2026年2月の衆議院選挙では、自民党が316議席の圧勝を見せる一方で、野党では「小選挙区で負けたのに復活当選」するドラマが続出しました。

でも、

「選挙のニュース、正直よくわからない」

そう思ったこと、ありませんか。

投票日になるとテレビが速報だらけになって、「小選挙区で当選」「比例で復活」なんて言葉が飛び交うけれど、その違いをスパッと説明できる人は意外と少ないのではないでしょうか。

しかも最近は「ゾンビ当選」なんてパワーワードまで登場して、ますます混乱するばかり。

実はこの仕組み、一度わかってしまえばニュースを見るのがグッと面白くなるんです。

この記事では、選挙の仕組みをとことんかみ砕きながら、なぜ「復活当選=ゾンビ」と呼ばれるのか、その理由まで一気に解説していきます。

政治に詳しくなくても大丈夫。

お菓子の取り合いに関するたとえ話も使いながら、私のようなサルレベルでもスルスル読めるようにお届けしますので、最後までお付き合いいただければうれしいです。

衆議院選挙の小選挙区と比例代表の違い

衆議院選挙の投票所に行くと、投票用紙が2枚渡されます。

  • 1枚は「候補者の名前」を書く用紙
  • もう1枚は「政党の名前」を書く用紙

この時点で「え、2枚もあるの?」と戸惑う人もいるかもしれませんが、ここが衆議院選挙のいちばんの特徴なんです。

つまり、あなたの1回の投票が

「地元の代表選び」

「全国の政党の人気投票」

の2つに同時にかかわっている。

この2本立ての仕組みをざっくり理解するだけで、選挙ニュースの見え方がガラッと変わるはず。

 

まず1枚目、小選挙区の投票用紙から見ていきましょう。

全国を289のエリアにザクッと分けて、それぞれのエリアで一番票を集めた人だけが当選する「サバイバルレース」みたいなもの。

わかりやすく言えば、クラスで「好きなお菓子投票」をやって、1位のチョコだけがもらえて、2位のポテチも3位のグミも何ももらえない、あの残酷なルールと同じ。

2026年の選挙で言えば、宮城4区で元グラビアアイドルの森下千里さん(自民党)が、元幹事長の安住淳さん(中道改革連合)を破って当選したのが典型的な例でしょう。

安住さんほどのベテランでも、2位になった瞬間に議席はゼロ。

小選挙区というのは、本当にシビアな世界なのです。

 

この仕組みの良いところは、地元に密着した代表を選べることと、大きな政党が安定した政権を作りやすいこと。

一方で弱点もはっきりしていて、2位以下に入れられた票がまるごと「死票(結果に反映されない票)」になってしまう点が挙げられます。

極端な話、ある区で当選者が5万票、落選者が4万9千票だったとしても、その4万9千票は結果に一切反映されないサドンデスなんです。

さて、もう1枚の投票用紙が比例代表

こちらは全国を11のブロック(北海道、東北、北関東……という感じで分かれている)に分けて、各ブロックで政党が集めた票の割合に応じて議席を配る仕組みになっています。

小選挙区が「個人の人気勝負」なら、比例代表は「政党の全国人気投票」と言えるでしょう。

お菓子のたとえに戻すと、クラス全員の好みを集計して「チョコ派が40%だから4個、ポテチ派が30%だから3個……」と分け合うイメージ。

だから小さな政党でも一定の票を集めれば議席がもらえるし、さっき言った「死票」も格段に少なくなるわけです。

 

