メルカリが叩かれています。

きっかけは、くら寿司のちいかわコラボです。

店の従業員が景品を抜き取って売っていたことが分かり、2026年9月5日の夕方にキャンペーンそのものが打ち切られました。

その景品がフリマアプリにずらりと並んでいた、というのが今回の始まりです。

 

ただ、この2日間で伸びていた投稿を追いかけていくと、話がくら寿司から離れていきます。

いちばん怒られていたのは、1年以上前のSwitch2のことでした。

 

「今さら」「口だけ」「後出し」。

この3つが並ぶとき、みんなが思い出しているのは今回のことではありません。

 

そこで、これまで何があったのかを年ごとに並べてみました。

すると、メルカリが重い腰を上げるときの条件がひとつだけあることに気づきます。


今回の炎上はくら寿司から始まっていない

今回いちばん多くの人が頷いていたのが、この一言です。

くら寿司の「く」の字も出てきません。

それでも1万4千を超える反応が付いています。

「Switch2の時から信用していない」「あれ以降メルカリは信用できない」「Switch2の時の恨み」。

この形の投稿が、9月7日の夜から翌朝までずっと流れていました。

 

Switch 2は2025年6月に発売された任天堂のゲーム機です。

買いたくても買えなかった人が、1年以上たっても覚えていたということになります。

メルカリの発表は月曜の夕方だった

時間の並びも、火に油を注ぎました。

コラボの打ち切りが発表されたのが9月5日の土曜日で、メルカリが「対応を進めています」と投稿したのが9月7日の月曜日、夕方の6時すぎです。

あいだに土曜と日曜がまるごと入っています。

その2日は、フリマアプリがいちばん動く時間でもありました。


これまでメルカリで問題になったもの

この怒りがどこから来ているのか、過去の出来事を古い順に並べてみます。

この「社会問題になってから」が、あとで効いてきます。

2017年 現金と領収書が並んだ

最初に大きく報じられたのが、1万円札そのものの出品でした。

1万円が1万2000円ほどで売られていて、クレジットカードの枠を現金に換える手口ではないかと指摘されました。

買った人はカード払いで現金を手に入れられて、売った人は2000円を抜ける。

メルカリはマネーロンダリングにつながるおそれがあるとして削除対象にします。

同じころ、宛名の入っていない領収書も見つかりました。

経費の水増しに使えてしまうもの。

2020年 マスクは法律で止まった

コロナで品薄になったマスクが高値で並びました。

1箱数千円という値段が当たり前になって、薬局の棚からは消えたままだった時期です。

このときは国が動きました。

2020年3月15日から、購入した値段を超える価格でのマスクの転売が禁止されました。

生活に必要な物が足りなくなったときに国が流通へ手を入れられる、国民生活安定緊急措置法という法律があります。

その政令が変わり、違反すると1年以下の懲役か100万円以下の罰金という形になりました。

規制は同じ年の8月29日に解除されています。

個人がやる転売そのものを法律で禁じた、数少ない例でした。

2024年 事務局の対応で炎上して謝った

2024年11月には、取引そのもののトラブルで大きく燃えました。

新品未開封のプラモデルを送ったところ、中身がほとんど抜かれてゴミが入った状態で返品された、という報告です。

これに事務局が十分に対応しなかったとして批判が集まります。

メルカリは11月17日に謝罪し、カスタマーサポートの体制を見直して強化すると発表しました。

出品する側からすると、いちばん怖い形のトラブルですよね。

 

このときも、謝ったのは炎上したあとでした。

2025年 米は出品禁止になった

いわゆる令和の米騒動では、政府の備蓄米が転売されて問題になりました。

メルカリは2025年5月29日に備蓄米の出品を禁止すると発表します。

さらに6月13日には対象を米全般へ広げ、6月23日から出品できなくなります。

ここでも背景にあったのは、国が米の転売を規制する政令の改正を決めたという動きでした。

2025年 Switch2は出品禁止にならなかった

そして同じ年のSwitch 2です。

発売直後から定価の2倍近い値段が並び、抽選に何度落ちても買えないという声があふれました。

それでも、こちらは出品禁止になっていません。

 

ここまで並べてみると、対応が分かれた場所がはっきりしてきます。


出品禁止になるのは法律が決まったときだけ

止まった年と、止まらなかった年の違いはどこにあったのか。

この合意は実在します。

2025年5月27日、任天堂が出したお知らせに、メルカリ・LINEヤフー・楽天グループの3社と協力することで合意したと書かれています。

中身は「規約に違反する不正な出品への能動的な削除対応」と「情報共有を含む連携体制の構築」でした。

合意したあと、ヤフオクとヤフーフリマはSwitch 2そのものを出品禁止の商品にしました。

見回りを増やすのではなく、売れないように仕組みのほうを変えたわけですね。

 

