2026年9月19日の未明から、「宝塚がやばいらしい」という言葉が広がっています。

原因不明の休演者と、理由不明の退団者が続出していて、それが花・月・雪・星・宙(そら)の5つの組すべてで起きている、という話です。

組はこの5つで全部。

すぐに「パワハラですか?」「変な勢力が入り込んで内部崩壊が進んでるようですな」という声が並びました。

宝塚の公式発表には、理由がはっきり書いてあるものと、一言で終わっているものが混ざっています

宙組の公演が止まった12月の4日間

いちばん大きな出来事は、2025年の年末に宙組(そらぐみ)で起きた公演中止です。

宝塚の公演はお芝居とショーの2本立てで、このときは東京の東京宝塚劇場で『PRINCE OF LEGEND』と『BAYSIDE STAR』を上演していました。

それが2025年12月25日の昼公演から急に中止になり、そのまま28日までの公演が取りやめになります。

4日間、幕が開きませんでした。

劇団が出した説明は「主要な出演者の体調不良が発生し、公演実施が困難なため」という一文だけ。

クリスマスの昼公演ですから、その日を楽しみに予定を組んでいた人がたくさんいたはずです。

公演は29日から再開されましたが、この中止がいまも「原因不明の休演」と呼ばれています。

 

その前から一人が怪我で休んでいた

この中止の12日前に、同じ宙組でもう一つ発表が出ていました。

水美舞斗(みずみ まいと)の休演には、「怪我のため」と理由がはっきり書かれていて、代役の名前まで並んでいます

役は入団年次が下の人へ一段ずつ繰り下がり、12月13日からの公演はそれで続いていたんですよね。

主役級が抜けても幕を開けた例はほかにもあって、2023年8月には星組のトップスター礼真琴(れい まこと)が体調不良で4日間休み、そのあいだは暁千星(あかつき ちせい)が主役を代行しました。

心配されるのは2023年があったから

宝塚の休演と聞いて最悪のことが頭をよぎるのには、はっきりした理由があります。

2023年9月30日、宙組の劇団員が亡くなりました。当時25歳、入団7年目です。

遺族側は同年11月の会見で、亡くなるまでの約1か月の時間外労働が推計で約277時間にのぼっていたこと、入団年次が上の上級生からハラスメントを受けていたことを訴えました。

劇団が最初に出した調査結果は、過重労働は認めつつ、いじめやハラスメントについては「確認できなかった」というものです。

その結論がひっくり返ったのは、翌年でした。

2024年3月28日、劇団と、劇団を運営する阪急側は、遺族が挙げた15項目のうち14項目をハラスメントと認め、安全配慮義務違反があったとして謝罪しています。

認められたのは、上級生が本人の意に反してヘアアイロンを当てて額に1か月以上残るやけどを負わせたことや、若手だけで同じ演目を上演する新人公演の直前に、2日続けて深夜まで髪飾りを作り直させたこと。

さらに2024年9月5日には、西宮労働基準監督署から是正勧告書を受け取ったことも公表されました。

ただ、何をどう改めるよう求められたのかは、劇団も労基署も公表していません。

報道では、契約のうえではフリーランスでも実際には労働者にあたると見なされ、労務管理の不備を指摘されたとされていました。

 

亡くなる3か月前にも公演は止まっていた

同じ年の6月、こんどは星組で、宝塚大劇場の『1789』が全45公演のうち25公演も中止になっています。

理由は、関係者の体調不良が相次いだこと。

その3か月後にあの劇団員が亡くなっていますが、このときはまだ公演の作り方は変わっていません。

2025年の年末に宙組の公演が止まったとき、すぐにこういう声が上がったのはそのためです。

休演が重なった組の名前が、亡くなった方のいた組と同じだったのですから、当時を覚えている人が身構えるのは当たり前のことだと思います。

今年の休演9件を数えると怪我が多い

では「原因不明の休演者が続出している」という部分はどうでしょうか。

2026年に入ってから公式サイトに出た休演のお知らせは、9月19日の時点で9件です。

ファンの情報アカウント「タカラヅカ歌劇ポータル」が拾った分だけなので、これで全部ではありません。

書かれていた理由は、こうでした。

  • 怪我のため……6件
  • 体調不良のため……1件
  • 公式ページが消えていて確認できない……2件

1月から9月で9件ですから、ならすと月に1件ほど。

正直なところ、「続出」と呼ぶほどの数ではありません

いちばん多い理由は「怪我のため」で、これは羽根を背負って大階段を降りたり、群舞で何十人も揃って跳んだりする仕事を思えば当たり前かもしれませんね。

劇団も、リハビリなどを扱うスポーツ医と連携できる体制を整えたと公表しました。

 