2026年の選挙結果を見ると、この2つの制度の違いがくっきり浮かび上がります。

自民党は小選挙区で200議席以上をごっそり取り、比例でも100議席超え。

合計316議席という、戦後最多クラスの圧勝劇でした。

一方、れいわ新選組は小選挙区では勝てなかったものの、比例で1議席を確保。

共産党も比例のおかげで4議席を維持しています。

もし比例代表という制度がなかったら、国会は自民党の議員でほぼ埋め尽くされていたかもしれません。

最新の反応を見ると、Xでは「比例があるおかげでなんとか多様性が保てた」という声も上がっていて、弱い政党の”命綱”としての役割があらためて注目されています。

いろいろな声を国政に届けるために比例代表がある、というのはそういうことなのでしょう。

しかし、反対意見もあることもたしかです。

ちなみに、比例代表の議席配分には「ドント式」という計算方法が使われています。

名前だけ聞くと難しそうですが、やっていることはシンプル。

各政党の得票数を1、2、3……と順番に割っていって、出てきた数字が大きい順に議席を配っていくだけの話。

テストの点数で順位を決めるのと同じ感覚で、そこまで複雑ではありません。

まとめると、

  • 小選挙区は「地元のエース決定戦」
  • 比例代表は「全国の政党人気ランキング」

という感じになるでしょうか。

この2つを組み合わせることで、強い政党には安定した政権運営を、小さな政党にも国民の多様な声を届けるチャンスを、というバランスを取っているわけです。

1994年の政治改革で導入され、1996年に初めて実施されてから約30年

これだけ長く続いている仕組みなのに意外と知られていないのだから、正直もっと学校で教えてくれてもいいのになぁ、と思ってしまいます。

衆議院選挙の復活当選が決まる仕組み

さて、ここからがこの記事の本丸。

小選挙区で負けた人が、なぜか国会議員になっている――そんな不思議な現象、気になったことはないでしょうか。

これが「復活当選」と呼ばれる仕組みで、正式には「重複立候補制度」というルールがそのカラクリ。

要するに、小選挙区と比例代表の両方に名前を登録しておいて、小選挙区で負けても比例のほうで当選できる、という”保険”のような制度なのです。

ポイントは「惜敗率(せきはいりつ)」という数字と、政党が事前に作る「比例名簿」の順位。

この2つを押さえれば、復活当選のナゾはスッキリ解けるはずです。

①小選挙区と比例の重複立候補

復活当選のカギを握るのが、小選挙区と比例代表の「両方に名前を載せておく」、つまり重複立候補というルール。

候補者は小選挙区と比例代表の両方にエントリーすることができます。

これ、受験に関するたとえだとわかりやすいかもしれません。

第一志望の大学(小選挙区)を受けつつ、すべり止め(比例)にも願書を出しておく感覚に近い。

第一志望に受かればそちらに進学するし、落ちてもすべり止めで合格していれば大学生にはなれる、というわけ。

 

2026年の選挙で言えば、自民党の高市早苗首相は小選挙区で余裕の勝利だったので比例の出番はなし。

一方、中道改革連合の長妻昭さん(元厚生労働大臣、「年金博士」の異名で知られるベテラン)は東京7区で敗れたものの、比例東京ブロックの名簿に名前があったため復活当選を果たしました。

ほとんどの候補者がこの重複立候補を使っていて、とくに野党の有力議員にとっては「命綱」とも呼べる存在でしょう。

もちろん批判もあります。

「負けてもOKなら、本気で戦う気あるの?」という指摘は、たしかに一理ある。

ただ、この制度がなかったら実力のある政治家が一つの選挙区の結果だけで消えてしまうリスクもあるわけで、そのあたりは良い面と悪い面が表裏一体といったところ。

 

②惜敗率が高い順に当選するルール

では、比例の名簿に名前が載っていれば全員が復活できるのかというと、そんなに甘い話ではありません。

ここで登場するのが「惜敗率(せきはいりつ)」という仕組み。

計算式はとてもシンプルで、「落選した人の得票数 ÷ 当選した人の得票数 × 100」となっています。

たとえば、当選者が10万票で、落選者が9万票だったら惜敗率は90%。

落選者が3万票しか取れなかったら惜敗率はたったの30%。

つまり「どれだけ惜しい負け方をしたか」を数字で表したもので、この数字が高い人から順番に復活当選の権利を得られるルールになっています。

お菓子の取り合いに関するたとえに戻すなら、「あと一歩で1位だった人」から優先的にボーナスのお菓子がもらえる、というイメージ。

大差で負けた人は後回しになるので、「負け方の質」がめちゃくちゃ大事になってきます。

 