メルカリは出品禁止にしませんでした。

規約違反を見つけたら消す、という運用のままです。

マスクと米のときはメルカリも禁止にした

ここが引っかかるところなんですよね。

マスクのときも米のときも、メルカリは出品を禁止しています。

できないわけではないのです。

違いは、その2つには国が決めた規制があったという一点だけでした。

政令が変われば、その日から売り場は閉まる。

 

Switch 2にも、ちいかわの景品にも、それがありません。

任天堂という会社からの要請はありましたが、法律ではありませんでした。

 

行政が動いたときだけ、売り場が閉まる

過去のどれを見ても、この形からはみ出していません。

 

ちなみに2025年10月には、メルカリの基本原則も改まりました。

安心・安全を損なう場合は個別に出品を禁止できる、という運用が始まっています。

止めようと思えば止められる道具は、もう1年近く前からあるということです。

今回それを使うかどうかについて、メルカリは「状況を踏まえながら随時判断する」と答えていました。


通報しても消えないと言われる理由

いちばん多いのが、この形の声でした。

通報しても何も起きない、という声はずっとあります。

 

ヘルプページを読むと、理由の一端が書いてあります。

重大な違反を除いては、まずルールを伝えて改善を促す形で対応している、とあるのです。

削除ではなく、出品者への声かけ。

しかも通報した側には結果が知らされません。

 

もうひとつ、コメント欄で相手の違反を指摘する行為は、報告ではなく行為として扱われます。

正しいことを言っていても、書き方によっては制限がかかる側に回ってしまう。

 

だから「通報した自分のほうが消された」という話が出ると、多くの人がすぐに信じるのだと思います。

声明にも「通報をお願いします」と書いてあった

今回の発表は、じつはもう少し長い文章でした。

盗品など正規ルートではない入手が確実と思われる商品を禁止していること。

申告を受けたらシリアルナンバーや商品の特徴を照合して、該当すると判断すれば削除すること。

警察から照会があれば法令にもとづいて協力すること。

 

そして最後がこう結ばれていました。

不正が疑われる出品を見かけた場合は、商品画面から通報をお願いします。

 

ここで火がつきました。

何年も「通報しても消えない」と言い続けてきた人たちへの返事が、「通報してください」だったのです。

 

この投稿への返信でいちばん多くの人が頷いていたのが、通報した本人の報告でした。

規約違反の出品を通報したが削除も何もされず放置された。

対応がないことを問い合わせたら、自動受付のあとテンプレートの回答が来て、そのまま問い合わせが終了になった。

画面のスクリーンショット付きで、9千を超える反応が付いています。

逮捕されてもアカウントは止まらなかった

もっと重い報告もありました。

盗品を売っていた人が捕まったあとでも、アカウントはそのままだったという話です。

 

先ほどの「確実と思われる」という言葉が、ここで効いてきます。

疑わしいだけでは足りない、という書き方になっているからです。


高く売れるほどメルカリに入る額が増える

動く気がないのではないか、という見方の根拠になっているのがお金の流れです。

ここは、少し訂正が要ります。

販売手数料10%がかかるのは出品した側だけで、買う側に手数料はかかりません。

コンビニ払いなどを選んだときに100円の決済手数料が出るくらいです。

 

細かい話に見えますが、押さえておいたほうがいいと思っています。

間違った数字が混ざると、正しい怒りのほうまで軽く見られてしまうからです。

 

そのうえで、この10%というのは批判する側にとって、かなり強い材料になると思っています。

1000円で売れれば100円、1万円で売れれば1000円。

本来なら数百円で配られていた景品が1万円で売れたとき、メルカリに入る額も同じだけ大きくなる計算になります。

止める動機が弱いのではないかという指摘は、この一本の数字だけで十分に立ちます。


匿名配送で相手にたどり着けない

売れてしまったあとの話も、今回たくさん出ていました。

メルカリ便という配送の仕組みを使うと、出品者と購入者はお互いの住所も名前も見えません。

ふだんは安心につながる仕組みですよね。

けれど盗品や偽物をつかまされたとき、相手が誰なのかを自分の力で調べる手段がどこにも残っていないという裏側があります。

アカウントを消して逃げられてしまうと、連絡を取る方法そのものが無くなってしまいます。

被害届を出しに行こうにも、相手の住所も本名も分からないまま、という状態です。

 

今回も、不正に入手したとみられる品を出していたアカウントが、報道が出たあたりから次々に消えていきました。

だからこそ、売れてしまう前の段階で止まっていてほしかった、という声が強くなるわけです。

買う前にできることもある

長く使っている人ほど、自分なりの線を引いています。

評価の数と中身は、購入前に誰でも見られます。

 

