2026年ミラノ・コルティナ冬季オリンピック、男子モーグル決勝。

堀島行真選手が銅メダルに終わった瞬間、ネット上は一気にざわつきました。

「唯一の4回転を決めたのに、なぜ3位なんだ?」「これは白人優遇じゃないのか?」――そんな声がXや5chを中心に広がり、採点への疑問が噴出したのは記憶に新しいところでしょう。

正直に言えば、私自身もリアルタイムで見ていて「え、この点数?」と思った一人です。

ただ、感情に流されるままだと本質を見失ってしまう。

だからこそ、この記事では冷静にスコアの中身を紐解きながら、「本当に差別があったのか」を徹底的に検証していきたいと思います。

ミラノ五輪モーグルの堀島行真は採点が低すぎると炎上!

決勝が終わった直後、SNSのタイムラインはまるで炎上案件のように荒れていました。

「採点がおかしい」「堀島が3位なんてありえない」という声を目にした方も多いのではないかと思います。

実際、何が起きていたのか――まずはその背景から振り返ってみましょう。

ネット上で「おかしい」と炎上した背景

まず事実関係を整理すると、堀島行真選手の決勝スコアは83.44点。

1位のクーパー・ウッズ選手(オーストラリア)と2位のミカエル・キングズベリー選手(カナダ)はともに83.71点の同点で、ターン点の差(ウッズ48.40 対 キングズベリー47.70)のタイブレーカーでウッズ選手が金メダルに輝いています。

堀島選手との差は、わずか0.27点でした。

たった0.27点!

これ、どれくらいの差かというと、100点満点中の0.27点ですから、テストで言えば「ほぼ同じ答案なのに、ハネ・トメの差で減点された」くらいの僅差なんですよね。

ミラノコルティナ五輪の男子モーグル決勝のトップ3採点表

にもかかわらず、メダルの色は金と銅。

この落差に多くのファンが納得できなかったのは、ある意味で当然の反応だったのかもしれません。

火に油を注いだのが、堀島選手が決勝スーパーファイナルの第2エアで唯一「コーク1440」という4回転の大技を成功させていたこと。

しかもタイムは22.23秒と速く(金のウッズ選手は22.61秒)、スピード点でも優位だったとされています。

素人目には「一番すごい技を決めて、タイムも速くて、なんで3位なの?」となるわけで、これはもう怒りたくなる気持ちもわかります。

Xでは「採点競技はクソ」「白人ジャッジがアジア人を不利にしている」という過激な投稿が飛び交い、5chの速報板やなんJでも「平野歩夢の時と同じパターンだ」と過去の事例を持ち出す声が相次ぎました。

Threadsにも同様の投稿が広がり、「採点競技の闇は深い」というフレーズがトレンド入り寸前だったほどです。

唯一の4回転&タイム最速なのになぜ銅メダル?

ここで多くの人が抱くのは、「一番難しいことをやった選手が一番になるべきじゃないのか?」というシンプルな疑問。

たとえば陸上の走り高跳びなら、一番高いバーを越えた人が金メダル。

100m走なら一番速い人が金メダル。

非常にわかりやすい世界です。

ところがモーグルは、いわば「料理コンテスト」に近いんですよね。

どれだけ高級な食材(高難度技)を使っても、味付け(ターンの精度)が雑だったり、盛り付け(着地)が崩れていたら、総合評価では負けることがある。

逆に、家庭的な食材でも完璧な一皿を出した料理人が優勝することだってあるわけです。

堀島選手の4回転コーク1440は、いわば「フォアグラのソテー」のような超高級食材。

でもモーグルという料理コンテストでは、コース全体の「味わい」、つまりターンの美しさが配点の60%を占めている。

ここが、多くの視聴者の感覚とスコアがズレた最大の原因だったと考えられます。

金メダルのウッズ選手はターン点48.40、銀メダルのキングズベリー選手は47.70。

いずれも非常に高い水準で、コブの上をまるでメトロノームのように正確なリズムで滑り降りていました。

対する堀島選手は、スピード重視の攻めた滑りが持ち味であるがゆえに、ターンのクリーンさではやや及ばなかった。

NHKの解説でも「ミスの度合いが響いた」と分析されており、その差がそのままスコアに現れた格好でしょう。

堀島行真のエアー点が低い?白人優遇の噂を検証!

