらも、自分が納得できなかった決め方は繰り返さない、というところにだけは、はっきり線を引いているわけです。
4作品の連載とアニメはどうなる
ファンにとっていちばん気になるのは、好きな作品がこのまま読めて、アニメも見られるのかどうかですよね。
連載の行方については、ジャンプ+が9月30日のお知らせで「新たな体制」のもとで連載を続けると書き、林士平も4作品はこれまで通りジャンプ+で続けると話しています。
それでもファンとして気になるのは、いつか人気作ごと新しいアプリへ移ってしまうのではないかという不安と、アニメやグッズのこれからのことでしょう。
新しいアプリへの移籍の予定はいまのところなし
4作品の漫画家さんがミックスグリーンのアプリで何か新作を描くのか、という質問も出ていました。
描いてみたい気持ちはあっても、いま連載している作品が何より優先で、現時点で決まっている予定はない、というのが林士平の答えです。
アニメのチェックをする顔ぶれ
アニメのスタッフロールについては、こんな声もありました。
林士平って担当した作品のアニメ化で「原作担当編集」という項目でジャンプ編集部とは別枠でスタッフロールに自分の名前入れ込もうとしてるの前々から気になってた
ブランディングちからすごいよね— ぴんてゃ (@ibukuroUNIVERSE) 2026年10月1日
スタッフロールに名前が載ってきた林士平のそばでは、次の顔ぶれも育っています。
インタビューによると、遠藤達哉たち多忙な作家のそばにはすでに林士平のチームの補佐の編集者が付いていて、いずれ自分の仕事を全部任せられるよう、2年以上かけて育ててきたそうです。
ただ、看板の4作品をこれからどんな顔ぶれで支えるのか、ジャンプ+の言う「新たな体制」の具体的な中身は、まだどちらからも出ていません。
ファンがいちばん心配している、決まっているアニメの予定が変わるという話も、インタビューと両方のお知らせのどこにも出てきていないんです。
集英社が契約を切った本当の理由を読む
集英社が委託を打ち切った本当の理由は、作品の外側を誰が仕切るのかが、林士平の側へ少しずつ移っていく流れを、委託という形のままでは止められなかったからだと考えるのが、いちばん筋が通ります。
そう読める材料は、次の3つです。
- 出版権にはアニメやグッズの権利が入っておらず、集英社が自分の手で動かせるのは、本を出す契約と、林士平の会社に編集を頼む委託契約くらいしかない
- ミックスグリーンは4月に新しいメディアの準備を発表し、7月7日には作品の権利を扱う担当の求人を出していて、委託の打ち切りはその24日後だった
- 打ち切りから2か月後の10月2日、ジャンプ+に残る4作品のアニメやグッズの監修と制作まで、ミックスグリーンが担うと本人が話し、その流れがあとから形になって見えた
これまでは、アニメやグッズの話も本を出す出版社に任されるのが当たり前だったぶん、作家に〈任せる先を選ばれる側〉へ回る重さは小さくありません。
集英社から見れば、委託を続けるほど、自分たちがお金を払って頼んでいる編集者の会社が、作品の外側の相談先として育っていく形。
手元に残っていた〈仕事を頼む側〉という立場を使い、委託を打ち切るという形で関係を区切ったのが7月31日で、9月30日の「終了させました」はその区切りを外に向けて示した言葉だった、と読めば、あの冷たい言い回しにも説明がつきます。
一方で、発表のきつい口調は新人に向けた案内だった、という見方もXに出ていました。
まず今回の集英社の表明の目的は
「ジャンプ+に載せたい!連載したい」という新人が、林さんのところに(今だジャンプ+専任編集者だと思い込んで)持ち込む事例が多発してる
↓…— 甲斐谷忍@カモネギ15巻&ライアーゲーム20巻10月同時発売! (@mangakap) 2026年10月2日
漫画家の甲斐谷忍は、林士平をいまもジャンプ+の編集者だと思って原稿を持ち込む新人が多く、「ジャンプ+に載せたい人はうちに来て」と伝えるための表明が、強い口調に見えただけだ、という読み。
この見方は9月30日の書き方の説明にはなりますが、7月31日に委託そのものを打ち切った理由までは説明しません。
新人の窓口をはっきりさせるだけなら、お知らせの書き方で足りた可能性もあり、委託を終わらせるところまで踏み込んだのは、4月と7月の動きで、新人の窓口より大きな、作品の外側の主導権が林士平の側へ動く流れが見えていたからだと考えるほうが、材料とよく合います。
もちろん、集英社は理由を一言も語っておらず、7月31日の時点でアニメやグッズの話をどこまで知っていたのかも分かっていないので、ここから先は材料から導いた見立てです。
この先を見分ける3つの手がかり
今回の形がこの先どう転ぶのか、見極める手がかりになりそうなのは次の3つ。
- ジャンプ+が「新たな体制」の中身を明らかにするとき
- ミックスグリーンのアプリが始まり、どんな作品と作家が並ぶか
- 4作品の次のアニメやグッズで、監修として誰の名前が出てくるか
3つ目は、アニメのスタッフロールを見れば、ファンも自分の目で確かめられます。
そしてこの形は、ジャンプ+で連載中のほかの漫画家さんや、これから原稿を持ち込む新人たちにも関わってくる話。
Xには、この先は出版社の手元に〈本を出す権利〉だけが残り、アニメやグッズは作家が選んだ相手が受け持つ形が広がるのでは、という見方があります。
アニメやグッズから入るお金が本の印税を上回る作品が増えていくなら、漫画家さんにとって〈アニメやグッズを誰に任せるか〉は、どこで連載するかと同じくらい、人生を左右する大きな選択になっていくはずです。
そうなれば、「アニメやグッズの扱いは任せるから、うちで描かないか」と好条件で作家を口説く出版社も出てくるかもしれない、という声もXにありました。
ただ、それができるかどうかは、作家が最初に出版社と結ぶ一人ひとりの出版契約の中身しだいです。
連載の場所は残っても、作品の外側を仕切る役が林士平の側へ動き、それを作家が選べると見えてしまった以上、集英社にとっていちばん重かったのは、目の前のお金より、その〈選ばれる側〉に回ったことなのかもしれませんね。











