2026年10月17日、夫婦YouTuberの「ゆみみンゴTV」が、「特殊詐欺の被害に遭い、財産のほぼ全てを失いました。」という動画を公開しました。

夫のけんごが、警察官を名乗る相手にだまされて、家族の貯金のほぼ全額を送金してしまったという報告です。

警察を名乗る相手とLINEでビデオ通話をして、「潔白の証明」としてお金を送った、と聞くと、「警察がLINEで取り調べなんてするわけない」「なんでこんなのに引っかかるの」と言いたくなりますよね。

ただ、けんごが動画で話したことを順番に聞いていくと、1本の電話から半日近く、逃げ道をひとつずつふさがれていったことが分かってくるんです。

ゆみみンゴTVのプロフィール

ゆみみンゴTVのけんごとゆみたん
引用元:YouTube「ゆみみンゴTV」(https://www.youtube.com/watch?v=TpvZwkzOiYY)
  • チャンネル名=ゆみみンゴTV
  • メンバー=夫のけんご・妻のゆみたん
  • 登録者数=約57万人(2026年10月時点)
  • 主な内容=2歳の娘との家族の日常

2人は、2026年8月に注文住宅の新しい家へ引っ越したばかりでした。

ゆみたんによると、けんごはふだん、怪しいメールが届くと「これは開かないほうがいいかな」と相談に乗ってくれる人。

家の中でいちばん詐欺に気をつけていたのが、けんごだったんです。

「警視庁」を名乗る電話から送金まで

けんごが「おかしいな」と思うたびに、だます側はその疑いを打ち消す答えを、先回りして用意していました。

「あなたは容疑者になっています」

昼間に仕事をしていたけんごのスマホに、080から始まる知らない携帯番号から電話がかかってきました。

相手は「警視庁」の部署の名前と名字まで名乗り、最初は「キャッシュカードをなくしていませんか」という軽い質問。

この時点ではけんごもまだ怪しいと思っていて、念のためスマホの画面の録画も始めていました。

ところが次に、東京の警視庁を名乗ったその相手から、「今から兵庫県警の本部まで来られますか」と言われます。

理由を聞くと、「まだ公にしていない捜査の情報なので、絶対に第三者に聞かれないでください」と念を押されたうえで、こう説明されました。

  • 兵庫県で特殊詐欺グループの主犯格が逮捕された
  • 犯人の部屋から押収したキャッシュカードの中に、けんご名義のものがあった
  • 本人が窓口に行かないと作れないカードなので、けんごは共犯の容疑者になっている
  • 出頭しなければ、口座はすべて凍結され、財産も没収される

出頭すれば最大20日ほど勾留される、つまり家に帰れなくなるかもしれない、とまで言われ、仕事で行けないと答えると、「では、このままオンラインで取り調べを進めてもいいですか」と持ちかけられたといいます。

投稿にある「トクリュウ」は、SNSなどで人を集めて犯罪をくり返す「匿名・流動型犯罪グループ」の略です。

LINEのビデオ通話と警察手帳

まもなく、兵庫県警の担当者を名乗る人物からLINEで連絡が来ました。

そのときLINEの画面には、「警察から連絡が来ることはありません。詐欺に注意してください」という警告が出ていたんですよね。

ところが相手は「詐欺が多いので、いまのポップアップは私のほうで出しています」と言い、けんごはそれを信じてしまいました。

 

ビデオ通話に切りかわると、シャツ姿の男性が警察手帳を見せ、「私の名前をGoogleで検索してください」と言ってきます。

検索していちばん上に出てきた人の顔と、画面の向こうの相手の顔は、よく似ていたそうです。

そこからは、スマホを触らない、カメラとマイクを切らない、第三者に聞かれたら家宅捜索になる、と次々に言われ、家族構成や実家のこと、貯金の額まで細かく聞かれていきました。

銀行アプリを開いて残高のスクリーンショットを撮るよう言われ、LINEの画面共有で、スマホの画面はずっと相手に見られていたといいます。

 

「検事」と家から離れた駐車場

2時間ほどたつと、相手は「ここから検事につなぎます」と言い出します。

検事は、事件を裁判にかけるかどうかを決める立場の人です。

そのとき家にいたけんごは、「奥さんがいる家の中では検事の取り調べはできない」と言われて、車に乗るよう指示されました。

家の前に停めると「家の前ではだめです」と言われ、離れた駐車場までさらに移動。

検事を名乗る人物も手帳を見せて検索させ、けんごのフルネームが漢字で書かれた逮捕状を画面に出してきました。

 