さて、ここからが本題ともいえる部分です。

ネット上で最も声高に叫ばれていた「白人優遇」という主張。

これが事実に基づくものなのか、それとも感情が先走った結果なのか、できるだけフラットな目線で見ていきたいと思います。

上位2選手との点差はどこで生まれたのか

堀島選手は唯一の4回転を決めたにもかかわらず、エアー点では上位2人に及びませんでした。

これだけ聞けば「おかしいだろ!」と言いたくなるのは自然な反応でしょう。

ただ、ここにモーグル特有のカラクリがあるんです。

エアー点の計算は「技の難易度(DD)× 実行点(フォーム・着地)」で決まります。

コーク1440はDDが非常に高い、つまり「掛け算の片方の数字」はかなり大きい。

でも着地が乱れると「もう片方の数字」がガクッと下がるので、掛け算の結果は思ったほど伸びないことがあるんですよね。

たとえるなら、年収1000万円の仕事に就いても、税率が高ければ手取りはそこまで増えないのと似た構造です。

高難度技は「高収入」だけど、ミスによる「減点」という税金が重い。

一方で、難易度は控えめでも着地をビシッと決めた選手は、いわば「税率の低い安定収入」でしっかり手取りを確保できる。

堀島選手とウッズ選手・キングズベリー選手の差は、まさにこの構造の違いから生まれたものでした。

堀島選手の着地は、決勝のスローリプレイを見るとやや後傾気味で、スキーのテール側に体重が残っているように見受けられます。

テレビの通常速度ではほぼわからないレベルの話ですが、ジャッジの目はそこを見逃さなかった。

この着地の不安定さが実行点を押し下げ、せっかくの高いDDを十分に活かしきれなかったのが、エアー点の伸び悩みの主因と考えられます。

平野歩夢の事例との比較と「白人優遇」の検証

「またアジア人が割を食った」という声の中で、よく引き合いに出されていたのが平野歩夢選手のケースでした。

スノーボードハーフパイプで、ショーン・ホワイト選手に敗れた際にも同様の「白人優遇」論が巻き起こったことは、多くの人が覚えているのではないかと思います。

この手の議論が繰り返し浮上するのは、採点競技全般に対する構造的な不信感があるからにほかなりません。

フィギュアスケートでもアーティスティックスイミングでも、「ジャッジの主観が入る」という時点で、結果に不満を持つ側は「何か裏があるんじゃないか」と勘ぐりたくなるもの。

その気持ち自体は、私も十分に理解できます。

ただし、ここで冷静に確認しておきたいのが、FIS(国際スキー連盟)のジャッジ体制についてです。

モーグルのジャッジは国際的に選出され、多国籍で構成されています。

欧米中心ではあるものの、アジア圏のジャッジも参加しており、「白人だけで採点している」というのは事実と異なります。

さらに言えば、もし本当にアジア人差別が組織的に行われているなら、堀島選手自身が2023-24シーズンのワールドカップ総合タイトルを獲得できたでしょうか。

毎戦のようにジャッジの前で滑り、積み上げたポイントでシーズンチャンピオンになっているわけですから、「アジア人だから常に不利」という主張とは明らかに矛盾します。

加えて、堀島選手は2025年の世界選手権でも欧米勢を破って活躍しており、実績面からも「日本人だから低く抑えられている」という見方は成り立ちにくい。

キングズベリー選手という絶対王者がいるカナダ勢の牙城を、日本人選手が崩してきた実績こそが、差別論への最も有力な反証ではないかと私は考えています。

もちろん、個々の大会で「あのジャッジはちょっと偏っていたのでは?」という疑問が完全にゼロだとは言い切れません。

人間が採点する以上、100%の客観性を担保するのは不可能でしょう。

ただ、それを「白人優遇」「人種差別」と断言するには、あまりに根拠が薄いと言わざるを得ないのが現状です。

堀島行真の着地ミスが原因?公式記録から見える3位の真相!

