2026年10月17日の夕方、TBS系「お笑いの日2026」の生放送で、MCを務めた芸人の永野が、CMをはさんで別人のようになっていました。

CMの前は、進行役の田村真子アナの肩を抱いて大はしゃぎ。

ところがCMが明けると、目のふちを赤くして、お知らせを小学生の音読みたいに真面目に読み上げる52歳がそこに立っていたんです。

ひな壇からはすかさず「怒られてるやん!」の声。

同じ日には、コント日本一を決める「キングオブコント2026」の敗者復活戦の投票も行われていて、Xでは「キングオブコントよりこっちの方が100倍おもろかった」とまで言われる、ちょっとした事件になりました。

CMの数分のあいだに、スタジオでいったい何があったのか、気になりますよね。

永野のプロフィールとMCに選ばれた理由

永野の宣材写真
引用元:グレープカンパニー公式サイト(https://grapecom.jp/talent_writer/nagano/)
  • 名前=永野(本名は永野一樹)
  • 生まれ=1974年9月2日・宮崎県宮崎市
  • 事務所=グレープカンパニー
  • 代表的なネタ=「ゴッホより、普通に、ラッセンが好き」

永野は1995年にホリプロで芸人を始め、フリーの時期もはさみながら、長いあいだ「知る人ぞ知る」芸人でした。

ラッセンのネタで一度ブレイクしたあと、2025年12月には、芸人の投票で順位を決めるTBSの番組「芸人総選挙2025」で、芸人1000人が選んだ「今年おもしろかった芸人」の2位に入ったんです。

今回はそのごほうびとして、1位だったお笑いコンビ・ダイアンの津田篤宏と2人で、「お笑いの日2026」の中のコーナー「芸人総選挙 お笑いの日ver.」のMCを任されました。

この2人が地上波でそろってMCを務めるのは、今回が初めてです。

 

放送の3週間前、9月26日に番組が発表されたとき、2人はこんなコメントを出していました。

  • 津田「永野さんとどうなるのか。放送事故にだけ気をつけて楽しみたいです。本当に不安だし、永野さんはなんか嫌な人だし、とてもとても不安です」
  • 永野「世話になった先輩もいないですし、しがらみも少ないほうなので、自分が一番目立てればそれでいいです。僕のほうが年上なので、津田と田村には邪魔だけしないでほしいですね」

あとから読み返すと、2人とも当日の展開をほぼそのまま言い当てていたんです。

実際、番組が始まると、永野は張り切りすぎて、すぐに自分でも抑えがきかなくなってしまいます。

紳助パンチから始まった大暴れ

CMに入るまでに、永野はスタジオで次から次へと暴れていきました。

「裏回し、やめろよ!」

最初の火種は、ひな壇の芸人たちが始めた「裏回し」。

裏回しは、MCの代わりに、ひな壇の芸人が話を振ったりまとめたりして番組を回すことです。

うまい人がやると番組はなめらかに進むのですが、MCから見れば、自分の仕事を横から取られているようなもの。

永野は「俺たちが司っているから、裏回し、やめろよ!」とクギを刺しました。

 

続けて永野は、かつての名司会者・島田紳助の名前を出します。

紳助は2011年に、暴力団関係者との付き合いが明るみに出て芸能界を引退した人で、それ以来、テレビでその名前を耳にすることは、ほとんどありません。

その名前を出したうえで、永野はこう言いました。

  • 俺、今、初めてここに立って、紳助さんの気持ち分かったもん

「分かるわけないだろ!」とツッコミが入ると、永野は紳助の名前を借りて「紳助パンチ行くぞ!」と叫び、持ち場を離れ、ひな壇へ突進。

平成ノブシコブシの吉村崇やみなみかわたちに蹴りを入れ、さらに正拳突きで「紳助パーンチ!」と続けました。

この正拳突きには、見ていた人から「無駄にひねり入れてスクリューにしてるのウケる」という声まで出ています。

津田が「その名前、出すなって!」と怒っても、永野の言い分は「地元の働いている親友が喜ぶんです」。

なぜ親友が喜ぶのか、その説明は最後までありませんでした。

名前も出ないその地元の親友のことが、この夕方、日本中で話題にされてしまったわけです。

 

