YouTuber夫婦「りせとルイス」の動画で、妻のりせが保育園のプールについて話した一言が、10月20日の未明からXで広まっています。

浅いプールでジョウロひとつを囲む子どもたちを見て、「めっちゃ暇やん」。

朝、泣いている子を先生に預けて仕事へ向かったことのある人にも、そのプールの横で子どもたちを見守ってきた保育士さんにも素通りできない一言で、ネットには「あれはひどい」という声も上がっています。

保育士さんたちが悲しくなったのは、あの浅いプールとジョウロに、ちゃんとしたわけがあるからなんです。


「めっちゃ暇やん」の一言

りせとルイスは、日本人のりせとイギリス人のルイスの国際カップル。

2歳の長女と、2026年8月に生まれた長男の4人家族で、子どもとの毎日をYouTubeに上げています。

話題の場面は、10月18日に公開された質問コーナーの動画の中にあり、車で出かける道すがら、視聴者からの質問に二人で答えていく回でした。

 

「幼稚園はいつから?」への答え

画面に「幼稚園はいつから入れますか?」という質問が出て、りせが答えはじめます。

来年の4月から入れるなら2歳児クラスになるらしい、という前置きのあと、見学に回った感想を口にしていきました。

幼稚園の中には、3歳になる前の子が通える2歳児向けのクラスを置いているところもあり、そうしたクラスのことのようです。

ただ、話に出てくる見学先には保育園も入っていて、プールの話はその保育園でのものでした。

「どこ行ってもねやっぱね家の方が楽しいなって思っちゃうね」と話し、でも「他の友達とかとの関わり」は大事だから「難しいね」と続けたあとに、問題の一言が出てきます。

「正直保育園とか行っても」「めちゃくちゃ浅い5cmくらいのプールで」「ゾウさんのジョウロ1個でバチャバチャしてて」「これ午前中のアクティビティですみたいな」「めっちゃ暇やんみたいなね」。

そこから話は、幼稚園に入れても「これ楽しめんの?」と思うことが多い、というところへ進み、家ではいま夫婦で娘にめいっぱい構って、話を聞いてあげている、とも話しています。

 

切り抜きには入っていない言葉

Xで広まったのは、この一言の文字起こしと、動画の画面を写した何枚かの画像だけ。

けれど動画の続きでは、りせ自身が「無理なことさせたくないなっていう過保護な気持ちが出てきてる」と話していました。

見学中に、先生が子どもを叱っている場面や泣いている子を見て、かわいそうに思ってしまったとも言っています。

そのうえで、「でもそれは過保護すぎるんだよね、きっと」と自分で付け足していたんです。

 

隣のルイスは娘について「でも彼女は自分なりに成長するし、きっと大丈夫だ」と返し、「悲しく聞こえるけど、彼女にとっては最高のことなんじゃないかな」と続けています(どちらも画面の字幕より)。

最後は「入れてあげたいし入れようとは思ってるけど」「いい幼稚園に出会えればいいけどね」という言葉で、この質問への答えは終わりました。

10月20日の朝の時点で、この発言について説明する動画は、二人のチャンネルに上がっていません。

 

それでも引っかかる「暇」の一語

前後を通して見ると、子どもを園に入れるかどうか、夫婦で迷っている途中の話でした。

ネットには、保育園を選ばずに幼稚園へ入れるのは家ごとの自由だ、という意味の「幼稚園なら別に個人の自由では」という声もあります。

けれど、毎日その場所に子どもを預けている人や、そこで働いている人にとって、「暇」の一語だけは素通りできませんでした。

「安全に配慮された上で預かった命を楽しませようという保育士さんたちへの配慮は全くない」と書いた人もいます。

毎日通わせている親からすれば、見学で見えるのは園の1日のほんの一部です。


あの浅さとジョウロのわけ

浅い水とジョウロひとつという絵は、たしかに地味に見えますよね。

でもあの形は、2歳前後の子の水遊びのねらいと、浅い水でも子どもは溺れるという事実の、両方から来ています。

国の保育の指針と、事故を防ぐためのガイドラインが、その2つのもとです。

 

水遊びのねらいは「触れる」こと

国が保育園の保育のよりどころとして示している「保育所保育指針」は、1歳から3歳未満の子の保育の内容のひとつに「水、砂、土、紙、粘土など様々な素材に触れて楽しむ」を挙げています。

この年ごろの水遊びは、泳ぐためのものではありません。

水の冷たさや、こぼれていく感じそのものを味わうのがねらいで、ジョウロで水をかけて遊ぶ姿は、そのねらいどおりの景色なんです。

 

