2026年9月14日、中古大手の駿河屋がメルカリに同人誌を山ほど出品していることに、同人作家たちが気付きました。

駿河屋がメルカリを同人誌で埋め尽くしている。

そんな告発ポストから火がつきます。

「まさか」と自分の作品名で検索したら、見覚えのある表紙が並んでいた。

「うちの本も勝手に出されている」という悲鳴が、その日のうちに相次ぎました。

個人の不要品とは違って、ファンが描いた二次創作の同人誌はメルカリで出品禁止のはずです。

「みんなで規約違反を通報しよう」と呼びかけるポストが、一気に拡散していきました。

 

ただ通報の動きと並んで、「そんなの無駄だ」という冷ややかな声も流れてきます。

同人誌の最後のページには奥付(おくづけ)といって、「フリマ出品はやめてね」といったお願いが書かれています。

「フリマ出品はお控えください」といくら書いても、法律上は買い手を縛る効力がないのです。

「勝手に売られた側」が、逆に「お前の注意書きは無意味」と突き放されたわけです。


駿河屋のメルカリ出品は今週始まったわけではない

関連する投稿は、半日で442件。

「大手の出品だから安心」と好意的に受け止める声は、わずか2%だけでした。

ネットで話題になるよりずっと前から、店側の自動出品は水面下で動いていました。

作家が問い合わせて調べたところ、「実はこの夏から出品されていた」らしいと分かりました。

 

個人の小さな出品と違って、駿河屋という大手チェーンの在庫だったからこそ炎上したのでしょう。

2025年12月の時点で国内外に152店舗、店に並ぶ在庫が数千万点、扱ったことのある商品の台帳が約3,000万件という規模です。

「ある日突然、フリマが同人誌だらけになった」と錯覚するほどの物量でした。

メルカリは二次創作の同人誌を出品禁止にしている

フリマアプリの出品禁止ガイドには、「知的財産権を侵害するもの」がしっかり明記されています。

さらに禁止リストの下段には、「18禁、アダルト関連」の文字も。

成人向け作品も多いため、「著作権」だけでなく「18禁の規約」にも引っかかります。

そして2020年9月1日のガイドライン改定で、この線がもう一段はっきりしました。

『勝手に作品やキャラの名前を使って出品すること』が、規約でアウトになったんです。

作者の一次創作ならOKですが、版権キャラを無断で使った本はアウトになります。

 

では、ファンが愛を込めて作った二次創作の同人誌はどう扱われるのでしょうか。

公式の許諾を得ていないファン活動だからこそ、即売会や専門店でひっそり手渡しされてきたものです。

ですから規約の文面どおりに読めば、二次創作の同人誌は最初から出してはいけない側にあります

「フリマで売っちゃダメな規約でしょ?」というファンの疑問は、文面通りならごもっともです。

じつは改定より前から、同人誌は形式のうえでは禁止されていました。

それでも実際には大量に並んでいて、誰かが通報しないかぎりそのまま残る。

今回それが企業の棚で起きている、というのが作家たちの見ている景色です。


駿河屋だけルールが違うという説は本当か

「個人はダメで企業なら許されるの?」と、疑問に思うのは当然ですよね。

2025年12月17日、メルカリと駿河屋の2社が、オタク向けグッズの分野で本格的に手を組みました。

ネット通販の全在庫をフリマに流し込み、海外向けにも販路を広げるという大型提携でした。

公式発表では、『長年の鑑定技術でニセモノを排除する』と胸を張っていました。

 

提携によって、駿河屋の倉庫にある同人誌が「メルカリShops」という公式ショップへ自動連携されています。

不用品を売り買いする個人売買とは違って、企業が直接出品するショップ扱いになります。

そこから「大手ショップは特別枠だからルール無用なんだ」という解説が、ネット上で一気に広まりました。

「企業ショップなら規約の対象外なのか」と、妙に納得しそうになりませんか。

 

ところが、メルカリShopsガイドの「禁止行為一覧」。

企業向けルールの中にも、「知的財産権を侵害すること」は禁止だと明記されているのです。

商標権・著作権・意匠権が具体例に挙がっていて、「無断でブランド名を使った商品」もきっちり名指し。

さらに「禁止商品一覧」の法令違反の項にも「第三者の権利を侵害するものまたはそのおそれがあるもの」とあり、参考としてメルカリ本体の知的財産権のページが貼られています。

個人出品者と同じように、大手の出店企業にも著作権のルールは課されていたわけです。

「ルールに穴があった」のではなく、「規則を無視して放置されている」という構図になります。

 

