2026年10月21日の未明、「お名前.com」が不正アクセスのお詫びを出しました。

対象は「お名前.com デスクトップクラウド」という、ドメインとは別のFXのためのサービスです。

その日から、このサービスを使っていた人たちの口座で、FXのお金が数百万円単位で勝手に消えたという声が相次ぎました。

ブログやお店のホームページのためにお名前.comでドメインやレンタルサーバーを借りている人なら、「私のアカウントは大丈夫なの?」と心配になりますよね。

お名前.comを運営するGMOインターネットのお知らせで、被害の対象として名前が挙がっているサービスは、ひとつだけです。

ただ、そのサービスについてGMOが最初に出した「悪用は確認されていない」という言い方は、翌日の続報で変わり、24日にはもう一段変わっています。

27日には、デスクトップクラウドの利用者の個人情報だとするものの一部を、攻撃者とみられる側がネットに載せたとも報じられました。


ドメインの会社がなぜFXで

お名前.comといえば、まずドメインですよね。

今回のニュースにも、ドメインの会社の名前を見て、すぐに「関係ない」と受け流した人がいました。

それでも、その名前のついたサービスで、なぜFXのお金が消えるのか。

そこには、ドメインとはまったく別の使い道のサービスが、同じ看板の下に並んでいたという事情があります。

 

16年前からあるFX専用の貸しパソコン

「お名前.com デスクトップクラウド」は、FXの取引ソフトを動かし続けるために、ネットの向こうにあるパソコンを借りるサービスです。

始まったのは2010年で、公式サイトでは「FX自動売買専用VPS」(VPSは、この借りるパソコンのこと)とうたわれています。

自宅のパソコンを一晩じゅうつけっぱなしにしなくても、寝ているあいだに決めたルールどおりの売り買いを続けてくれる、というわけです。

そのために、借りたパソコンの中の取引ソフトには、FX口座のIDとパスワードを保存して、ログインしたまま動かしておきます。

今回破られたのは、その「口座のIDとパスワードが入ったまま動いているパソコン」です。

GMOが不正なプログラムを見つけたのは10月20日で、影響の可能性があるサーバーは2万6,739件とされています。

 

GMOは21日の午前4時から全プランのサーバーを止めましたが、IDとパスワードが抜き取られていれば、口座には別のパソコンからでも入れてしまうんです。

FXの口座で勝手に売り買いされた人のお金は戻るのか。

規約の条文と、補償される場合の条件はこちらにあります。

お名前.comの被害は自己責任と言われる理由|補償される条件を解説
お名前.comの被害は自己責任と言われる理由|補償される条件を解説「お名前.com デスクトップクラウド」は、FXの自動売買ソフト(MT4・MT5)を24時間動かすために、GMOインターネットから借りる...


私のドメインは無事なのか

「お名前.comのサーバーが破られた」と聞けば、同じお名前.comでサーバーやドメインを借りている人まで落ち着かなくなるのは当然です。

うちのサイトはお名前.comを使っていないので大丈夫です、と利用者へ知らせる運営者まで出ています。

では、ドメインだけの人はどうなのか。

 

名指しされたのはFX用だけ

GMOはこの件のお知らせに「第1報」「第2報」と番号をつけて出していて、10月27日の昼に出た第9報まで、対象として名前が挙がっているのは「お名前.com デスクトップクラウド」だけです。

22日の第2報によると、カード情報を含む決済情報は、このFX用サービスのサーバーの中には置いていなかったとのこと。

ドメインの管理画面(お名前.com Navi)やレンタルサーバーの名前は、どのお知らせにも出てきません。

ドメインやレンタルサーバーだけの人は、被害の対象として名指しされてはいない、ということです。

 

「無事」とも書かれていない

ただ、9回のお知らせのどれにも、「ほかのサービスには影響がない」とは一行も書かれていません。

名指しされていないことと、調べて無事だと確かめられたことは、別の話なんですよね。

どこから入られたのかはまだ調査中で、GMOはセキュリティの専門会社と一緒に、侵入の経路と影響の範囲を調べているとしています。

ドメインだけの人が「大丈夫かどうか」を判断する材料は、いまのところGMOのお知らせの言葉しかありません。

 

申し込みの緊急メンテナンス

もうひとつ、ドメインの人にも関わりそうなお知らせが、10月24日の13時40分からお名前.comに出ています。

「お名前.com全サービスにおけるお申込み関連のお手続き全般」の緊急メンテナンスで、27日に見た時点でも、終わる時刻は「未定」のままです。

そのあいだは手続きがときどき途切れることがあり、手続きが終わらなかったらメンテナンスのあとでやり直してほしい、とのこと。

理由は書かれておらず、今回の件と関係があるとも書かれていません。

ドメインの更新がこの「お申込み関連」に入るのかは書かれていないので、更新の期限が近い人は、手続きが最後まで終わったかを、届いたメールや管理画面で確かめておくと安心です。


37時間で変わった一文

21日の未明に出た最初のお知らせには、こう書かれていました。

「現時点において、お預かりしているお客様の個人情報の漏えいや、閲覧された情報が悪用された事実は確認されておりません。」

 

その日のうちに始まった売り買い

ところが報道と被害者の投稿によると、その日のうちに、口座では身に覚えのない売り買いが始まっていました。

  • 21日 午前4時 最初のお知らせ「悪用された事実は確認されておりません」/サーバーを順に停止
  • 21日 午後4時22分ごろ 神奈川の男性の口座で、2秒ほどで400万円超の損(朝日新聞)
  • 21日 午後6時 犯人を名乗るメールが、被害者の1人に届く(本人の投稿)
  • 22日 午前5時前 愛知の女性の口座で、意図しない取引が始まる(朝日新聞)
  • 22日 午後4時59分 続報「第三者に取得され、不正に利用された可能性」