浅い水でも子どもは溺れる

「浅いなら安全でしょう」と思いがちですが、こども家庭庁の注意書きにはこう書かれています。

「たった3cm以上の深さがあれば、乳幼児は溺れる可能性があります」

消費者庁も、家庭用プールについて「わずか10cmの深さの水でも溺れるおそれがあります」と呼びかけています。

2011年7月には、神奈川県大和市の幼稚園で、水深20cmほどのプールで3歳の男の子が亡くなる事故がありました。

事故の原因を調べる国の消費者安全調査委員会の報告書によると、その園は水深を3歳の子の膝下くらいにしていたそうです。

浅くしてあっても、それだけでは事故は防げない。

 

見張る大人は水に入らない

だから国は、2016年3月に出した事故防止のガイドラインで、プールのときは「専ら監視を行う者とプール指導等を行う者を分けて配置」するよう求めています。

子どもと一緒に水で遊ぶ先生とは別に、見張るだけの大人を置く、ということです。

同じガイドラインには、監視の注意点として次のような言葉が並んでいます。

  • 監視者は監視に専念する
  • 監視エリア全域をくまなく監視する
  • 動かない子どもや不自然な動きをしている子どもを見つける
  • 規則的に目線を動かしながら監視する
  • 十分な監視体制の確保ができない場合は、プール活動の中止も選択肢とする

2026年5月28日にも、こども家庭庁・文部科学省・消費者庁の連名で、同じ中身をくり返す通知が保育所や幼稚園に出ました。

抜き出した注意点の最後の項目にあるとおり、見張り役を立てられない日は、プールを開けないことも選ぶ道のひとつになっています。

国の基準では1歳と2歳の子は6人に保育士1人ですが、プールの日は片付けや着替えにも人の手が取られ、上の投稿のように、ひとりで大勢を見る時間が出てしまうことも。


「暇」に見えてしまうわけ

家での水遊びなら、親がすぐ横についていられます。

深めのプールに入れても、手を伸ばせば届くところに大人がいるので、遊び方の幅もぐっと広がるもの。

ところが保育園の水遊びは、その前提から違っています。

大人の手の数が限られた中で、クラスの子どもたちを同じ時間に水へ入れるからです。

 

大勢で同じ水を囲む

見張り役を1人出したうえで、残りの先生が子どもたちと遊ぶので、ひとりひとりに付きっきりにはなれません。

りせの発言を引用して、2歳児クラスを担任しているという保育士の人は、Xにこう書いていました。

「休日にプールに連れて行けない家庭の子どもにも水遊びの経験をさせるには、これしかない」

あの浅いプールは、家で連れて行ってもらえない子にも、同じ水を届けるための形でもあるわけです。

 

写らない先生の仕事

見学のあとにりせが口にしていたのは、「これ楽しめんの?」という心配でした。

いっぽう保育園のプールは、楽しさより先に、全員が無事に帰れるかどうかから組み立てられています。

見学で目に入るのは、浅い水と、ゾウのジョウロと、はしゃいでいる子どもたちです。

プールの横で一度も水に入らずに立っている先生は、見学に来た人の目には、なかなか入りません。

「暇」に見えたのは先生の仕事が見えにくい形をしているからで、保育士さんたちが悲しんだのも、その仕事ごと「暇」とまとめられたからなんだと思います。


幼稚園ならプールは違う?

りせの話は、最後には「いい幼稚園に出会えればいいけどね」というところに落ち着いていました。

保育園から幼稚園に変えれば、プールの景色も変わるのかどうかは、気になるところです。

保育園と幼稚園は、国の仕組みの上では別のものですが、プールの安全の決まりは、どちらにも同じものが当てはまります。

 

決まりは幼稚園も同じ

2016年のガイドラインには文部科学省も名を連ねていて、2026年5月の通知も、宛先には保育所と並んで幼稚園が入っていました。

つまり、幼稚園に入れても、小さい子のプールは、浅い水と見張り役という同じ形が基本になるわけです。

 

見学で迷うのはどの親も同じ

園を選ぶ時期になると、見学に回るほど分からなくなるという声は、よく聞きますよね。

近さも、時間も、ごはんも、先生の雰囲気も、家ごとに大事にしたいものは違います。

見学で「うちの子には合わないかも」と感じるのは、親としてごく自然なことです。

ただ、合わないと感じた場所を「暇」とまとめて言ってしまうと、そこを選んで毎日通っている家族まで一緒に言われた気持ちになってしまいます。


見本と言われてきた家の一言

りせとルイスの二人は、子どもへの接し方が丁寧だと、見ている人たちのあいだで言われてきました。

同じ動画の少しあとでは、友達の家族と出かけると、向こうの親から、娘が歯をみがくところを「この子に見せてあげて」と頼まれる、という話も出ています。

りせはそれを、「みんなのお手本」と笑っていました。

お手本のように見られてきた家の言葉だから、動画を見てきた人ほど、よけいに刺さってしまいますよね。

迷いながら見学に回ること自体は、どの家にもある話です。

それでも、5cmの水の横で目を離さずに立っている先生がいることを思うと、「暇」の一語だけは言い過ぎだったと感じてしまいますね。