そのうえで、犯人が使っていた口座にお金を入れて、「入金番号」と「着金番号」が一致すれば共犯、一致しなければ潔白だと分かる、と説明されたそうです。

もちろん、警察が潔白を確かめるためにお金を振り込ませることはありません。

本人は確認のための少しのお金、1000円くらいを送るものだと思っていたのに、1けたずつ読み上げられた金額は、口座の残高のほぼ全額でした。

それがいくらだったのかは、動画では明かされていません。

「待って待って、もうほとんどなくなるやん」と思ったものの、「いま共犯だと認めれば罪は軽くなる」と揺さぶられ、最後は「もう押すしかできひんねん」と送金ボタンを押してしまいました。

送金のあとには、検査に1時間ほどかかり、潔白なら振込手数料まで含めてすぐに全額返す、と説明されています。

 

定期預金と消費者金融まで

そのあとは、カメラを外に向けたままコンビニのATMへ行かされ、画面を映しながら定期預金のお金もほぼすべて移しました。

けんご自身も、「これ、詐欺に遭ってるおばあちゃんみたいやな」と思いながら操作していたといいます。

続いて「消費者金融でお金を借りては返す異常なデータが出ている」と言われ、その疑いを晴らすためだと説明されて、消費者金融2社のアプリでマイナンバーカードを読み込ませ、借り入れまで申し込まされました。

このころには、電話から5時間ほどがたっていて、審査が通ったのは50万円ずつ、合わせて100万円。

 

ここで、短い時間に大きなお金が動いたことに銀行のアプリが反応し、口座にロックがかかります。

借りた100万円は相手に送れず、被害はそこで止まりました。

それでも相手は「返金中」という画面を送ってきて、最後にこう念を押したそうです。

  • 明日の朝9時から取り調べの続きをする
  • 借りた100万円は、使うと横領になる
  • 家族にも絶対に話さない
  • これから4日間は、起きたとき・寝るとき・出かけるとき・帰ったときに必ずLINEで報告する

家に戻って打ち明けると、ゆみたんはすぐに「それ、おかしいよ」と言い、急いで警察へ電話しました。

振込先の口座は凍結の手配がされましたが、お金はすでに別の口座や、ビットコインのような暗号資産に移されていて、取り戻すのはほぼ無理だと思ってほしい、と警察からは言われたそうです。

 

戻る可能性があるのは口座に残ったお金だけ

それでも、まったく戻ってこないと決まったわけではありません。

振り込め詐欺救済法という法律があり、お金を振り込んだ先の口座が凍結されると、その口座に残っていたお金を、被害にあった人たちへ分けて返してもらえます。

たとえば凍結したときに口座に10万円しか残っていなければ、被害にあった人たちに戻ってくるのは、その10万円を分けたぶんだけです。

けんごの場合はお金がもう移されたあとなので、戻ってくるとしても、ほんの一部になりそうです。

けんごが途中で引き返せなかった理由

けんごは動画の中で、相手が名乗っただけで警察だと信じたこと、警察が個人の携帯から電話してくること、LINEで捜査をすることを挙げて、「俺はこのありえへんことが3つあったのに、全部騙されたんよ」と打ち明けています。

あまりに典型的な手口だったため、ネットでは「ヤラセでは」と疑う声まで出ていて、その疑いの中身はゆみみンゴTVの詐欺被害はヤラセ?「嘘ですよね」と疑われる理由で詳しく見ています。

それでも、けんごの話を最後まで聞いていくと、不注意のひとことでは片づけられない場面が、いくつも出てきます。

①「オンラインでもいい」と言われた

本人が「ここで疑いがなくなった」と話していたのは、最初の電話で、仕事で行けないと答えたら、それならオンラインでもいい、と相手が別の道を出してきたときでした。

だます側なら相手に選ばせたりしないはず、と思いこんでいたところを、うまく使われてしまったんですね。

 

②2時間、お金の話が一度も出なかった

そこから2時間、相手は家族構成や資産のことを細かく聞くばかりで、お金を払えとは一言も言っていません。

「警察って、こんな細かく仕事すんねや」と思っていたくらいで、お金を取られるなんて1ミリも思っていなかったと振り返っています。

 

③1回送ったら「詐欺だと思いたくない」

けんごがいちばん後戻りできなくなったのは、最初の送金を済ませてしまったあとでした。

けんごは「詐欺師って思ったらもうお金返ってこないから、目の前の詐欺師を信じたくなってしまう」と話していて、ATMの前でおかしいと気づいていながら、そこからさらに定期預金と借金まで進んでしまいました。

「言われた通りにやれば家族に会える」と思うようになり、早く家に帰りたい一心で指示に従い続けた、と本人は話しています。

全国の警察をまとめる警察庁も、2026年7月の資料で、この詐欺について「犯人側と接触してしまえば、誰もがだまされるおそれがある」と書いています。

 

