2026年9月18日、iPhone 18 ProとiPhone 18 Pro Maxが発売されました。

Appleの直販でいちばん安い18 Proが21万9,800円からで、共同通信は去年の17 Proが出たときより4万円高いと伝えています。

最上位の18 Pro Maxは最大で44万9,800円、10月23日に出る初の折りたたみ型「iPhone Duo」は36万4,800円からと聞くと、驚くより先に笑ってしまう人もいるでしょう。

高性能なのは分かるけれど、毎日やることはLINEを返して、写真を撮って、動画を見ること。

その毎日に、45万円。

ところが発売日を迎えるまでの1週間で、携帯大手3社は乗り換え客をめぐる値下げ合戦を始め、発売日の朝の量販店には行列らしい行列ができませんでした。

この値段は本当に高すぎるのか、それとも高く見えているだけなのか。

去年より4万円高い18 Pro

 

話題になった44万9,800円は、18 Pro Maxの中でも保存容量が最も大きい2TBを選んだ場合の価格です。

新しいiPhoneが全部45万円になったわけではなく、18 Proは21万9,800円から、18 Pro Maxは23万9,800円から。

ちなみに今年いちばん高いiPhoneはこの45万円ではなく、折りたたみのDuoの2TBで57万4,800円でした。

「安いモデルもあるでしょ」という声はそのとおりですが、いちばん安い18 Proでも20万円を超えているので、「なんだ、普通に買える値段だった」とはなかなかなりません。

しかも今年は、安いほうへ逃げる道まで細くなりました。

例年なら新しい機種が並んだ日に、前の年のモデルが安くなります。

ところが今年はiPhone 18という無印のモデルが出なかったので、去年のiPhone 17がそのまま現役。

値下げされるどころか7月と9月の2回にわたって値上げされ、12万9,800円だったものが15万9,800円まで上がりました。

新しいモデルが高くなっただけでなく、去年のモデルまで一緒に上がってしまったのが今年です。

 

ただ、世界と並べてみると、少し意外な数字も出ています。

MM総研が40の国と地域のApple直販価格を円に直して並べたところ、18 Proと18 Pro Maxは6番目に安く、Duoは5番目に安いほうでした。

それでも「高すぎる」と感じるのは、気のせいではありません。

同じ調査が、値段を年間の平均所得で割った「iPhone指数」も出していて、こちらで日本は25番目まで落ちます。

しかもiPhoneのシェアが40%を超えている7つの国と地域のうち、この指数が3%以上あるのは日本だけでした。

値札は世界で6番目に安くても、財布から見た重さは25番目。

発売日の朝に並んだ6人

 

この値段で人がどう動くのかは、発売の前から見えていました。

予約が始まったのは2026年9月12日の午後9時で、例年なら開始から数分で、人気の色や容量が発売日に間に合わなくなります。

ところが今年は、受付が始まって2日たった9月14日の時点でも、一部のモデルで発売日当日の店頭受け取りが選べる状態が続いていました。

争奪戦になったのは45万円まで届くPro Maxのほうだけで、手続きに入るのが4分遅れただけで届く日が1週間も後ろへずれた、という報告も出ています。

そして迎えた発売日の朝、秋葉原の様子を数えて歩いた人がいました。

もちろん、並ぶ人がいなくなったわけではありません。

Apple銀座には受け取りの列ができ、ソフトバンク表参道では常連が4日前から並んで「今年も無事に終了」と書いています。

ただ、そこへ毎年つられて集まっていた人たちのほうが、今年はずいぶん静かでした。

池袋のヨドバシでは、開店前から店員が呼び込みをしていたという報告まで出ています。

並ぶ人より、呼ぶ人のほうが目立った発売日です。

26万円が実質2万円台になる理由

 

ところが、この値段にはもうひとつ裏側がありました。

Appleの直販で21万9,800円の18 Proは、ドコモ・au・ソフトバンクで買うと26万円台になります。

キャリアのほうが4万円から5万円も高いのですが、その3社がいま、乗り換え客をめぐって異例の値下げ合戦をしているのです。

下げ幅で先を行ったのはソフトバンクとauで、2年間の実質負担額をそれぞれ2万3,760円、2万2,900円まで落としました。

ドコモも発売までに2度下げ、前日には4万4,814円になっています。

26万円台で売られている端末が、2万円台の買い物として案内されているわけです。

 

もちろん、2万円で26万円のiPhoneが自分のものになるわけではありません。

この金額は、他社から乗り換えて、決められた料金プランに入り、2年後に端末を返したときの負担額です。

返す時期を逃したり、気に入ったから使い続けたりすれば、20万円を超える支払いがそのまま自分に戻ってきます。

手元に残したいなら、いちばん安いのは結局Appleの直販の21万9,800円のほう。

2年で返す前提ならキャリアの2万円台、ずっと使うつもりならAppleの直販、という分かれ方になります。

値札を見て諦めた人と、条件を調べ切った人とで、最初に出ていくお金がここまで変わる。

高いか安いかの前に、調べた人だけが安くなる仕組みのほうが、よほどしんどい。

4万円ぶんの進化は外から見えない

 