6月の中止には理由が書いてあった

公演そのものが止まった例は2026年にもあって、6月5日、兵庫の宝塚大劇場で上演中だった宙組の『黒蜥蜴』『Diamond IMPULSE』が、ショーの終盤で中断したまま再開できずに終わっています。

暗転するはずの場面で照明が落ちず、そのまま出演者がはけていったそうです。

このときの発表は「舞台機構の故障」で、舞台を動かす機械が止まったという話でした。

宝塚の公演で指揮をしてきたミュージカル指揮者の西野淳も、客席へ向けてこう書いています。

機械の不具合なら、劇団は原因まで具体的に書く。

 

人が理由のときだけ説明が消える

ところが、公演そのものが止まった12月のときは、誰がどうなったのかが最後まで出てきませんでした

休演のお知らせにしても、書かれるのは「怪我のため」のひとことだけ。病名も、体調なのか家庭の事情なのかも出てきません。

理由が伏せられるのは、今回が初めてではないんです。

2023年11月7日には月組でトップ娘役ら4人の休演が一度に発表され、代役を立てて公演は続きましたが、神戸新聞は「休演理由については明らかにしていない」と書いています。

なぜ書かないのかは、劇団自身も語っていないのです。

鳳月杏の退団は10か月前に決まっていた

もうひとつの「理由不明の退団者が続出」には、別の事情があります。

宝塚は退団の知らせが表に出るタイミングそのものが、他の世界とかなり違うんです。

退団の発表は、実際に辞める日の数か月前に出ます

月組で主役を務める鳳月杏(ほうづき あん)と、相手役の天紫珠李(あまし じゅり)の退団が発表されたのは2026年5月18日で、実際に辞めるのは2027年3月28日。

10か月も先の話を、その翌日に記者会見まで開いて知らせるので、残りの時間をどう過ごすか決められるのは、ファンにとってありがたい仕組みですね。

ただ、そのぶん「また退団の発表が出た」という見出しだけが、実際に辞める日よりずっと早く流れてくることになります。

鳳月杏は会見で「この立場に就任させていただいた時から、退団の時期は考えておりました」と話していますが、今年これまでに何人が退団したのかという総数を、劇団は出していません

例年より多いのかどうかを確かめる材料が、そもそもない。

休演が増えたのか休めるようになったのか

2023年のあと、劇団は働き方そのものを作り替えています。

日程が動いたのは2023年12月15日。すでに売っていたチケットを払い戻して3つの組の24公演を取りやめると発表し、実際に公演が減ったのは翌年1月からでした。

2025年3月に公表された「宝塚歌劇における改革の取組について」という資料には、変更点が数字つきで並んでいます。

  • 1年に打つ公演を9本から8本へ削減
  • 1週間あたりの公演数を10回から9回へ
  • 宝塚大劇場公演の稽古日数を45日から50日目安へ延長
  • 楽屋口にゲートを設置し、在館できる時間を約3時間短縮
  • 診療所の常駐医師を2024年6月に1名増員
  • 公認心理師などのカウンセラー2名が週3日駐在

2025年3月には、入団6年目以降の劇団員が業務委託から雇用へ切り替わりました。

対象は専科(せんか)と呼ばれるベテランをのぞく全員で、参加が必要な稽古は労働時間として扱われるようになっています。

専科の人たちだけは、これまでどおりの契約のままです。

 

昔は21年で一度しか休まなかった

1990年代から2010年代にかけて在団していた元劇団員の越乃リュウ(こしの りゅう)が、2022年に雑誌へ手記を寄せています。

21年のあいだに休演したのは、たった一度だけだったそうです。

そしていま休演のお知らせが次々と出てくるのを、どう読めばいいのか。

体調を崩す人が本当に増えているのか、それとも今までなら我慢して舞台に立っていた人が休めるようになったのか。

ただ、誰かが休めば、その役はかならず誰かへ回りますよね。

休むことが誰かの負担とセットになっているかぎり、制度が変わっても休みやすくはならないのでしょうね。

 

外からの点検は2025年3月で止まった

制度は入りました。ただ、それで安心していいという話にもなりません。

改革をチェックするために外部有識者のアドバイザリーボードが置かれましたが、公式サイトによれば設置期間は2024年4月から2025年3月まででした。

いまは続いていません。

改革の中身をまとめた資料も、2025年3月27日の更新で止まったまま。

2024年11月から12月にかけての匿名アンケートでは、その年の初めと比べて組の雰囲気が良くなったと答えた劇団員が65%いますが、これは劇団と阪急の側が自分たちで集めて自分たちで発表した数字です。

そして改革が動き出したあとの2025年12月にも、公演は止まりました。

足りないところを想像で埋めてしまうのは、劇団が「体調不良」の一言で止めているからで、この心配をつくっているのは劇団のほうということですね。