この「紳助パンチ」は、放送中からXのトレンドに入りました。

田村アナへの「紳助タッチ」

永野はその勢いのまま、進行役の田村真子アナにも向かっていきます。

「紳助タッチ!」と言って田村アナの右肩のあたりを触り、VTRが明けると今度は肩を抱きました。

津田に背中をどつかれ、ひな壇からも非難の声が上がっても、永野は最後まで「友達が喜ぶ」の一点張り。

CM明けに静かになった永野

そして、番組は問題のCMに入ります。

CMが明けると、ひな壇からいじりが次々に飛んでも、永野は表情ひとつ変えずにスルーしました。

無表情なのに目のふちは赤く、顔色まで白く見えて、それがまた笑いを誘うんです。

となりの津田は「な~んもなかった!」と大声で場をまとめにかかります。

信子のストーリーに写っていたもの

この日スタジオにいたぱーてぃーちゃんの信子は、自分のインスタグラムのストーリーにCM中のスタジオの写真を1枚載せて、こう書き添えていました。

  • CM中ちゃんと大人に怒られてたww

芸人が言う「大人」は、たいていプロデューサーのような番組の偉い人や、事務所の人のことです。

写真には、衣装係にネクタイを直してもらっている永野と、机に前のめりで寄りかかる津田、そのすぐ後ろで前かがみになって笑う田村アナが写っています。

叱っている人までは写っていませんが、テレビの前で見ていた人たちが想像していた「CM中に怒られた」は、どうやら本当にあったことのようです。

Xでは「ちょっと泣いてるやん」「はしゃいでた永野がCM明けガチギレされた後の小学生みたいになってて」と、CM明けのしょんぼりした顔に笑う声が続きました。

 

その後の永野は、すっかり大人しいMCに変わります。

「前半飛ばしまくり後半落ち着いた永野に何故か振られまくる岸に大爆笑」と書いた人もいて、後半の永野は、なぜかひな壇のきしたかの・岸大将にばかり話を振っていたようです。

CMの数分間にスタジオで起きること

視聴者にとってCMは「トイレに立つ時間」ですが、生放送のスタジオでは、むしろいちばん慌ただしい時間。

口で話せるのはCMのあいだだけ

番組を仕切るディレクターたちは、ふだんスタジオの外の「サブ」と呼ばれる部屋で、カメラの切り替えや時間を見ています。

放送中にスタジオの出演者へ指示を出しているのは、フロアディレクターと呼ばれるスタッフ。

そのフロアディレクターも、カメラが回っているあいだは声を出せないので、出演者と口で直接話せるのは、どうしてもCMの数分間に限られます。

次のコーナーの段取りや、カンペ(指示を書いた紙)では伝えにくい話は、スタッフがCMのあいだにまとめて出演者へ伝えるんです。

 

信子の写真で永野がネクタイを直されていたのも、CMのあいだに急いで身なりを整えていたところに見えます。

ひな壇に飛びこんで蹴りまで入れれば、ネクタイが曲がってしまっても不思議ではありません。

叱られながら、ネクタイも締め直される。

CM中のスタジオでは、永野が叱られるのと、身なりを直されるのとが、同時に進んでいたのでしょう。

何もなかった顔で進めるのが決まり

今回、その「大人」がだれで、何を言ったのかまでは、まだ表に出ていません。

そして、何があっても何もなかった顔で次へ進めるのが、生放送の決まりごとです。

津田の「な~んもなかった!」は、その決まりごとを、思わず大声で口に出してしまった、というところでしょう。

 

そもそも今回のMCは、「芸人総選挙2025」の1位と2位をそのまま並べた組み合わせで、2人とも、場を回すより暴れて笑わせる側の芸人です。

MCの席で永野を止められるのは、ツッコミながら自分も暴れている津田と、進行役の田村アナくらいでした。

「津田と永野もMCにする事が既にイカれてんのよ」という声もありましたが、最後に止めに入ったのが、CMのあいだに出てきた「大人」だったと考えると、CM明けに永野が急におとなしくなったのにも納得がいきます。

