漫画家山本章一と小学館編集者が「グル」と言われる5つの理由
堕天作戦の作者・山本章一氏による教え子への性加害事件。
札幌地裁が2026年2月20日に下した判決の衝撃は、加害者本人への怒りだけにとどまりませんでした。
SNSで同時に爆発したのが、「小学館の担当編集者は加害者のグルだったのではないか」という疑惑です。
被害者と加害者の間に入って和解を仲介していた形跡、150万円で口止めを図った交渉記録、判決後も続いていた加害者との親密な交流。
そして判決からわずか6日後に起きた、不可解な番組延期と関連作品の配信停止。
調べれば調べるほど、「ただの担当編集者」では説明がつかない行動の数々が浮かび上がってきます。
この記事では、なぜこの編集者が「グル」と呼ばれているのか、その根拠を5つの視点から整理していきます。
なお、編集者個人の実名は法的リスクを考慮して伏せ、「担当編集者」と表記します。
目次
漫画家・山本章一と小学館編集者がグルだった?
本題に入る前に、何が起きたのかを簡潔に振り返ります。
山本章一氏(50代)は、北海道芸術高校(通信制)でデッサン講師を務めながら、漫画家としても活動していた人物です。
2016年、当時15歳の女子生徒に接近し、約3年にわたって排泄物の摂取強要、体への「奴隷」落書きと撮影など、凄惨な性的加害を繰り返していたことが裁判所に認定されました。
山本氏はこれらを「おしおき」と呼んで正当化していたとのこと。
被害女性は解離性同一性障害(DID)とPTSDを発症し、大学を中退。
さらに山本氏は2020年に児童ポルノの作成・所持で罰金30万円の有罪判決を受けていたことも判明しています。
札幌地裁は山本氏に1100万円の賠償を命じましたが、刑事罰はゼロ、前科もつかない状態。
そしてこの事件の裏で、小学館マンガワン編集部の担当編集者がどのように動いていたのか。
ここからが本題です。
理由①:150万円の口止め交渉を主導していた
担当編集者が「グル」と言われる最大の根拠がこれです。
リークされた判決文の情報によると、2021年5月27日、ひとつのLINEグループが作成されました。
参加者は被害女性、山本章一氏、そしてマンガワン編集部の担当編集者の3人。
この場で担当編集者が提案した和解条件は、以下のような内容だったとされています。
山本氏が被害女性に150万円を即日支払う。
被害女性は休載理由を口外しないことに同意する(守秘義務)。
両者の接触を禁止する。
これらを公正証書で取り決め、『堕天作戦』の連載を再開させる。
ここで注目すべきは、この提案を持ちかけたのが加害者本人ではなく、出版社の編集者だったという点です。
通常、作家の私的トラブル、ましてや刑事事件に関わる和解交渉に編集者が直接介入することは極めて異例だと、業界関係者からも指摘されています。
弁護士のコメントとして「利益相反の典型。出版社の利益を優先し、被害者の権利を軽視した構図」との見解も出ている。
普通であれば弁護士に任せるべき案件に、なぜ編集者が自ら入ったのか。
「連載を守りたかったから」以外の合理的な説明が、今のところ見当たりません。
被害女性側は6月2日、「休載理由が山本氏の逮捕であることを公表してほしい」と追加条件を出しました。
被害者が求めたのは巨額の賠償金ではなく、「真実を世の中に知ってほしい」というシンプルな願いだったわけです。
しかし山本氏側がこれを6月4日に拒否し、交渉は決裂。
翌年2022年7月の民事提訴へとつながっていきました。
理由②:連載終了時にファンへ嘘の説明をした
和解交渉が決裂した後、2022年10月31日にマンガワン・裏サンデーでの連載が完全に終了します。
翌11月1日、山本氏が公式アカウントで発表した内容はこうでした。
「現在も継続中の私的なトラブルによるもの」
「健康面や編集部との関係ではない」
「小学館とマンガワン・裏サンデー編集部には本当に感謝しております」
「担当編集者にもお世話になりっ放しでした」
そして最後に「堕天作戦は甦ります」と。
同日、担当編集者は公式アカウントを山本氏に移譲し、自身が制作したバナー10枚を公開、マンガワンの豆知識を放出するなど、まるで円満卒業のようなファンサービスを展開しています。
当時のファンの反応を見返すと、「体調不良だったから仕方ない」「私的トラブルって何だろう、心配」「電子書籍で続くなら応援する」と、純粋に心配する声ばかりが並んでいました。
しかし今わかっていることを照らし合わせると、この「私的トラブル」の正体は性加害事件であり、担当編集者はその内容を2021年の時点で把握していた可能性が極めて高いのです。
にもかかわらず、ファンには一切真相を伝えず、「感謝」「お世話になった」というトーンで幕引きを図った。
2026年の判決でこのギャップが明らかになった今、「担当編集者がファンに嘘をついていた」「読者を騙して売上を維持していた」という怒りが噴出しているのは、無理もないことでしょう。
理由③:判決前年にも加害者と親密に交流していた
話はここで終わりません。
連載終了から約3年後、2025年11月に投稿されたSNSの内容が、さらに火に油を注ぐことになりました。
