六本木の高級キャバクラで働いていた「ヤマトリノ」が、自宅でコカインを持っていた疑いで捕まりました。

逮捕は2026年9月15日の夕方、現行犯です。

翌16日の未明、警察署へ入っていく捜査車両の中から、彼女はカメラへ向けて指で輪をつくるサインを見せました。そのあとの送検では、舌を出してウインクまでしています。

ニュース映像のその姿を見て、「なんなんだあの態度は」といい気持ちはしなかった方も多いんじゃないでしょうか。あれだけふてぶてしく振る舞って、それでも罪が軽くなるのなら、どうにも腹の虫がおさまりません

そしてもうひとつ、押収された端末のことも取り沙汰されています。

押収されたiPhone16。画面をロックする本人がパスコードを言わない限り、警察でも中身は取り出せないと言われている機種です。

本当に開けられないのか。あのふてぶてしい態度で、刑は重くなるのか。初犯なら執行猶予という話は、どこまで本当なのか。

iPhone16は警察でも開けられないのか

iPhoneに保存された写真もメッセージも、端末の中で暗号化されていて、その鍵はセキュアエンクレーブと呼ばれる専用のチップが握っています。

基板にあるこの小さなチップは本体のほかの部分からも独立していて、パスコードが何回間違えられたかを数えるのも、間違えるたびに待ち時間を延ばすのも、全部このチップの仕事なのです。

つまり捜査用のパソコンにつないで片っ端から番号を試す力技は、最初から封じられているんですね。

では本当に「100%不可能」なのかというと、そこまで言い切ってしまうと少し行き過ぎになります。

セキュリティの専門家によれば、捜査機関向けに売られている解析ツールは、OSやハードウェアに残った抜け穴を突いて、この回数の数え方そのものを止めてしまうのだそうです。数えられなくなれば、あとは数字の組み合わせを総当たりで試し続けられる。

警察にとって、中身を開ける手はゼロではない、ということです。

 

再起動した後は指紋も顔認証も効かない

ただし、そこには大きな条件がついていて、iPhoneにはざっくり言うと二つの状態があります。

  • 電源を入れてから一度でもロックを解除した状態
  • 再起動してから一度も解除されていない状態

一度画面のロックを解いたあとの端末は、暗号を解く鍵の一部が取り出しやすいメモリーへ移っているので、調べる側にもまだ手が残るというわけです。

ところが後者になると、鍵はチップの奥に仕舞い込まれたまま。画面を見つめても顔認証も指紋認証も受け付けず、正しいパスコード以外では開かなくなる

もう打つ手なし。

そしてAppleは、iOS 18.1から、しばらく誰にも触られていないiPhoneが自分で再起動する仕組みを入れました。押収されて警察署の証拠品の棚に置かれた端末が、勝手に電源を入れ直して、あの開かないほうの状態へ戻ってしまう。

海外の現場では、押収したiPhoneが一斉に再起動して捜査員が困惑した、という話も出ているくらいで、日本の警察にとってもかなり厄介な相手になっています。

ですから「100%開けられない」というのは言い過ぎでも、「そう簡単には開かない」という話の芯は当たっているわけです。

道端でスマホを落とした本人を守ってくれる仕組みが、皮肉にも捕まった人のことも同じように守ってしまう。

通信会社には記録がそのまま残っている

警察がいちばん知りたいのは、端末の性能ではなく誰といつクスリのやりとりをしていたかのほうです。

そして、そのやりとりの記録はiPhoneの外にもずいぶん残っています。

  • 通信会社に残る通話や通信の記録
  • クラウドに自動で上がっていたバックアップ
  • SNSや通話アプリの運営会社が持つデータ
  • カード決済や送金の履歴
  • やりとりしていた相手の端末

手元のスマホを金庫にたとえるなら、本人が鍵を握りしめているあいだに、同じ中身が外から集まってくるようなもの。

そして今回の場合、部屋そのものに証拠の物が残っていたのです。

報道によれば、そのあとの家宅捜索で、東京・港区六本木の自宅の部屋からはコカインとみられる白い粉末の入った袋が21袋と、先を斜めに短く切ったストローが押収されています。ストローには白い粉末が付いていたとも伝えられました。

取り調べでは「2人のもので、一緒に使っていた」と容疑を認めています。この日は同居していた交際相手の会社役員も同じ容疑で逮捕されていて、こちらは否認していると報じられています。

画面のパスコードを守り切ることと、捜索が入った部屋に残っていた物を守ることは、まったく別の勝負なんですよね。

本人が認めたのは、あくまで持っていたことです。どこから手に入れたのか、誰とやりとりしていたのかは、いまも表に出ていません。

そして端末が開かないとなれば、それを確かめる勝負どころは机を挟んだ取り調べの部屋だけになります。

あのiPhone16が取り調べの鍵と言われているのは、端末が開かないぶん、その先を本人の口から出すしかなくなってしまうから

態度は罪を重くしないが軽くもしない

じつは、警察を煽っていると言われはじめたのはあの二つのポーズよりも前からで、逮捕の少し前に公開された実業家とのネット対談では、お客さんがクスリを出しているところなんて見たことがない、と彼女自身がカメラの前で笑って話していたことも報じられていました。捜査当局は2026年に入ったころから、ずっと内偵を進めていたといいます。