怒られてもおかしくなかった3つの場面

3つとも、CMに入る前の数分間の出来事。

①引退した人の名前を連呼した

1つ目は、引退した島田紳助の名前を、生放送で何度も叫んだことです。

しかも同じTBSの生放送では、2009年秋の『オールスター感謝祭』の放送中に、司会だった紳助本人が、お笑いトリオの東京03に詰め寄って叱りつける場面が流れたことがあります。

この日の永野を見て、「感謝祭での島田紳助役と東京03役両方をこなしていたのが凄い」と書いた人もいました。

前半は紳助のように暴れ、CMのあいだは東京03のように叱られる。

たしかに、永野は1人で両方の役をやってのけていました。

 

②アナウンサーの体に触れた

2つ目は、田村アナの肩に触れ、肩を抱いたこと。

実は同じTBSでは、1週間前の10月10日の深夜にも、生放送の「オールスター後夜祭’26秋」で、出演者の体の触り方が批判を浴びたばかりでした。

壁を全員で越える企画で、マリーマリーのタコスが紺野ぶるまのお尻をつかむような動きをして、MCの有吉弘行も「すごいケツ触られてるけど」と口にしていた場面です。

同じTBSの生放送で、出演者の体の触り方に批判の声が出たのは、これで2週続けてのこと。

2026年10月18日のSmartFLASHは、2025年3月の『オールスター感謝祭’25春』で、江頭2:50に迫られた女優の永野芽郁が泣いて退出した騒動まで並べて、破天荒な芸人を生放送にたびたび呼ぶTBSの起用を問う声を伝えています。

 

③蹴りと正拳突き

3つ目は、ひな壇の芸人への蹴りと正拳突きです。

放送の倫理を見る第三者機関のBPO(放送倫理・番組向上機構)は、2022年4月に「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」について見解を出しています。

子どもや若い世代への影響に気を配って、作る側に見直してほしいと求めた内容で、番組を禁止するものではありません。

ただ、この日の蹴りは、ひな壇の芸人がツッコミで返していて、その場でスタッフや共演者が止めたという話は報じられていません。

3つのうち、CMに入る前からスタジオで津田やひな壇に止められていたのは、紳助の名前を出したことと、田村アナの肩を抱いたこと。

CMのあいだに注意されたのも、この2つだったのではないでしょうか。

永野が再評価されている3つの理由

この夜、永野には「最近、永野が熱いw」「お笑い好きとしては、永野の良さがもっと世に理解してもらいたい」という声も届いていました。

永野は2023年ごろから、テレビやYouTubeでしゃべるトークが、あらためてウケはじめた芸人です。

2025年12月には、雑誌『DIME』の「DIMEトレンド大賞」でベストキャラクター賞に選ばれ、「毒舌キャラと巧みなトークで再ブレイク中」と紹介されました。

紳助パンチに笑った人たちは、永野のどこを面白がっているのでしょうか。

大きく分けると、①現場を見て暴れ方を変える、②しがらみのない毒舌、③「怒られた」から始まった再ブレイク、の3つです。

①現場を見て暴れ方を変える

ファンのあいだでは、こんな見方に「わかる」とうなずく人が多く出ていました。

「永野は『この現場つまんねぇな』って思ったら、真面目な文化人テンションで乗り切る」

「永野は『この現場なら長くいてもいいわ』と思える信頼できる相手が周りにいると暴れる」

 

実際、永野はテレビやラジオで映画評論のコーナーも持っていて、真面目にしゃべる仕事もしている人。

真面目に話そうと思えば話せる人が、この日は最初からアクセル全開だったわけです。

ひな壇には、平成ノブシコブシの吉村崇やウエストランドの井口浩之のように、どんなボケでも拾って返せる芸人がそろっていました。

「元破天荒の暴れん坊担当だった吉村が永野を諌めてるのなんか胸熱」という声もあったほどで、この顔ぶれなら受け止めてもらえると踏んで、永野はここで暴れることにしたのかもしれません。

そう考えると、CM明けの永野は、ファンの言う〈真面目な文化人テンション〉に、自分でスイッチを切り替えていたのでしょう。

 