担当編集者は個人のSNSアカウントで、山本氏とのランチの様子を投稿していたのです。
「山本章一さんとランチしました」「トリュフのパスタを選んでました」という内容で、店の情報や写真も添えた、実に楽しげな投稿。
ハッシュタグで作品名まで付け、親しい関係が続いていることを隠す気配は一切ありませんでした。
もちろん、漫画業界において編集者と作家の関係が親密であること自体は珍しくありません。
「二人三脚」と表現されるほど密な関係を築くのが、むしろこの業界の標準的なスタイルです。
ランチに行くこと自体は、通常なら何の問題もないでしょう。
しかし、この編集者は2021年の時点で山本氏の性加害の詳細を知っていた可能性がある人物です。
150万円で被害者を黙らせる交渉に自ら参加した人物です。
その人間が、被害女性がPTSDとDIDで苦しみ続けている最中に、加害者と楽しそうにトリュフのパスタを食べている。
この投稿が判決後に掘り返され、SNSで「被害者の苦しみの上でランチを楽しんでいた」と激しい批判を浴びたのは、感情的な反応だけでは片づけられないものがあります。
さらに注目すべきは、2025年12月から2026年1月にかけて、担当編集者が山本氏の別名義とされる作品を積極的にSNSでPRしていたことです。
「やっぱりこの作品カッケェ……」と作品を絶賛する投稿も確認されています。
判決が目前に迫っている時期に、この振る舞い。
「事件のことなど気にしていない」とも取れるこの姿勢が、「グル」という言葉を生んだ最も直接的な原因なのかもしれません。
理由④:判決6日後に番組出演が急遽「延期」になった
2026年2月26日、つまり判決からちょうど6日後。
担当編集者が出演予定だったBSテレ東の漫画番組が、放送当日に急遽延期されるという事態が起きました。
番組はマンガワン編集部の代表として、注目作品について語る企画だったとされています。
公式の延期理由は「番組制作上の都合により」とだけ発表されました。
MCを務めるお笑い芸人は「楽しみにしていた皆様申し訳ありません。内容面白いので放送日決まったら絶対見て!」とコメント。
この延期のタイミングについて、SNSでは「ダメージコントロール以外の何物でもない」という見方がほぼ一色です。
「判決後に編集者をテレビに出せないほど世論が悪化していることの証拠」「小学館が自ら編集者を守るために番組を潰した」という指摘が相次いでいます。
一部には「本当に制作上の都合かもしれない」という冷静な声もありますが、このタイミングで偶然というのは、少し無理のある解釈ではないでしょうか。
仮にこれがダメージコントロールだったとすれば、小学館は担当編集者を「表に出すとまずい存在」だと認識していることになります。
それ自体が、「この編集者には説明すべきことがある」と小学館自身が自覚している証拠ではないかという指摘は、なかなか鋭いところを突いていると感じます。
理由⑤:別名義疑惑の作品が判決直後にKindleから消えた
5つ目の理由は、判決後に起きたもうひとつの不可解な動きです。
山本章一氏には、別のペンネームで原作を手がけている疑惑のある作品がありました。
SNSでは以前から「同一人物ではないか」という説が出ていたのですが、その根拠とされているのが、山本氏自身が過去に「別名義で原作をやっている」と発言していたこと、そしてその作品の担当編集者もまた、同じ人物だったことです。
つまり、堕天作戦と別名義作品の両方を、同じ編集者が担当していた。
この別名義作品が、判決直後の2月25〜26日にかけて、Kindleをはじめとする電子書籍ストアで配信停止になりました。
検索しても結果はゼロ、購入もできない状態です。
誰の判断で停止されたのか(出版社なのか、販売プラットフォームなのか、作者本人なのか)は公表されていません。
SNSでは「同一人物説が確定した」「証拠隠滅だ」「小学館のダメージコントロールが進行中」という声が溢れています。
番組延期とこのKindle停止がほぼ同じタイミングで起きていることを考えると、「発覚後に慌てて火消しに動いている」という印象は拭いきれません。
仮にこの別名義作品が本当に山本氏のものだったとすれば、担当編集者は連載終了後も山本氏に仕事を供給し続けていたことになります。
性加害の事実を知りながら、名前を変えて漫画を描かせ続けていた。
これが事実であれば、「口止めに協力した」だけでなく「加害者の社会復帰を積極的に支援していた」ということになる。
「グル」という言葉が使われるのも、こうした文脈を見れば理解できる話です。
「グル」か「組織の指示」か
ここまで5つの理由を整理してきましたが、ひとつ公平を期すために触れておくべきことがあります。
それは、担当編集者の行動が「個人の判断」だったのか、「組織としての指示」だったのかという論点です。
SNSでは圧倒的に「編集者個人の責任」を追及する声が多いのですが、ごく少数ながら「会社の指示に従っただけでは」「編集者は売上を守るのが仕事」という擁護的な意見もあります。