2026年の具体例を挙げると、中道改革連合の枝野幸男さん(埼玉5区)は小選挙区では敗北したものの、惜敗率が高かったおかげで比例復活。

あの「枝野節」と呼ばれるキレのある演説で知られる元立憲代表が、ギリギリのところで国会に踏みとどまったわけです。

同じく中道の泉健太さん(京都3区)も復活当選を果たしていて、野党の「顔」がなんとか議席を確保した形。

ちなみに、復活当選には最低条件があって、小選挙区の有効投票総数の10%以上を獲得していなければ資格がありません(いわゆる供託金没収ライン)。

これを下回ると預けたお金も没収されてしまうので、あまりにも票が取れなかった候補者は復活のチャンスすらない、ということになります。

③政党が作成する比例名簿の順位

復活当選を語るうえでもう一つ見逃せないのが、比例名簿の順位

各政党は選挙の前に「この人を1位、この人を2位……」と、あらかじめ候補者のランキング表を作ります。

上位に載っている人ほど当選しやすいのは、まあ当然の話。

ただし面白いのが、重複立候補者に関しては同じ順位にまとめて登録されるケースが多いという点。

たとえば、ある政党の比例名簿で「2位タイ」に10人並んでいたら、その10人の中では惜敗率の高い順に当選が決まるのです。

名簿の上位に単独で載っている候補者がまず当選し、そのあとに重複立候補者が惜敗率順で続いていく、という二段構えの仕組み。

 

2026年の選挙では、自民党の村上誠一郎さんが印象的な例でしょう。

前回の選挙では比例名簿の1位だったのに、今回はなんと10位に大幅降格。

それでも自民党があまりにも圧勝したおかげで比例の枠に余裕があり、結果的に復活当選できたのだから、なんとも皮肉な話。

この名簿順位をめぐっては「党内の力関係がモロに出る」という見方もあって、誰を上位にするか、誰を下位に落とすかは、政党の内部事情が丸見えになるポイントだったりします。

参政党の吉川里奈さんが比例東海ブロックで復活当選した際、本人がXに「心から喜ぶことはできない心境」と投稿していたのも記憶に新しいところ。

小選挙区では負けているわけだから、手放しでは喜べない複雑な気持ちがにじみ出ていて、なんとも人間くさいエピソード。

国民民主党の小竹凱さん(石川1区)は27歳の若さで比例復活を果たし、「負けても比例で食らいつく」若手のたくましさを見せつけました。

こうして見ると、復活当選は「惜敗率」「名簿順位」「政党の獲得議席数」という3つの条件が絡み合って決まる、なかなか奥深い仕組みだとおわかりいただけるのではないでしょうか。

復活当選がゾンビ当選と言われる理由

「ゾンビ当選」。

このインパクト抜群のネット用語、一度聞いたら忘れられないフレーズでしょう。

小選挙区で「政治生命が絶たれた」はずの候補者が、比例代表でムクッと蘇る。

その姿がまるでゾンビのようだ、というのがこの言葉の由来。

1996年に今の選挙制度が初めて使われて以降、ネットの広がりとともに定着した表現で、Xでは選挙のたびに「ゾンビ復活きたw」「またゾンビか」といった投稿があふれかえります。

2026年2月8日の衆議院選挙でも、この言葉はあちこちで飛び交いました。

自民党の圧勝で野党候補の多くが小選挙区で沈んだだけに、復活組には「おこぼれで当選した」という厳しい視線が向けられたのも事実。

2月9日のXでは「ゾンビ復活するなよ〜!!」という投稿が拡散するなど、選挙直後の不満が爆発している様子もうかがえます。

 