では、去年より4万円高くなったぶんで、何が変わったのでしょうか。

Appleが今年の18 Proで挙げているのは、次世代のベイパーチャンバー、新しいC2モデム、作り直したDynamic Island、そして48MPメインカメラの可変絞りです。

電池はiPhoneで過去いちばん長く、Pro Maxはビデオ再生で最大45時間まで伸びました。

日本経済新聞も、この機種を「外観に出ぬ進化多く」と書いています。

放熱の仕組みも、通信を担うモデムも、チップの世代も、並べて写真を撮ったところで写るものではありません。

今年変わったところは、外から見えない場所にかたまっている。

去年の機種と見分けがつかないのは、当たり前だったのです。

熱を逃がす力が上がって長く撮っても速度が落ちにくい、というのは、4K動画を回し続ける人にはたしかに大きな話でしょう。

ただ、家族に夕飯の連絡をして、帰りの電車を調べて、寝る前にSNSを見る暮らしでは、その差は一度も顔を出しません。

すごい進化だと言われるほど、自分には関係のない進化に聞こえてしまいます。

 

フィルムでFace IDが効かなくなる

 

しかも、その見えない変更が、発売を目前にしていきなり表へ出てきました。

18 Proでは、顔認証に使う赤外線の部品の一部が、画面の左上、時刻が表示されるあたりの下へ移ったと指摘されています。

そのぶん、上から貼るものの影響を受けるようになりました。

すまほん!!によると、中国のメディア「愛范児」は9月16日の実機レビューで、覗き見防止フィルムとマットフィルムのどちらもFace IDの反応に影響したと報告しています。

覗き見防止とすりガラス調を兼ねたタイプでは、顔を登録することすらできなかったそうです。

海外のレビューでも、マット加工なら動かなくなり、透明なタイプなら同じ問題は出なかったと伝えられています。

フィルムは本体より先に買っておくものなので、気づくのはたいてい貼ったあとです。

21万9,800円のスマホに、貼れないフィルムがある。

画面の映り込みを抑えたい人や、電車で隣の視線が気になる人は、当面は透明なタイプを選んでおくのが無難でしょう。

Duoとの差額12万5千円

 

ここからは、10月23日に出るDuoの話。

同じ256GBで並べると、Pro Maxとの差は12万5千円になります。

 

項目 iPhone 18 Pro Max iPhone Duo
価格(256GB) 23万9,800円 36万4,800円
最上位(2TB) 44万9,800円 57万4,800円
形 板状 折りたたみ
画面 6.9インチ 外5.4インチ/内7.6インチ
重さ 249g 254g
厚さ 8.75mm たたむと11.3mm/開くと5.2mm
チップ A20 Pro A20 Pro(同じ)
背面カメラ メイン・超広角・4倍望遠の3つ メイン・超広角の2つ
ロック解除 Face ID Touch ID(側面)
電池(ビデオ再生) 最大45時間 外44時間/内31時間
Apple Pencil 非対応 2026年内に対応予定
発売日 9月18日 10月23日

頭脳にあたるチップはどちらも同じA20 Proなので、12万5千円の差は処理の速さから生まれているわけではありません。

差額で手に入るのは、たたむとパスポートほどの大きさになり、開くとiPhoneでいちばん大きい7.6インチになる画面のほうです。

開いた画面では2つのアプリを左右に並べられるSplit Viewが使えて、Appleはこれを歴代のiPhoneで初めてだと説明しました。

地図を出したままメッセージを返す、レシピを開いたまま買い物メモを確かめる。

タブレットでは当たり前の使い方でも、ポケットに入る一台でできるとなると話は変わってきます。

アメリカの投資家からは「継ぎ目がない。とても薄い」という評価も出ていました。

折りたたみと聞くと使うたびに両手で開くことになりそうですが、たたんだままでも外側の5.4インチで電話もLINEも片手で済みます。

もうひとつ、実物を手にした人からは意外な報告も出ていました。

板状のiPhoneなら、貼りつけるタイプの充電器やカード入れがくっつく場所は、いつだって背面だけ。

ところがDuoはたたむと片面が画面なので、アクセサリーのほうが画面の側へ回ってくるわけです。

くっつく場所が変わるだけで、MagSafeもQi2も最大25Wのワイヤレス充電に対応しているので、手持ちの充電器はそのまま使えます。

Duoに専用の望遠カメラはない

 

ただし、いちばん高いから何でも最上級、とはいきません。

Duoの背面カメラは、広い範囲を撮る超広角と、普段の撮影を担うメインの2つだけ。

遠くの被写体を大きく写すための専用望遠カメラはなく、あるのはメインカメラが捉えた像の中央を使って2倍に写す仕組みのほうです。

Proシリーズは専用の4倍望遠を積んでいるので、運動会で離れた場所にいる子どもを撮りたいなら、画面の大きさより望遠の有無が効いてくるでしょう。

ロック解除もProの顔認証Face IDから本体側面の指紋認証Touch IDへ変わり、電池もPro Maxの最大45時間に対して、内側の大画面を使うと最大31時間まで下がります。