たしかに、150万円の和解提案が編集者個人の独断だったのか、編集部や上層部の承認を得た上での行動だったのかによって、責任の所在は大きく変わってきます。
もし組織の指示だったとすれば、これは編集者個人の問題ではなく、小学館という出版社の体質の問題ということになります。
2024年のセクシー田中さん事件で「原作者を守れなかった」と批判されたのと同じ構造が、ここでも繰り返されていることになるからです。
そしてもし個人の独断だったとすれば、なぜ小学館はこの編集者に対して何の処分も発表していないのか、という新たな疑問が生まれます。
どちらに転んでも、小学館が公式見解を出さない限り、この疑惑は膨らみ続ける一方でしょう。
小学館、早くコメントを出したほうがいいです(いま作成中なのでしょうが)。別名義と噂されてたマンガ、AmazonのKindle配信止めましたね。納本も止めたから品切れの巻が出てきています。作画の先生がXを更新されています。原作者に逮捕歴が2度もあることなど知らされていなかったということですよね。 pic.twitter.com/JkE99NvLSG
— 藤井セイラ (@cobta) February 26, 2026
2月26日現在、小学館からの公式コメントは一切なし。
担当編集者本人からの釈明もゼロ。
SNSのアカウントは存続しているものの、判決後は事件に一切触れず、日常的な内容の投稿のみが続いている状態です。
他の出版社のケースを参照すると…
担当編集者の行動が「異常」なのかどうかを判断するために、他の出版社の対応と比較しておきます。
2020年、集英社で連載中だった人気作品の原作者が逮捕された際、集英社は逮捕報道の即日に事実確認を行い、同週で連載を打ち切りました。
コミックスの出荷停止、電子書籍の配信終了も即座に実施し、「社会的責任を深刻に受け止め」と公式声明を発表。
担当編集者が加害者との和解を仲介したり、その後も親密な交流を続けたりした、という話は一切出ていません。
2002年に別の人気作家が逮捕された際も、集英社は即連載打ち切り、全巻絶版という厳しい対応を取っています。
2017年に児童ポルノ所持で書類送検された作家のケースでも、即休載という対応でした。
これらと比較したとき、今回の担当編集者の行動は明らかに業界標準から逸脱しています。
加害者と被害者の和解テーブルに自ら座り、150万円で口止めして連載再開を狙い、失敗後も親密な交流を続け、別名義で仕事を回していた可能性がある。
「作家と編集者の二人三脚」という美しい言葉では、もう説明がつかないレベルだと言わざるを得ません。
山本章一と小学館の「グル疑惑」の本当の問題
最後に、この「グル疑惑」が指し示している、もうひとつ大きな問題について触れさせてください。
今回の件で担当編集者の行動がこれほど批判されているのは、「出版社が利益を守るために、被害者を黙らせる側に回った」と映るからです。
150万円の和解提案は、見方を変えれば「人気連載を守るためのコスト」として被害者を計算に入れた行為。
連載終了時の「私的トラブル」発表は、読者を欺いてブランドを守る行為。
判決後の沈黙は、説明責任を放棄して事態の沈静化を待つ行為。
これらは一編集者の暴走というより、出版業界に構造的に存在する「作品を守るためなら多少のことは目をつぶる」という体質の表れではないでしょうか。
漫画業界では、作家と出版社の関係は基本的に委託契約であり、作家の私生活に対する管理義務は法的には薄い。
しかし、「知っていたのに隠した」と「知らなかった」は、まったく別の話です。
編集者が和解交渉に直接参加していた以上、「知らなかった」とは言えない。
そこで小学館が取るべきだったのは、アクタージュ事件で集英社がそうしたように、事実を確認した時点で毅然とした対応を取ることだったのではないでしょうか。
今、SNSでは担当編集者に対する批判が9割を超える状態が続いています。
「永久追放すべき」「同罪だ」という激しい声も少なくありません。
小学館とマンガワン。
これ組まされてた作画担当さん、損害賠償請求で訴訟できないのか?
いくらなんでもあんまりだろ— ゆかり粉 (@murasakinokona) February 27, 2026
一方で、この問題を編集者個人の責任だけに帰するのは、構造的な問題から目を逸らすことにもなりかねない。
なぜこの編集者がここまでの行動を取れてしまったのか、組織として誰もストップをかけなかったのか。
小学館がこの問いに正面から答えない限り、「グル疑惑」は消えないでしょう。
被害女性は「つらすぎて自分の心から自分を追い出すことが癖になった」と証言しています。
その苦しみが続く中で、担当編集者は加害者とランチを楽しみ、別名義で仕事を回し、テレビ出演の準備をしていた。
この事実を知ったとき、「グル」という言葉を使いたくなる気持ちは、多くの人に共感されるものだと思います。
山本氏側には控訴の可能性があり、小学館の公式見解もまだ出ていません。
事態は流動的ですが、担当編集者の行動に対する説明が求められている状況は変わりません。
今後の動向を注視しつつ、この問題が「うやむやに終わる」ことだけはあってはならないと、強く感じています。