動画の中では、土地の持ち主になりすまして代金をだまし取る地面師詐欺の「なりすまし役」のように、顔の似た人を役に合わせて用意していたのか、AIで似せていたのか、という話も出ていました。

電話の向こうにいるのが1人ではないことは、警察の摘発からも見えてきます。

こうした電話をかける拠点は海外にもあり、2025年11月にはカンボジアで、2026年3月にはインドネシアで、現地の当局が拠点を摘発し、そこにいた日本人13人ずつが日本へ移送されて、警察官をかたる詐欺の疑いで逮捕されました。

けんごに電話をかけてきた人たちがどこにいたのかは分かっていませんが、けんごは役を分けた何人もの相手に、半日がかりで囲まれていたのです。

偽警察詐欺は若い世代も狙う

警察庁が「ニセ警察詐欺」と呼んでいるこの詐欺の被害は、2026年1月から6月までの半年だけで4,466件、被害額は507.9億円にのぼります。

件数がいちばん多いのは70代ですが、20代と30代を合わせると4件に1件以上。

50代以下では、けんごのときと同じように、最初の電話は固定電話より携帯電話にかかってくることが多いと分かっています。

なぜ若い世代がだまされるのか、けんごは、スマホのアプリでさっと振り込める世代だからこそ、1回はまったら入金まで行ってしまうのではないか、と話しています。

ゆみたんも、やり方が分からずに銀行の窓口へ行っていたら、そこで詐欺だと気づけたかもしれない、と返していました。

 

同じ手口の電話を受けたYouTuberは、けんごが初めてではありません。

2025年2月にはテニス系YouTuberのねぱーるが200万円を送金してしまったと明かし、2025年8月にはカップルYouTuber・パパラピーズのじんじんが、口座にロックがかかっていたおかげで1000万円の被害を免れたと話していました。

けんごも動画の冒頭から、最近は個人情報の流出がとても多く、名前と年齢と電話番号さえあれば成り立ってしまう詐欺だと繰り返しています。

けんごの後悔とゆみたんの言葉

けんごがいちばん悔やんでいたのは、なくしたお金の額よりも、それが娘の将来のために貯めてきたお金だったことでした。

娘が大きくなって行きたい大学ができたときに、「パパが貯めといたよ」と言って背中を押してあげたかった、と話しながら、ソファで気持ちよさそうに眠る娘を見ていると本当にショックだった、と言葉を詰まらせています。

「自分も許せへんし、詐欺をしてきた相手も腹立たしい」とも話していました。

被害に遭ったその日は、ゆみたんの誕生日で、週末には誕生日の旅行も計画していたそうです。

 

そんなけんごに、ゆみたんは「支払ってしまったことを責めるつもりはないんだよ」と伝えています。

ゆみたんは、捕まったら家族はどうなるかと考えて、家族を守ろうとして動いた結果だった、とけんごのことを受け止めていて、そのうえで、詐欺だと分かったときのけんごの様子を話してくれました。

何も分からない娘に頭を下げて「ごめんね」と謝っていたのを見て、「ちゃんとパパだなって思った」と言うんです。

さらにゆみたんは、けんごが見たことのない顔で家を出ていくのを目にしながら止められなかったと言って、「もっと早く気づいてあげればよかった」と、自分から謝っていました。

そして動画の最後に、ゆみたんは、ふだんから見てくれている人に向けてこう話しています。

  • コメントを見て辛くなっちゃうようだったら、見ないでください
  • 何か言いたいことがあったら、けんごじゃなくて私に言ってください
  • 私が全部受け止めます
  • 私たちは前を向いていきます

電話が来たらまず1回切る

けんごは最初、怪しいとも思っていました。

それでも「容疑者」と言われた怖さが先に立って、そのまま引き返せなくなってしまいました。

だからこそ2人は動画の後半で、迷う前にまず電話を切ることを、何度も繰り返し話していました。

警察を名乗る電話が来たら、1回切って、自分から警察署にかけ直す。

けんごはこれを、被害のあとにゆみたんから教わったと話しています。

警視庁も、警察官がSNSやビデオ通話で連絡を取ることはないと呼びかけていて、警察手帳や逮捕状を見せたり、口座を調べるといってお金を振り込ませたりするのは犯人の手口だから気をつけてほしい、と伝えています。

どうしても迷ったときは、警察の相談専用電話「#9110」でも相談できます。

ゆみたんは、身近な人がいつもと違う顔をしていたり、ちょっとでも様子がおかしいと思ったりしたら、すぐに声をかけてあげてほしい、とも話していました。

犯人が「家族にも話すな」と最後まで念を押したのは、家族に話された時点で終わってしまうと分かっていたから。

半日がかりで家族から引き離されたけんごが、詐欺だと気づけたのも、家に戻ってゆみたんに打ち明けたときでしたね。