そして、折りたたみでいちばん気にされてきた画面の折り目。

発表直後から、実機を見た人の感想がきれいに割れました。

どちらも実機を前にした人の言葉なので、片方が嘘をついているという話ではなさそうです。

見る角度と光の当たり方で、見えたり見えなかったりする。

つまり折り目については、店頭で自分の目で確かめるまで分かりません。

 

重さも、折りたたみ同士で並べると見え方が変わります。

内側の画面はどちらも7.6インチなのに、SamsungのGalaxy Z Fold8よりDuoのほうが53g重く、開いたときも0.7mmだけ厚いのです。

Samsungは2026年8月7日にFold8を国内発売していて、先に折りたたみを出してきたほうが、まだ薄くて軽い。

画面を割ると6万4,800円かかる

 

値段が上がって困るのは、買う瞬間だけではありません。

駅のホームで取り出すとき、子どもに写真を見せるとき、旅行先で片手に荷物を持ちながら使うとき。

「手から滑り落ちたらどうしよう」という不安が、ずっとついて回ります。

では、いま買える18 Pro Maxを落としたら、実際にいくらかかるのか。

AppleCare+に入っていない18 Pro Maxで画面を割ると、6万4,800円。

落として中まで傷めた「その他の損傷」になると、16万800円です。

AppleCare+の盗難・紛失プランに入っていれば画面は3,700円で直せますが、そのかわり月に1,940円を払い続けなければいけません。

買ったあとも毎月2千円近くを安心料として払うのか、落とさないように気を張って過ごすのか。

どちらを選んでも、ポケットに放り込んでおける道具ではなくなっていきます。

中古の1位になったiPhone 14

 

値段が上がりすぎて手が届かなくなったものが、次に向かう先はたいてい中古です。

スマホより先に同じことが起きたのが住まいで、新築の価格が上がりきったあと、家を探す人はまず中古のマンションから見るようになりました。

そして今回は、その動きがもう数字になって出ています。

中古スマホを売り買いしているBelongの「にこスマ」では、2026年8月の販売数ランキングでiPhone 14の128GBが初めて1位になりました。

それまでは2025年6月から14か月のあいだ、ずっとiPhone SEの第3世代が首位だった場所です。

iPhone 14から16までを合わせた割合も、2025年9月には全体の7%しかなかったのが、2026年8月には29%まで増えました。

同社は、7月のiPhoneの値上げをきっかけに、中古という選択肢を新しく考えはじめた人が増えたと見ています。

安いから中古を選ぶ人ではなく、新品が高くなったから中古へ回ってきた人のほうが増えた、ということですね。

値札に書かれた数字と、最後に自分の財布から出ていく数字は、同じではないのです。

Appleも「認定整備済製品」として1年保証つきの端末を売っていますが、案内されている割引は最大15%で、iPhone 16の128GBは114,800円。

公式の中古は、思っているほど安くはありません。

それでも公式の看板がつくと、中古を選ぶことへの後ろめたさは確実に薄れていくでしょう。

この先に起きそうなのは、iPhoneを使う人が減ることではなく、買う場所のほうが変わることだと思います。

皮肉な話ですが、高い値段をつけるほど、型落ちのiPhoneのほうが値打ちを増していくことになりますね。

欲しいのは気軽に使えるスマホのほう

 

結局、買う人と買わない人の分かれ目は、そんなに複雑ではありません。

36万4,800円で確実に手に入るのは、たたんで持ち歩ける7.6インチと、2つのアプリを並べられる画面。

そこを使わない人にとっては、Pro Maxより電池が短くて、専用の望遠カメラもないiPhoneになります。

毎日たたんで開く人にだけ、この値段は意味を持つ。

動画を長く見る人、電子書籍を読む人、外で資料を並べて確かめる人。

そのどれも思い当たらないなら、同じ36万4,800円でPro Maxを買って、手元に12万5千円を残すこともできます。

Duoの予約が始まる10月16日までのおよそ1か月で、店頭には展示機が並び、実機を触った人のレビューも出そろうはず。

迷っているなら、その1か月を待ってから決めても遅くはありません。

Androidにも高額な機種はあるので、乗り換えれば何でも安くて快適、という単純な話でもないでしょう。

ただ、値段を言えば驚かれるスマホより、雑にポケットへ入れられるスマホのほうがいい。

連絡ができて、写真を撮れて、落としても青ざめずに済むことも、スマホの大事な便利さです。

今回の「高すぎる」は値段への文句だけではなく、「普通に使いたいだけなのに、どこまで付き合わされるの」という呆れにも聞こえます。

スマホを便利に使うために、暮らしのほうが窮屈になるのは、やっぱりおかしな話ですよね。