そこへ、警察の捜査車両の中から報道カメラへ向けたあの指のサイン。そのあと送検のときには、悪びれもせず舌を出してのウインク。

この形が何を指しているのかは、じつのところ分かっていません。ただ、過去の別の逮捕でも同じ形が出ていたという指摘は上がっています。

あのふざけた態度に見ていて腹が立つのは、決してこちらの心が狭いからではありません

捕まっても痛くも痒くもないとあんな顔で見せつけられたときに湧いてくるあの胸のざわつきは、わりとまっとうな反応だと思います。

そもそも取り調べで黙っていたことを理由に刑を重くすることは、法律上許されていません。自分に不利なことを話さなくていいというのは憲法が認めている権利で、権利を使ったから罰を増やす、というのでは権利の意味がなくなってしまうからです。

ただし、刑事事件に詳しい弁護士の解説には但し書きがついています。

法廷で素直に罪を認めて深く反省している人は、その反省を判決で有利な事情として汲んでもらえる。そしてその裏返しとして、反省の色が見えない人は、本来なら汲んでもらえるはずだった情状のぶんが手に入らないということが起こり得る、と。

つまり、罰を上乗せする理由としてあのふざけたポーズが刑を重くする材料になることはないけれど、裁判官が刑を軽くするための減刑の材料は自分から捨てているのと同じなんですね。

全然平気だと強気に見えるあの振る舞いは、裁判を迎える本人にとってもけっこう高くつく買い物なのかもしれません。

コカイン初犯の執行猶予はおよそ8割

「どうせ初犯だから執行猶予で出てくるんでしょう」と冷めた見方をする声もありますが、これは法廷の現実として残念ながら、だいたい当たっているんですよね。

コカインを持っていた場合に問われるのは麻薬及び向精神薬取締法の違反で、たとえ自分で使うために単純に持っていただけでも7年以下の懲役。しかもこの罪には罰金で済むという選択肢がないので、執行猶予がつかなければ、そのまま刑務所。

弁護士事務所の実務解説によると、初犯で有罪になったときのいわゆる相場は懲役1年6か月に執行猶予3年あたりで、執行猶予がつく割合はおよそ8割とされています。

執行猶予は無罪という意味ではない

裁判で執行猶予がついても、有罪判決が出たことに変わりはありません。重い前科も残ったまま。

そして猶予の期間中に別の罪で再びつかまれば、猶予が取り消されて、そのときの刑と一緒にまとめて刑務所で執行されることになるので、判決から3年のあいだは、うっかりもできません。

ほぼノーダメージで終わり、と笑って言えるほど軽い話ではないのです。

21袋が営利目的と見られたら実刑もある

では、ヤマトリノの今回もその8割のなかに入るのでしょうか。

そこはまだ誰にも分かりませんが、ひっかかっているのは家宅捜索で押収された白い粉末の袋の数です。

自分で使うためだけに持っていた単純所持と、誰かに売るために持っていた営利目的の所持は、法律上まったく別の重さで扱われます。小分けにされた袋の数や、量りのような道具があったかどうかは、そこを分ける材料になりやすい。

スポーツ紙の取材に答えた元麻薬取締官も、もし営利目的の所持ということになれば執行猶予がつかない実刑の可能性が出てくる、と話しています。

最初の現行犯逮捕の直接の容疑になったのは約0.4グラムというわずかな量で、問題の21袋がゴソッと出てきたのは、そのあとの本格的な家宅捜索です。

桁がまるで違います。

押収された21袋の中身がすべて本物のコカインだと鑑定で確定した、という公式な発表も、いまのところ警察からは出ていません。

現時点で事実としてはっきりしているのは、この3つのポイントだけ。

  • 単純所持で初犯なら執行猶予がつきやすいという相場
  • 営利目的と見られた場合は話がまったく変わるという事実
  • 自分で吸うためか、それとも誰かに売りさばくためだったのか、そのどちらになるかはまだ決まっていないということ

留置場での勾留(こうりゅう)の期間は、法律上いちばん長くて20日ほど。検察が裁判にかける起訴をするかどうかが決まるまでは、まだもう少しだけ時間が残っているはずです。

風営法はキャストの前科を見ていない

世間からは「どうせすぐ夜の世界に戻るんでしょう」と呆れるような見方もありますが、これも夜の街の仕組みを知ると、なるほどそういうことかと妙に納得がいってしまいます。

華やかなキャバクラも、風営法の許可を取って営業しているお店です。この法律には、許可を出してはいけない人を並べた欠格事由(けっかくじゆう)という厳しい決まりがあって、1年以上の懲役刑を受けた人はお店を持てないといった条件が細かく書かれているのです。

ただ、この条件がかかっているのは許可を受ける営業者だけで、そこで働くキャスト本人には及びません

リスクを負ってお店を開くオーナー側には前科の壁があるのに、雇われて働くキャスト側には、法律上そういう壁がそもそも用意されていません。一般企業のような、採用のときに前科を調べる仕組みも、夜の店舗にはもちろんなし。

だから巷で「夜職は戻りやすい」と言われるわけで、本人が図々しいからではなく、法律が最初からそう作られているからなんです。

もっとも、席があるから法的に戻れることと、世間や指名客から温かく歓迎されることは、まったく別の話ですよね。

同じ薬物でも、扱われ方はずいぶん違います。それを不平等だと感じる人もいれば、今回は自分から表に出てきたのだから当然だと感じる人もいるでしょう。

いずれにしても、戻ってこられるかどうかを最後に決めているのは、法律ではなく世間の空気のほうなんですよね。

捕まっても効いていませんと見せつけられて、もやもやしたものが残ったままの人は多いと思います。

ただ、あの態度にざわついた人がこれだけいるうちは、世の中もまだそこまでゆるくなっていない、ということかもしれませんね。