そもそも駿河屋が同人誌を買い取って売ること自体は、古物商の許可があれば問題のない商売です。

店頭でも駿河屋.jpでも、中古の同人誌はずっと前から並んでいました。

今回ひっかかっているのは、売る場所をメルカリにしたところだけ。

同じ本が自社サイトに並んでいるぶんには、誰も通報を呼びかけていない。

駿河屋の側から見れば、いつもの商売の売り場が1つ増えただけなのかもしれません。

提携そのものは2025年のうちに発表されて、ニュースにもなっていました。

ただ、その棚に同人誌まで並ぶとは、誰も思っていなかった。

作家がそれに気づいたのは、発表から9か月近くたってからでした。

怒りの向く先が、少し変わってきそうです。

通報しても消えないのはメルカリが動かないからだと言われてきた

「規約違反を通報したのに、一向に取り下げられない」。

メルカリのユーザーがそう言い続けてきたのは、今に始まったことではありません。

通報しても対応されない理由は「メルカリはなぜ無法地帯と言われる?古物営業法から見た3つの穴」に詳しく書きました。

今回も、自分の本が並んでいるのを見つけた作家が両社に「これは私の本です」と抗議したものの、返事すらもらえなかったと訴えています。

作者がどれだけ切実に抗議しても、出品の機械的な処理は止まりませんでした。

「1人の抗議がスルーされるなら大勢で押すしかない」と、作家たちが一致団結しました。

苦肉の策。

 

通報のボタンは商品ページの右上にある

通報を呼びかけるポストには、押す場所と選ぶ項目まで書いてありました。

商品右上のメニューから通報画面を開き、「権利侵害品」をポチッと選ぶ手順です。

ここを間違えると単なるマナー違反扱いになり、運営の専門窓口に届きません。

当事者でなくても報告できるため、「少しでも力になりたい」と協力の輪が広がっていました。

 

同じ本かどうかは管理番号でわかる

メルカリShopsの商品説明には、14桁の「管理番号」が入っています。

その頭9桁を suruga-ya.jp の商品ページのURLへ貼ると、駿河屋の自社サイトにあるまったく同じ商品のページが開く

逆に自社サイト側の番号へ「10001」を足してメルカリで検索すれば、Shopsの出品にたどり着きます。

この照合のやり方が共有されはじめたのは、2026年9月15日の朝でした。

2つの棚が番号でひとつながりになっているので、自分の本がどちらに並んでいるかもすぐに確かめられます。


奥付の『出品禁止』に法的拘束力はない

では、なぜあの一行は効かないのか。

一度お金を払って手に入れた私物は、法的には「どう捨てようが売ろうが自由」だからです。

この指摘も、通報の呼びかけと一緒に広がっていきました。

作家にいちばんこたえたのは、「書いても何の意味もないよ」と法律の話で冷たく切り捨てられた点でしょう。

 

言っていること自体は、たしかにそのとおりです。

法律の専門家によれば、レジを通す前に転売不可を知る機会があったかどうかが重要な争点になります。

ところが奥付というのは、買って、持ち帰って、最後まで読んだあとに開くページです。

イベント会場の喧騒の中で、巻末の細かい注意書きまで読んでから買う人はまずいないはずです。

 

そのうえ、公式から許可を得ていないグレーゾーンゆえに、作家側が強く出られない弱みもあります。

「これは私の著作物だ」と表立って主張しにくいのは確かです。

「勝手に商品として売り捌かれるショック」に耐えかねて、通報ボタンにすがるしかなかったのです。

奥付の一行が向いている相手は駿河屋ではない

そもそも奥付にあの一行を書いているのは、どんな人たちなのか。

商業の本と違って、同人誌は「手渡しできる分だけ」と作った人が自分で部数を決めて、印刷所に発注しています。

売れ残れば、そのまま自分の部屋に積まれる。

一般の商業出版とは違って、同人誌は一度売り切れたら二度と手に入らないことがほとんど。

 

無機質な契約書ではなく、「作品を愛してくれるファンへの手紙」のようなものだったのです。

その手紙も、大手の買い取り業者が機械的に流通させてしまえば何の防壁にもなりません。

実際、今回の騒ぎで自分の言葉を取り消した作家もいます。

「いらなくなったら中古店に売ってね」と、読者思いの案内をしていた作家さんです。

ネットオークションの転売とは違って、老舗の中古店を信頼して送り出していたわけです。

その中古店がメルカリへ横流しするとは、思ってもみなかったのでしょう。

最後は「がっかりだよ」と絞り出すような結びになっています。

 

「いらなくなったら捨ててください」と、苦渋の告知を出した作家もいます。

捨てるなんてもったいない、と言われるのは分かっていたのでしょう。

その投稿には「どうして?ではなく、同人誌とはそういうものです」という一文が添えてあります。

見知らぬ誰かに横流しするのではなく、「イベントで直接手渡す文化」でした。

「法的に無駄だ」と重々承知の上で、それでも感情を込めて書いているはずです。

 

では、その言葉を踏み越えた側は何と言っているのか。

メルカリと駿河屋は、2026年9月15日の時点でどちらも公式の説明を出していません

提携のリリースには、鑑定技術の話と並んで「安心・安全な取引環境の構築」という言葉も入っていました。

それが、いま虚しく響きます。

その安心が誰にとっての安心だったのか、そろそろどちらかが答える番だと思います。

奥付のあの一行が守っていたのは本の値段ではなく、ここまでにしておこうという作り手と読み手のあいだの手加減で、法律の話にしてしまうと、いちばん大事なところが指のあいだから落ちてしまう気がします。