最後に、感情を脇に置いて、公式記録の数字だけを見つめてみましょう。

0.27点差の正体がどこにあったのか。

答えは意外なほどシンプルでした。

4回転コーク1440の「着地」が生んだ0.27点差

堀島選手のコーク1440は、決勝スーパーファイナルの第2エアで披露されました。

4回転という超高難度。

成功させただけでも驚異的な技術力ですが、着地時にやや後傾気味になり、減点対象となったことがNHK解説でも指摘されています。

モーグルのジャッジというのは、言ってみれば「寿司屋の目利き職人」のような存在でしょうか。

素人が見たら同じに見えるマグロの切り身でも、プロは脂の乗り方、色味、繊維の向きまで一瞬で見分けてしまう。

堀島選手の着地は、一般視聴者からすれば「普通に成功」に見えたかもしれませんが、ジャッジにとっては「惜しい、あと一歩」だったのでしょう。

この着地の不安定さが実行点を押し下げ、せっかくの高いDDを十分に活かしきれなかった。

もし着地が完璧だったなら、エアー点だけで1点以上は上積みできていた可能性があり、そうなれば金メダル争いに食い込んでいたことは間違いなさそうです。

ターン60%の重みが勝敗を決めた

そしてもう一つ、この結果を理解するうえで絶対に外せないのが、モーグルの配点構造そのものです。

ターンが全体の60%、エアーとスピードがそれぞれ20%。

つまり、エアーでどれだけ派手な技を決めても、ターンで差をつけられたら逆転は極めて難しい仕組みになっています。

これは「学校の成績」に置き換えるとわかりやすいかもしれません。

主要5教科のうち、数学だけが配点2倍だったとしましょう。

英語や理科でいくら満点を取っても、数学で大きく負けたら総合順位はひっくり返せない。

モーグルにおけるターンは、まさにこの「配点2倍の数学」にあたります。

ウッズ選手のターン点48.40は、コブの上を滑る姿がまるで一筆書きのように流れるラインだったことの証明。

リズムが一定で、上体のブレがなく、スキーの板が常にフォールラインを向いている。

地味に見えるかもしれませんが、これこそがモーグルにおいて最も評価される要素なのです。

堀島選手はスピードと大技で勝負するアグレッシブなスタイルが魅力で、それが世界中のファンを惹きつけてきました。

けれど、そのスタイルゆえにターンでの細かなコントロールが犠牲になる場面があり、今回の決勝ではそこが如実にスコアに反映されてしまったと見るのが妥当でしょう。

差別でも陰謀でもなく、「ルール上、ターンの完成度を最も重視する競技において、ターンで上回った選手が勝った」。

これが0.27点差の真相であり、至極まっとうな結果だったと私は考えます。

とはいえ、堀島選手が決勝の大舞台で4回転に挑んだこと自体が、どれほどの覚悟だったか。

北京に続く2大会連続の銅メダルという結果は、胸を張るべき偉業にほかなりません。

表彰台後のインタビューでは「悔しいけれどメダルはうれしい」「妻に捧げたい」と語っていた堀島選手の姿が印象的でした。

次戦のデュアルモーグルでは、さらなる高みを目指してくれるはずです。

次に「おかしい」と感じたときは、まずスコアの内訳を見てみる。

そうするだけで、採点競技の景色がガラッと変わるかもしれません。

堀島選手の挑戦に、心からの拍手を送りたいと思います。