配布日より前の日付、非売品という表示、そろいすぎているセット。

怪しい出品には、買う前に見えている印がだいたい付いているものです。


メルカリを罰するのが難しい理由

「メルカリを罰してほしい」という声が、今回たくさん出ました。

それがなぜ難しいのかを、教えてくれる投稿があります。

Winnyは2002年から公開されたファイル共有ソフトです。

違法な複製が大量に流れたことで、開発した技術者が2004年5月に逮捕されました。

罪名は著作権法違反の幇助、つまり手助けをした罪です。

2006年に京都地裁で罰金150万円の有罪判決。

ところが2009年に大阪高裁がこれをひっくり返し、2011年12月に最高裁で無罪が確定しました。

2009年の高裁が引いた一行がいまも効いている

高裁が示した条件が重要です。

手助けした罪に問うには、そのソフトの主な使い道として違法な行為をすすめる形で提供していたことが必要だ、としました。

言いかえると、道具を配っただけでは罪にならない。

その道具で悪いことをしてくださいと言っていた場合だけが罪になる、ということです。

包丁を売った店が、その包丁で起きた事件の責任を負わないのと同じ考え方ですね。

この線が2011年に引かれ、いまも生きています。

 

だから「メルカリを罰せよ」は、気持ちとしては分かっても入口がほとんど残されていません。

 

そして、ここからが今回いちばん腑に落ちたところです。

この線の内側にいるためには、「すすめてはいない」と示し続ける必要がある

あの発表は、たぶんそのために出ています。

読んだ人が薄いと感じたのは当たり前で、もともと私たちに向けて書かれた文章ではなかったのではないでしょうか。


それでも擁護の声が出ている

9月8日に入ってから、流れが少し変わりました。

盗んだ人がいちばん悪い。

これはそのとおりです。

 

擁護する側からよく出てくるのが、数の話でもあります。

並んでいる商品は数億点あるので、すべての発売日や配布日を調べて先回りしろというのは無茶だ、という言い分です。

 

もうひとつ、こういう指摘もありました。

通報だけで消せるようにすると、気に入らない相手を落とすための道具になってしまう。

これも、そのとおりだと思います。

 

ただ、批判している側もそこまでは求めていないと思うのです。

言われているのは「大騒ぎになっている商品だけでもいいから、先に止めてほしい」という一点でした。

 

過去に何度も見送られてきたのが、まさにその一点です。


腹が立つのはズルが通ってしまうこと

ここまで並べてきて、いちばん言葉にしにくいところが残りました。

今回の怒りを「欲しいものが買えなくて損をした」で説明すると、たぶんどこかでずれてしまいます。

 

湯呑みが手に入らなかったこと自体は、正直そこまで大きな話ではありません。

刺さっているのは、正面から並んだ人が買えず、抜き取った人が売って儲けたという順番のほうです。

 

店に何度も足を運んだ人がいて、子どもに約束して開店前から並んだ人もいました。

その列の外側から手を伸ばした人が、いちばん得をしています。

ルールは無いのではなく動いていない

そして、ここがいちばん腹の立つところだと思うのです。

ルールは最初からありました。

 

盗品の出品は規約で禁止されています。

通報の窓口もあります。

個別に出品禁止にできる仕組みも、2025年10月から用意されています。

 

足りないものが無いのに、動かない。

ルールがあるのに使われないと、それは飾りと同じになります。

飾りになったルールの下で何が起きるのかというと、そのルールを守っている側だけが黙って割を食うことになります。

 

一人一個の約束を守った人は、一個しか持っていません。

並ばずに抜いた人は、何十個も持って売りに出しています。

 

正直にやったほうが損をする

この感覚が残ってしまうことが、いちばん重いのだと思います。

 

だから今回の声が大きいのは、値段が高かったからではありません。

ズルが通ってしまう場所が、そのまま次のコラボにも残るからです。


次のコラボは配布日の前日でわかる

指摘されているのは、通報しても声かけで終わること。

高く売れるほど会社の取り分が増えること。

匿名配送で相手にたどり着けなくなること。

そして動くのが、いつも社会問題になったあとだということ。

 

どれも今回はじめて出てきた話ではありません。

1万円札が並んだ2017年から数えると、9年ぶんの積み重ねがそのまま乗っていることになります。

 

そのなかで、いちばん静かに刺さった一行がこれでした。

無くなってほしいわけではないのです。

 

抽選に外れ続けた側からすると、望んでいたのはずいぶん小さなことだったのではないでしょうか。

欲しかったものが、欲しかった値段で、欲しかった人のところに届く。

それだけのために、配布の前日に並んだ出品を止めてほしかった。

 

次に大きなコラボや新商品が出たとき、配布が始まる前の日に何が並んでいるか。

そこを開いてみれば、この9月で何かが変わったのかどうかがすぐに分かります。