②しがらみのない毒舌

「吉本芸人にはできない立ち回り」「吉本に喧嘩売ってる方のマインドが強いの新鮮」という声も目立ちました。

永野が所属するグレープカンパニーは、サンドウィッチマンが所属する事務所で、吉本興業ではありません。

番組発表のコメントで自分から「しがらみも少ないほう」と言っていたのは、冗談のようでいて、永野の強みをそのまま言い当てているんです。

永野が見直されはじめたきっかけの1つも、じつは毒舌でした。

2023年5月に中京テレビの『太田上田』に出たとき、MCのくりぃむしちゅー・上田晋也に噛みついたトークです。

永野は2024年に同じ番組へ再び出たとき、「前回の出演で人生が変わった」と話していました。

今回の暴れぶりを見て「爆笑問題 太田の立ち回りだね」と、『太田上田』のもう1人のMCの名前を出す人がいたのも、なるほどとうなずけます。

太田光もまた、台本どおりに収まらない芸風で知られる芸人だからです。

 

③「怒られた」から始まった再ブレイク

もう1つ、2025年5月に永野がテレビ朝日の公式YouTubeの番組で振り返っていた再ブレイクの転機の話は、今回の騒ぎと不思議なくらい重なります。

ポッドキャスト『アルコ&ピースのしくじり学園放送室P』で事務所への不満を話したらノーカットで配信され、会社との関係が気まずくなったそうです。

「もう辞めよう」と思っていたところで、お笑いコンビ・鬼越トマホークのYouTubeに呼ばれ、そこでも事務所のことまで話してしまいました。

ところがその回が予想以上に再生され、会社にはめちゃくちゃ怒られたものの、仕事は次々に決まったそうです。

  • めちゃくちゃ怒られたけど、めちゃくちゃ番組が決まった

会社に怒られるほど攻めたことを言った永野を、見ている人たちは「この人は面白い」と受け取っていったんですね。

CM明けの永野を見て「昔のTVみたいでいいね」「やっぱテレビはこうじゃないと」と書いた人たちも、台本どおりに進まないところを面白がっていたのでしょう。

もちろん、「MCとして生放送を仕切る能力は足りなかったな」と厳しく見る人もいます。

それでも、今の永野は、怒られたことまで笑いに変えて、そのまま次の評判にしてしまうんです。

「おもろい」と「不快」の境目

「こういう永野大好き、実に人間くさい」「求められていることを全力でやってるのカッコいいぜ」という声がある一方で、「不快過ぎる」「全然わらえなかった」という声も上がっています。

去年の総選挙でも、3時のヒロインの福田麻貴が永野を「みんながうっすら思ってる事を言語化するのが上手すぎる」と推していて、芸人仲間も、永野のこの遠慮のなさを面白がっていたんです。

ただ永野は、その遠慮のなさで、ときどき一線を越えてしまいます。

2017年に情報番組『PON!』で若手俳優にビンタをして批判を浴びた件を持ち出して、「若手俳優思いっきりビンタしてたのが1番不快だった」と書く人もいました。

さかのぼれば2001年にも、番組『いけ年こい年』の企画で一升瓶の酒を空けて裸で踊り出し、ディレクターに連れ出されて、事務所をクビになりかけたことがあります。

はしゃぎすぎて「大人」に止められるのは、永野にとって25年越しのお家芸と言ってもよさそうです。

「セクハラ的なノリ」と、田村アナへの絡みを問題にする声もありました。

おもろいと感じるか不快と感じるかは、永野が笑いで返せる人に絡んだのか、返せない人に絡んだのかで分かれたように見えます。

ひな壇の芸人なら、蹴られてもツッコミで返せば、それで笑いになる。

田村アナも、肩を触られたあとは「戻って戻って」と冗談まじりに返し、肩を抱かれたあとは一瞬顔をこわばらせながら「ちゃんと見てますか?」とひな壇に声をかけて、進行を止めませんでした。

ただ、それは番組を前へ進めるための一言で、ひな壇の芸人のようにやり返して笑いをとることは、進行役の立場ではできません。

 

CM明けには、無表情で番組のお知らせを読む永野本人が、今度はみんなに笑われていました。

だからこそ、前半の大暴れよりも、あのしょんぼりした数分間のほうが、ずっと多くの人を笑わせたのかもしれませんね。