年表の午後6時の一通は、自分が最初の受信者だったという被害者の投稿によるもので、本人はこう書いています。

そして翌日の夕方の続報には、「サーバー内に保存されていたお取引口座のログイン情報等が第三者に取得され、不正に利用された可能性があることが分かりました」と書かれていました。

J-CASTニュースは、「『悪用確認されず』から一転」という見出しでこの続報を伝えています。

「確認されておりません」から「不正に利用された可能性」まで、およそ37時間でした。

そして24日の第4報では、さらに一歩進んで「お客様の情報が外部に持ち出された事実を確認しております」と書いています。

第3報によると、影響の可能性があるのは、サーバーの中に保存されていた情報(FX口座のログイン情報など)とのこと。

 

トップの言葉が変わるまで

10月23日の午後2時半の時点でも、デスクトップクラウドの公式サイトのトップには、まだこの一文が残っていたんです。

「現時点で個人情報の漏えいや悪用は確認されておりません。」

同じページのお知らせ欄には、前日の続報がきちんと並んでいるのに、です。

新規の受付を止めたと知らせるすぐ下には「今すぐ申し込む」のボタンも残っていて、ひとつのページの中で言っていることがちぐはぐになっています。

 

27日の午後に開き直すと、トップの一文は入れ替わっていました。

「本サービスのシステムにセキュリティ上の問題が存在し、本サービスの環境に対する不正アクセスと、お客様の情報が外部に持ち出された事実を確認しております。」

24日の第4報と同じ言葉で、23日に見た「確認されておりません」は、27日には「確認しております」に変わっていました。

その下には、利用者に手元のパソコンの電源を落としてほしいというお願いと並んで、「今すぐ申し込む」のボタンがまだ残っています。


受信箱に届く「お名前.com」

ドメインだけ使っている人にとって、今回の件がいちばん身近に関わってくるのは、毎日開くメールの受信箱です。

お名前.comでドメインを取ったことがある人なら、更新のお知らせやキャンペーンのメールを見慣れていると思います。

見慣れた差出人の名前ほど、偽物がまぎれ込んでも気づきにくいものです。

 

偽の「お名前.com」は前にも

お名前.comを名乗る偽のメールには、前例があります。

2024年10月には、GMOが「お名前.com」を装ったフィッシングメール(本物そっくりの画面へ誘ってパスワードを入力させるメール)に注意を呼びかけていて、そのときの件名はパスワードの有効期限を知らせる形だったそうです。

今回の続報も、この件に便乗したフィッシングメールや不審な連絡に気をつけてほしいと書き、「パスワードやクレジットカード情報をメールや電話でお伺いすることはありません」と念を押しています。

FXの利用者のあいだでも、便乗したメールへの注意が早くから回っていました。

27日の正午すぎには、攻撃者とみられる側が、デスクトップクラウドの利用者の個人情報だとするものの一部をネットに載せたと報じられました(共同通信・NHK)。

そのページに何が並び、これから毎日正午に1人ずつ増えると予告されている件は、こちらで読めます。

顔の描かれていない人物の写真と、ぼかされた情報の欄が並ぶプロフィール画面のイラスト
GMOが身代金1.5億を払わなかったのは正しい?被害者が増え続ける恐怖2026年10月27日の正午、GMOのサービスを攻撃したとみられる側が、「被害者 第1号」という見出しのページをネットに出しました。 G...

そのページの情報は本物なのか、確かめに行く前に読んでほしいことはこちらに。

夜のテーブルに置かれたスマートフォンと虫眼鏡のイラスト。画面のプロフィールは人型のシルエットになっている
GMO被害者第1号は本物だった?熊谷社長の投稿にモヤモヤが止まらない2026年10月27日の正午、GMOのサービスを攻撃した側が「被害者 第1号」と題して、利用者1人分の個人情報だとするページをネットに出...

GMOは第6報から、「被害金を取り戻す」など費用を求める連絡には応じないよう、くり返し呼びかけてきました。

ドメインだけの人にとっては、お名前.comの名前で届いた一通のリンクを押すかどうかが分かれ道になります。

 

いまのうちに確かめたい3つ

ドメインの管理画面(お名前.com Navi)は、サイトやメールがどこにつながるかを決める場所でもあるんです。

そこに他人が入れば、自分のサイトやメールの行き先を書き換えられるおそれがあります。

お名前.com Naviには2段階認証の設定があり、2026年9月28日からは、指紋や顔でログインできる「パスキー」も使えるようになりました。

そのときのお知らせでは、ドメインはWebサイトやメールに使う大切な資産で、その管理アカウントが不正にアクセスされたときの影響は大きい、とも説明されています。

  • お名前.comからのメールのリンクは押さず、ブックマークか検索から公式サイトを開いてログインする
  • お名前.com Naviにパスキーか2段階認証を設定する
  • お名前.com Naviのパスワードを、ほかのサービスと使い回していない新しいものに変える

どれも、今日のうちにできることです。

第9報まで出た27日になっても、ドメインだけの人は、お知らせで名指しされた対象ではありません。

それでもすっきりしないのは、その安心の材料が、37時間で言い方を変え、その2日後にもう一度変えたのと同じお知らせだからですよね。