では、なぜこの「ゾンビ当選」にこれほどの反感が集まるのでしょうか。

その根っこにあるのは、有権者の「釈然としない」という感情だと思います。

小選挙区で投票するとき、有権者は「この人に地元の代表になってほしい」と思って一票を投じるもの。

そしてその選挙区で別の候補者が1位になったということは、言い換えれば「あなたは地元の代表としてNO」という民意が示されたはず。

なのに、政党の比例名簿という仕組みのおかげで、その「NO」がひっくり返されてしまう。

さらに、今回は自民党が勝ちすぎて、自民党の比例復活の枠が他党に振り分けられるという珍しい状況になったのです。

その余った14議席は他党に再分配されたのですが、その主な行き先は以下の通りとなっています。

主な分配先

  • 中道改革連合:6議席(東京2、南関東2、北陸信越2)
  • 国民民主党:2議席(東京1、南関東1)
  • チームみらい:2議席(東京1、南関東1)
  • 参政党:1議席(東京)
  • 日本維新の会:1議席(南関東)
  • れいわ新選組:1議席(南関東)

実力で取った比例復活でもないとなると、「負けたのに当選って、それありなの?」という疑問はごく自然な感覚です。

Xでは高校生の会話として「比例復活ってずるくない?ゾンビ議員の給料半分にしようよ」なんて投稿がバズったこともありました。

「選挙区で落ちたなら潔く身を引け」という意見も根強いのです。

 

ただ、一方で冷静になってみると、比例復活がまったく意味のない制度かというと、そうとも言い切れないのが悩ましいところ。

小選挙区は「1位だけが全部持っていく」ルールだから、どうしても結果に反映されない票が大量に出てしまいます。

2026年の選挙でも、落選者に投じられた票は全体の約45%前後に上ったと見られていて、小選挙区の1割近くでは有権者1%の差で結果がひっくり返るような接戦が多発。

つまり国民のほぼ半分近くの声が、小選挙区だけでは国政に届いていないことになるのです。

比例復活はそうした「届かなかった声」を少しでもすくい上げる役割を果たしている、という見方もできるわけで、単純に「ズルい」とは言い切れないのがこの問題の難しさ。

とはいえ。

今の制度のままで問題なしかと問われれば、それもまた別の話になってきます。

重複立候補そのものをやめて比例は比例だけの候補者に限定する案、惜敗率の基準をもっと厳しくする案、あるいは比例の議席数自体を減らす案など、いろいろな改革の方向性が以前から議論されてきました。

日本維新の会が掲げてきた「身を切る改革」の中にも議員の数を減らす話が含まれているし、「比例復活した議員は給与を減額すべき」というなかなか大胆な意見まで飛び出していますよ。

2026年の選挙結果は、この議論にあらためて火をつけたのかもしれません。

自民党が単独で憲法改正に必要な3分の2を超える議席を手にする一方、野党の有名議員が軒並み比例復活に頼らざるを得なかった

小沢一郎さんや玄葉光一郎さんのように、比例復活すらかなわずに完全落選した大物もいます。

「勝った側は復活なんか要らない、負けた側は復活頼み」という構図は、制度のいびつさを浮き彫りにしていると言えるでしょう。

この選挙制度が導入されて30年近く。

当初の狙いだった「2大政党制の実現」は結局うまくいかないまま、結果に反映されない票の問題もゾンビ批判もずっとくすぶり続けています。

投票率が56.26%にとどまった2026年の選挙を見ても、有権者のどこかに「どうせ自分の一票なんて……」というあきらめがあるのかもしれません。

選挙制度に完璧な正解はないのでしょう。

小選挙区は政権を安定させるのに向いているけれど、反映されない票が多すぎる。

比例代表は国民の声を幅広く届けられるけれど、「ゾンビ」を生んでしまう。

どちらの良いところを取って、どちらの欠点を許容するか、それは最終的に私たち有権者一人ひとりの判断に委ねられているのだと思います。

ただ一つ確かなのは、仕組みを知らなければ「なんかよくわからないけどモヤモヤする」で終わってしまうということ。

今回の記事を通じて「なるほど、そういうカラクリだったのか」と少しでも感じていただけたなら、次の選挙ニュースはきっと今までよりずっと面白く映るはず。

ゾンビが蘇るドラマも、お菓子の取り合いの駆け引きも、全部ひっくるめて「これが日本の選挙なんだな」と、ちょっと引いた目で眺めてみるのもいいのかもしれません。